♯19 白河さんの敵情視察 後編
「「「えっ!? どれどれ!?」」」
作業場にいる全員の視線が売り場に降り注ぐ。
し、しまったー……。
この雰囲気に耐えられず、余計なことを言ってしまった。
普通に恥ずかしい。自分の顔が赤くなっているのが分かる。
「あの清楚系の女の子? やっばー、めちゃくちゃ可愛くない?」
「チーフってああいうほんわか系が好きなんだぁ。可愛いー」
みんながそれぞれ感想を言っていく。
地獄みたいな状況から、更に地獄を自分で呼び込んでしまった。
「
やっちまったのは仕方ない。
こうなったら開き直って、
「だ、だから
「わぁああ……」
「あ、
「あの服、可愛い~」
「服?」
「分かります! ああいう着飾らない服装って似合う人じゃないと中々厳しいですよね」
「うん、ああいうナチュラルなコーデ憧れるなぁ」
何故か
「あれって、元が良くないとできないよね」
「ですね~、私は怖くてできないです!」
「私も」
急におしゃれについて会話をはずむ二人。この二人が日常会話しているところを初めて見た。
それにしても早く
「!」
あっ、
作業場に向かって、ぺこりと丁寧に頭を下げている。
「あっ、私にお辞儀した」
「馬鹿ッ! 俺にだよ俺!」
「なんで
刺身チームと
早く行け! 晒しものになっているぞ!
……が。
「!」
ぴょこぴょこと嬉しそうに小さく飛び跳ねている。
違う違う違う違う違う。
そうじゃなくて、見世物になっているから早く行けって言ってるんだよっ!
「チーフ、行かなくていいの?」
「行ってあげなよ」
「そうだよ、行ってあげなよ」
女性陣からもそんな声が聞こえてくる。
「いやこの前の件もあるので……」
「行ってあげてください」
※※※
「あっ、
売り場に行くと、すぐに笑顔の
「か、買い物?」
「はい! ちゃんとしたお弁当の材料を買っておきたいなぁと思いまして」
「そっか」
や、やりづれぇ……。
鮮魚作業場から熱烈な視線を感じる。
「それと敵情視察もかねまして!」
「敵情視察?」
「サブチーフって、さっき
じとっとした目で
「し、仕事の話だって!」
「はい、分かってます。それではお仕事の邪魔になってしまうので私は行きますね。桜でんぶも探さないと」
「桜でんぶ?」
「あっ、まだ秘密でした!」
そう言うと、
※※※
「ただいまです……」
気が重くなりながら、鮮魚作業場に戻ってきた。
「チーフ! あの子とどこで知り合ったの!?」
「歳はいくつなの? 年下?」
案の定、女性陣から質問攻めにされる。
「それはですね――」
本当に困った。
今日は失言が多い日だ。
さっき
「なんか、二人とも一生懸命なので応援したくなっちゃいますよねっ」
返答に困っていたら、
後ろを向いて、いつの間にかちゃんと作業台で仕事を始めている。
「あっ、分かるー」
「彼女さんすごい健気な感じだったもんね」
お刺身を切っていた、
あれ? もしかして助けてもらった?
いや、この騒動自体、半分
「いいですね! 一生懸命ってとてもいいことですよね!」
「
何故か、
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