♯18 白河さんの敵情視察 前編
「
「わー! ありがとうございます!」
次の日のお昼休み時間。
俺は
「もー! 昨日、事前に聞いてましたが嬉しいなぁ!」
「……」
こいつめ、昨日は大変だったんだぞ。
今日は会ったら
俺はこの内部告発者を訴えることにした。
「
「うっ」
お弁当を開けようとしていた
俺も
「だってぇー、私だって面白くないわけじゃないですか」
「面白くないってなにが?」
「好きだった男にちょっかい出されているところを見るのは、さすがの私もムッとします」
「私はあの一生懸命な
「……」
「でも、確かに言わなくて言いことを言い過ぎでした。それは反省してまーす」
不貞腐れたような顔をして、
「ツッコミづらい」
「ふんっだ。私だってただの馬鹿じゃないんですからね」
今までは仲良くしていたが、
そんなことをもやもやと考えながら、
冷食のハンバーグに、冷食のスパゲッティ、手作りの卵焼き、ご飯の上にはふりかけと、内容は至ってシンプルなものだ。さすがに塩辛は入っていなかった。
「ふふふ、誰かに作ってもらうって嬉しいですね」
「うん」
お弁当を見た
「
「じゃあ、協力してくれよ!」
「それは時と場合によります。私は
なんだろう。心底、その言葉にほっとしてしまった。
昨日みたいなことはあっても、俺と
……でも、これからずっと
もしそうなってしまったときに、無条件で
「そっか、それはそれで嬉しいな」
「めちゃくちゃいい顔で笑っちゃってますよ」
調子にのりそうだから本人には言わないけど、本当に
もちろん俺自身も、
「ところで
「塩辛? なぜに今!? どちらかというと苦手ではありますが……」
「なんだ、つまんない」
「い、一体私になにをしようとしたんですか!?」
「秘密」
「チーフ、お休みのところすみません。作業場に
「あっ、今行きます!」
「……」
「どうしました?」
何故か
「それ――」
「それ?」
「ち、チーフの彼女って
「はぁああああ!?」
「なんでそうなるんですか!?」
「だって、それ……」
「ん?」
今の状況だけを冷静に確認しよう。
同じ店から異動をしてきた異性が隣にいる。
同じ休憩時間で、同じ中身のお弁当を食べている。
「えへへ~、ついにバレちゃいましたねチーフ」
「今すぐ黙れ!」
※※※
「ぐすっ、ぐすっ」
しんっと静まり返った作業場に鼻をすする音が聞こえる。
「あ、あのサブチーフが泣いてる……?」
「なにがあったの?」
お刺身を切っている
この前とは別の意味で地獄みたいな雰囲気だ……。
「チーフ、サブチーフになんかしたの?」
「してないけどしたみたいです……」
「も~、そんなに恥ずかしがらなくていいのに!」
「だから江尻さんは黙ってて!」
作業の手は動いているので、微妙にちゃんとは怒りづらい。
こういうところは本当に器用なやつだと思う。
「えっ? 本当にチーフと
「なわけないでしょう! これが付き合っているように見えますか!?」
「たまに見える」
「同じ部門でそんなことあるわけないでしょう!」
「それもそっか。若いっていいね~」
いつもは寡黙な
「ち、チーフ、明日の仕込みはどこまでやりますか?」
「あっ、もうそこが終わったら終了で大丈夫ですよ」
「分かりましたぁ……」
こっちはこっちで非常にやりづらい!
「あっ――」
そんなとんでもない状況で作業を続けていたら、売り場に見慣れた人影を発見した。
「あれです! あれですから! 俺の彼女は!」
自分で思ったよりも大きな声が出てしまった。
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