♯17 初めての喧嘩?
「ごめんなさい」
「ぷんぷんです。今日の私は怒ってますからね」
家に帰るとすぐに不機嫌な
理由は聞くまでもなく、絶対に今日のあれだろう。
「確かに
「
「少しは正妻の余裕を見せたくてですね! それに
せ、正妻って……。
「で、お弁当は二つ食べたと? そのサブチーフと
「二人ともせっかく作ってくれたわけなので……」
「私のは断ったくせに!」
「それに対しても申し訳ないなぁという気持ちはありまして……」
何故か敬語になる俺。
ここまで
今日はお昼に二人分のお弁当を食べたのでお腹いっぱいになってしまった。
夜ご飯はとても食べられそうになかったので、事前に
ちなみに、初めて既読スルーされた。
「まだリニューアルオープンしてから半月も経ってないのに! 全然油断できないじゃないですか!」
「でも、俺ちゃんと彼女がいるって言ったから!」
「むぅ……」
どうしよう。同棲してから初めての喧嘩? かもしれない。
「やっぱり、
「いや、それは朝早いから大丈夫だって――」
「問答無用です」
「はい」
こ、ここは素直に言うことを聞くしかない。
俺はただ
「大体ですよ! よく考えたら
「そ、そりゃあ……」
「その
冷蔵庫の中身を確認しながら、
「うーん、全然食材がないですね。ちょっとお買い物に行ってきます」
「今から!?」
「はい」
時間は夜の9時。
「いいって! 今度からで大丈夫だよ!」
「行きます。今ならぎりぎりお店に間に合いますもん。それに値下げの商品がいっぱいあるかもですし」
「いや、この時間まで売れ残っている商品って――」
「なんですか!?」
「なんでもない!」
しまった、職業柄余計なことを言いそうになった。
閉店間際まで残っている値下げ商品って、50%引きどころか70%引きになっても売れないダメダメな商品なのである。
廃棄まっしぐらの商品、それを
「大丈夫ですよ、
「心配でゆっくりできないから!」
そう言って、俺も急いで買い物に行く準備をすることにした。
※※※
「……」
「……」
台所には赤札が貼られた商品が並んでいる。
50%引きになっているイカの塩辛。
70%引きになっているカット大根が複数。
もはや定額50円で売られていた色が変色したバナナ。
そして、10円で売られていた
「これでなにを作ればいいんですかーー!?」
「だから値下げの商品を片っ端から買うのは危険だと」
捨てられるのは可哀想だからと、どんどんお買い物カゴに入れていくものだから結構な量の買い物になってしまった。
価格は申し訳なくなるくらい安かったが、その悪癖は早く直してあげたほうがいいかもしれない。
「塩辛のお弁当はやだなぁ」
「うっ」
「あっ、でも
「
携帯をいじりながら
「うーん、検索すると塩辛大根とか出てきますね。でもお弁当っぽくないなぁ」
「そんなにお弁当に気合入れなくてもいいって」
「ご飯に冷食をチンしたやつで十分だよ。最近の冷食ってかなり美味しいし」
「でもなぁ、がっかりされたくないじゃないですか」
「がっかり?」
前にも同じようなことを言われた気がする。
「
「そんなの気にしなくてもいいのに」
「気にもします! 隙を見せたらすぐに攻めてきそう人たちが沢山いるので! たこさんウインナーは切れるようにしておきますからね!」
「なんで、今日の弁当の中身を知ってるのさ!?」
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