♯13 チーフになるための条件 前編
リニューアルオープンから三日ほどが経った。
売上は非常に順調。
計画していた売上高よりもかなり良い数字を作ることができている。
「……」
「……」
「……」
「……」
が、作業場の雰囲気は最悪だ。
疲れがピークなのもさることながら、原因は間違いなくこの前の事件からだった。
「……」
「……」
特に
(……)
俺が原因でもあるが、この雰囲気は部門責任者としても非常にまずい。
少し作業の時間をもらって、俺はまずは
「
「は、はい!」
品出しをしていた
早朝出勤のかいもあって今日は作業的に余裕がある。そのままバックヤードの裏にある喫煙所まで一緒に行くことにした。二人ともタバコは吸わないが、ここはコーヒーを飲んだりする小休憩所としても使われている。
「この前はごめんね。忙しくて話をするのが今になっちゃった」
「い、いえ……」
明らかに
いつものはつらつとした雰囲気がどこかにいってしまっていた。
「確かに私の態度は良くなかったと思いますが……」
「ううん、
「私、ちょっとカチンときてしまいまして! だって、あんなこと言われたらせっかく来てくれた
「ま、まぁ
……俺は正直、お客さんの接客に正解はないと思っている。
お客さんと距離が近い店員さんもいえば、ただマニュアル通りに接する店員さんもいる。
それが嫌だと言う人がいれば、それが良いと言う人もいる。
これはお客さんの受け取り方の問題なので、答えが出ない問題だと思っている。
「
「そんなことは……」
「まぁ、
「……」
そう言うと、
これでちょっとは気が紛れてくれたかな?
「さて、ちょっと
「な、なにを話すんですか!? 私、あの女嫌いなんですけど!?」
「は、はっきり言いやがったな」
チーフとしての立場があるから大っぴらには言えないが、俺だってあの人は苦手だよ! 今の
でもそれじゃダメだ。
(部門員は家族……部門員は家族……)
思いやりをもって接しないと。
「じゃあ
俺は
※※※
「すみません、
「いえ」
さっきの
「とりあえず謝罪をさせてください。この前の売り場の件は俺も良くなかったです」
「……」
「実はあの人たちは俺が親しくさせていただいる方でして。
「でも
明らかに一歩も引かないと姿勢を見せている。
「……
「……」
「なので、これから話す話はこの件とはちょっとだけ切り離して考えていただきたいのですが」
「えっ? 別の話ですか?」
「はい、
「私?」
すぅと少し息を吐く。
俺は立場上は
でも、今後このリニューアル店舗で働くために。
……綾瀬サブチーフがチーフになれるように、必要なことを伝えることにした。
「
「えっ?」
作業場の雰囲気って、長年勤めている人がいればいるほど悪い意味で変わりづらい。
でも、今はリニューアルオープンして日が浅い……。
この店舗の鮮魚部門が変わるなら今しかないと思った。
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