♯3 スーパーの暗黙のルール
「あっ、
「
「ま、まだ名前は変わってないです……」
「まだですってー! もー、
早速、
他の会社はよく分からないが、俺のいるスーパーはその日初めて会った人には必ず「おはようございます」と挨拶をする。
昼だろうが、夜だろうが関係なしにだ。
なので、時間帯関係なしに「おはよう」は実に会社の人たちのやり取りって感じがする。
「なんでここにいるの?」
「買い物です」
「引っ越しは終わったの?」
「はい、バッチリです!」
「まさかこんなところで会うなんて」
「あっ、嫌そうな顔してる」
「してない」
当然、新しい店舗の近くに住むことになるわけだから生活圏は一緒なわけだ。
「
「シュバッってなにさ」
そういう
ただ、誰にも会わないと思って油断したいのかジャージにパーカーのラフな姿だ。
「ぐっ、私の服を見ましたね……!」
「うん」
「しかもすっぴんを見られた」
「そこまでは見てない」
「ふーんだ。どうせ私は
確かに
「
「行く行くー!
色々あったが、
「じゃあ後は若いお二人で――」
「「
※※※
「
「はい! 私、コーヒー好きなんで! さっきもコーヒーメーカーを探してたんですよ」
ホームセンター近くにある、チェーンの喫茶店に三人で入った。
二人のテンションが異様に高い。
「
「
パートのおばちゃんみたいなことを言ってくる
多分、
しかし、この機会は丁度良かったかもしれない。
仕事のことで
「ところで
「あっ、はい。新しい店長から連絡がありました」
仕事の話をすると、
さすがこういうところはちゃんと社会人だと思う。
「29日はお昼に出社してミーティング。30日から売り場の準備だからね」
「はい、頑張ります!」
「俺、
「はい? なんでしょうか?」
「最初はあまり落ち込まないようにね。できなくて当たり前だからね」
「ど、どどどういうことですか!?」
新店の準備はかなりの激務だ。
年末商戦がパワーアップしてやってくるくらいの心構えじゃないと、絶対にメンタルが持たない。
部門新人の
加えて、リニューアルオープン時には会社のお偉いさんが沢山くる。
特に部門の統括やバイヤ―は、俺たちと一緒に作業場に入ることになる。
おそらくずっと緊張続きの環境になってしまうと思う。
「
「シール貼り?」
「右下に値付けシールが貼ってあるなら、左上にはお買い得とか商品の飾りシールがあるでしょう? それの貼り方をお願いしようかなって」
「そ、そんな簡単な作業でいいんですか!?」
「物量やばいからね。頑張ってね」
……最初からまな板に入るのは絶対に無理だ。
だから、最初は簡単な作業で少しずつ鮮魚の仕事に慣れていくしかないのだ。
本当はリニューアル店舗って新人さんが来るような現場ではないんだけどな……。
それだけ会社は、
「後は値下げかな? 青果で値下げはやってたでしょう?」
「そ、それくらいならできると思いますが……」
「後の詳しい作業段取りは、バイヤーと打ち合わせしながらミーティングでやるからね」
新しい鮮魚メンバーとの顔合わせもある。
正直、リニューアルが始まったら、俺も精神的に余裕があるかは分からない。
だから今のうちに少しでも
「
……そんな気持ちでの会話だったのだが、
「その予定」
「わ、私もアルバイトしたいって言ってたのに!」
「
「うぅ……」
そ、そう言えば
この様子だと、本当に俺たちの店舗に応募するつもりでいたらしい!
「ちなみに言っておくけど、鮮魚部門のアルバイトは多分無理だよ……」
「な、なんでですか!?」
「いや、知ってる人は知っているからさ」
俺と
でも知っている人は知っている。
というのも会社で家賃補助があるから、新しいアパートを借りるときに誰と住むかくらいの聞き取りはあるのだ。
夫婦や恋人関係にある人たちを同じ部門に置かないのは、スーパーの暗黙のルールとなっている。
「じゃあ、私が
「頑張らなくていいですから!」
「いやいや! そこは頑張ってもらわないと困る!」
俺がそう言うと、
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