♯4 恋から恋愛へ
その後、
お昼の時間になったので、 キッチンで
「仕事なんだからそんなに怒らなくても」
「怒ってはいません」
少し拗ねてしまっているように見える。
「これから私の知らないことがいっぱいあるんだと思ったら、ちょっともやもやしちゃっただけです」
「知らないこと?」
「だって
「そりゃそうだけどさ……」
スーパーのお仕事に異動は付き物だ。
異動の度に部門のメンバーが変わって、その度に色んな人と出会うことになる。
上司となる店長も変わるし、周りの環境もガラッと変わることになる。
他の仕事と比べると、そこがちょっと違う所かもしれない。
普通はそうそう上司が変わるってことはないと思うし。
「可愛い子がいたらやだなぁ……」
「鮮魚にそんな子いないって」
「それはそれで問題発言な気もしますが……。それに
うーん……。
今まで俺と白河さんの接点は、職場がほとんどだった。
その接点がなくなってしまうのは、彼女にとってとても不安なことなのかもしれないなぁ。
「でも、そんなこと言ったら
「私?」
「大学のほうが色んな人がいるでしょう。しかも自分の同世代で」
昔、うちの親父が利害が関係なく付き合えるのは学生のときの友達までだって言っていた!
これから、きっと
それがちょっと羨ましい。
「じゃあ
「ん?」
「私が知らない誰かと話していると思ったら嫌な気持ちになってくれますか?」
……。
……。
へ?
「めんどくさい女ですみません」
「い、いや……」
「分かってるんですよ、自分でも嫌な女だなって。でも
……やばい。
かなり嬉しいかも。
素直にそんな風に言ってくれるのがたまらなく嬉しい。
「
「きゃっ」
「あ、あの! 今、包丁使っているから危ないですよ!」
「はなせばいいじゃん」
「も、もう……」
俺がそう言うと、
耳は心なしか赤くなっているような気がする。
体はかちかちに固まってしまっている。
「
「そうですね……」
「じゃあ若い子に負けないように頑張る」
少しだけ強がってそう答えた。
俺だって嫉妬するし、自分より若い男と
年上なのに、
「……私が男の子と携帯の番号交換したら嫌ですか?」
「嫌だ」
「私が大学のコンパに行ったりしたら嫌ですか?」
「それは仕方ないと思うけど、心配はすると思う」
「そ、そうですか……」
俺がそう言うと
「じゃあ私と一緒ですね」
「そうなの?」
「はい、
なんの淀みもなく
「浮気は駄目ですからね」
「分かってる」
「私、浮気されたら泣いちゃいますからね」
「分かってる」
「わんわん泣き叫びますからね」
「分かってるって」
「値下げされても買っちゃダメですからね」
「ど、どういう意味!?」
「
「あっ、そういう意味か」
「
「もううるさいなぁ」
……
口で言っても不安になってしまうなら行動で分かってもらうしかない。
「
俺は、後ろからハグしたまま
「あっ――」
――そのまま自分の唇と
本当に突発的なキス。
ただのアパートの普通のキッチンで俺たちは初めてのキスをした。
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