♯19 白河さんとお出かけデート 前編
土用丑の日を終えて、七月の最終週。
今日は
この前の食事とは違い、今日は初めからちゃんとデートという名目でのお出かけだ。
「
店から少し離れたコンビニで、
コンビニに着くと、すぐにコンビニの入り口前で待っている
「ち、チーフ! おはようございます!」
助手席のドアガラスから、すぐに
「おはよう
「し、失礼します……」
俺がそう言うと、
「えぇえ!? 二回目なのにまだ緊張してるの!?」
「だ、だってぇ……」
小柄な
「ところで遠出するって、ちゃんと親には言ってきた?」
「そ、それはちゃんとお母さんには言ってきましたが……」
「ちなみになんて言ってたの?」
「頑張れって言われました……」
頑張れってどういう意味……?
「ち、チーフ、これをどうぞ……」
「これ?」
「チーフがいつも飲んでいるコーヒーを買っておきました」
「い、いいの? お金は出すよ!」
「たまには私にもお金を出させてください」
まさか学生のアルバイトにそんなことを言われてしまうとは。
お金の感覚がしっかりしているというか、なんというか……。
「……それじゃありがたく頂戴します」
「はい、そうしてくれたほうが嬉しいです」
会ってからずっと緊張していた様子の
「
「はい! 買ってきましたよ!」
「なに買ったの?」
「えへへ」
白河がはにかみながら、手提げバックからその飲み物を取り出した。
「チーフとお揃いです」
自分の顔の前で、両手でその缶コーヒーを持って、俺に見せつけてきた。
※※※
今日はある所に向かって、クルマを走らせていた。
俺的には今日行くところはそんなにノリ気ではない。
……が、
「普通、女子高生が市場なんかを見たいって言う?」
「えー、だって一度は見てみたいじゃないですか。自分が値下げしているのはどこからくるのかなぁって」
「真面目だなぁ」
市場……我々生鮮部門の主な仕入れ先になっているところ。
ここで本部のバイアーが商品を買い付けて、各店舗に商品を分荷していくことになる。
これは俺の肌感でしかないのだが、スーパーの出世は、バイア―コースと店長コースに分かれているような気がする。
バイアーは会社として自分が担当している部門の数字を注視する係。
店長は実店舗で店全体の数字を管理する係だ。
バイアーとは、要するに商品の買い付け係だ。
店に陳列する商品を見つけるためにメーカーと打ち合わせはしないといけないし、新鮮な魚を市場に買いに行くためにお日様が出る前から仕事をしなければならない。
会社全体としての数字責任があるので、普通のチーフとは重圧が全然違うと思う。
「チーフ、私、そんなことよりも聞きたいことがあります」
あれ? 自分で行きたいって言ったくせに早々にその話を切り替えられてしまった。
「聞きたいこと?」
「
あっ、ちゃんと覚えてたんだ。
「気になる?」
「気になります。意地悪しないで教えてください」
「なーんもないよ。普通に断った」
「そうなんですか?」
「
「余裕があったらするんですかっ!?」
「そういう意味じゃなくて」
頬もぷくーっと膨らんでいる。
……申し訳ないけどちょっと可愛い。
「あんまりそういう話はしないほうがいいかなぁと思ってたんだけど」
「なんでですか! 私、今日は真っ先にそのことを聞こうと思ってました!」
「えぇえええ、そうなの!?」
「そうです!」
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