♯8 白河さんとお食事デート 前編
食事に行く当日
「チーフおはようございます!」
「おはよう
店とは少し離れた公園で
離れた場所にした理由は、もちろん店の人たちに見つからないようにするためだ。
「じゃあクルマに乗って」
「す、すみませんじゃあ失礼します……」
緊張した様子で、
どこにでもあるセダンタイプの普通車だから、そんなにかしこまる必要はないのだが……。
「あ、あははは……店の外で会うと緊張しちゃいますね……」
体がかちんこちんになってしまっている。
「大丈夫だよ。今日は俺も緊張してるから」
「チーフもそうなんですか?」
「そりゃそうだよ。女の子と出かけるなんて全然ないから」
「ち、チーフはてっきりそういうのには慣れているものかと……」
「慣れてない慣れてない!」
俺ってどんな印象なんだ!
「でも本当に良いの?」
「な、なにがでしょうか……?」
「いや、本当に安いファミレスで良かったのかなって」
「はい! そこでなら沢山話せますし! それにお金のこともありますし……」
うわっちゃー。声が奮えちゃってるし。
それに、ちゃんとお金は自分で払うつもりでいたんだ。
「……服、店ではいつもエプロンだから新鮮だね」
「こ、この一週間はずっと今日着ていく服を悩んでいたのですが中々良いのがなくて……。私、おしゃれとかには疎いものでどうしようかと……」
今日の
ふわふわの栗色の髪を、今日は後ろに短く結んでいる。
店のエプロン姿に見慣れているので、まるで別人みたいだ。
「そんなに気にしなくても似合ってるよ」
「ほ、本当ですか……? なら良かったです……」
「でも、おしゃれとかにお金を使わないならバイト代は何に使ってるの?
「ぜ、全部貯金してます……」
「真面目だなぁ」
「い、いえ……」
うーん。
こちらから積極的に話しかけはているが、ぎこちない会話が続いてしまう。
「ふぅ」
「どうしたんですか?」
「ちょっとコンビニ寄っていい?」
「はい、全然大丈夫です!」
少しクルマを走らせると、コンビニが見えてきたのでそこに寄ることにした。
入り口前に前進で駐車する。
「
「えっ? 私、特に買い物は……」
「いいからいいから」
そう言って、
……店から離れたコンビニなので、知っている人には多分見つからないだろう。
「俺、コーヒー好きなんだ。朝に飲むとスカッとしてさ」
飲料コーナーの棚を
「はい、知ってます! チーフっていつもコーヒー飲んでますもんね!」
「飲まないと一日が始まらないって感じがしてさ」
「チーフ、夕方もいつも決まった時間に飲んでますよ」
「そうだっけ?」
「だって、いつも私にもコーヒーを用意してくれるじゃないですか」
そんな会話をしながら、俺はいつものコーヒーを手に取る。
「
「あっ、じゃあ私も同じやつを……」
「今日は気を遣わなくていいから。
「えっ、な、なんでそれを……」
「あんまり飲んでいるところを見たことないからさ。いつもごめんね、あれって部門の人はみんな同じやつだから」
「い、いえ――」
俺がそう言うと、
……が、結局俺と同じコーヒーを手に取ってしまった。
「もー、今日は気を遣わなくていいって言ったのに」
「いえ今日はこれがいいんです。それにチーフと働くようになってから飲めるようになったので」
「本当に?」
「本当です。ふふっ」
がちがちに緊張していた
「はい、じゃあレジ行ってくるから」
「あっ、お金……」
「今日はお金いいから。
「で、でも……!」
「いいから、ちょっとは格好つけさせてよ」
「ち、チーフはいつも格好いいと思いますが……」
「え?」
「な、なんでもないです!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます