超日本列島大戦後
「き、緊急ニュースです」
番組司会は慌てふためきながら、今、超日本帝国で発生している大事件について報道した。
「只今、超日本列島大戦が――」
ニュースは超日本列島での苛烈な戦闘の様子を俯瞰的に流していた。強化型IRを使用しての大規模な内戦だった。超日本帝国と抵抗軍とでせめぎ合っている。
「なに、これ……?」
「やばくない……?」
京都府の通行人達が立ち止まり、商業施設の店前に置かれたテレビ画面を眺める。ニュースを見た人間は完全に言葉を失った。
「これが、日本、いいや、超日本帝国なのか……?」
日本に住んでいた人間は大きく2極化していたのだ。Qの急進的な政策に対して首肯派の人間達と、反対派の人間達。反対派の彼らは意見を主張することもなく、ただ内面で怒りを溜めていたのである。
そして遂に、彼ら反対派の人々は事件を見て、怒りを爆発させていった。反対派は大人数であり、肯定派は少数に変化していった。
「ふざけるな!こんな争いが許されるか!」
「おい、Q!何をしているんだ!」
京都市では議論が勃発していた。
Q否定派を始めとして、新たなるQ肯定派や中間派も、否定派に流れていったのだ。当然だった。こんな野蛮な行為をしていけば、日本はおろか、世界は本当に大戦に巻き込まれていくだろう。
だが未だにQ肯定派の存在も確固としていたのだ。
「いいや、これは仕方のない内戦だろう。やはり完全なる理想郷を創るには、犠牲も必要なんだ」
「馬鹿野郎!こんなもの、許されるはずねーだろ!」
「でも、見てみろよ。大戦なんて言っても、死者は一人も出てないぜ」
「え……?」
Q否定派はあんぐりと口を開いたまま、テレビ画面を眺める。
「現在、死傷者はおろか、負傷者すらも出ておりません。それほど、北海道侵略は極めて慎重に行われていた模様です」
というニュースキャスターの言葉とともに、再び、北海道本土の映像が流れた。
強化IR機体が複数進撃していっているのだが、抵抗軍の人間にもそして北海道市民にも手を出していないのだ。さらには環境や動物にも配慮を入れているらしく、表面だけを見れば至って平和的である。
「すげー慎重だ……」
「侵略には見えねーな……」
「あ、超日本帝国軍の一人なんて、子供をIRに乗せて、優しくしてんじゃん……」
そして超日本帝国軍は、さらに日常生活を送っている人々に対して意思疎通も行っているのだ。
「安心してください、北海道のみなさん。大人、子供、動物、自然、そして脈々と受け継がれてきた文化伝統。我々超日本帝国軍は、絶対に何も傷つけません。ただ北海道本土に設置された抵抗軍の軍事基地を破壊するだけです。それ以外には何も壊しません。そして出来るだけ迅速に、そして出来るだけ優しく侵略します」
とIR機体から声明を流しながら、侵略しているのだ。
「すっげー丁寧な侵略だな……」
「侵略する気あんの……?」
「もっと苛烈にしても、良いんじゃない……?」
否定派の連中はその根性のなさに呆れてもいた。
「それでは一旦、ニュースの報道を終わります」
緊急ニュースが幕を閉じた。
「……」
そんな報道を耳にして、Q否定派の連中は驚きを隠せなかった。
どういう事だ?
だがしかし侵略は侵略である。例え人や動物、自然、伝統、その他などを傷つけなくとも、それは行為そのものとしてやってはならぬ野蛮な行為である。よって罪であり、それは糾弾されなければならぬ。
という結論から、超日本列島各地では暴動が起きていた。内部分裂を起こしていたのだ。賛成派と反対派の人間が大きく衝突しあう。
「で、でも侵略は侵略だ!これは許されない!」
「いいや、別に良いだろ!誰も死んでねーんだ!」
超日本列島大戦を機に、超日本列島は大きく揺るぎ始める。
「鎖府令を発動します」
首相官邸が位置する京都府に、鎖府令を発令したのだ。このままだと超日本列島から押し寄せる反対派の連中がさらなる問題を引き起こすだろうと。
Qは京都府の周辺に巨大な壁を建築していたのだが、さらに産業用の小さなIR機体を駆使して、急ピッチで完成させていった。
その頃、零血は抵抗軍の基地の中に居た。彼は中枢部の指揮官として活動していた。
「これから京都に行きましょう」
零血は決意していたのだ。
Qという謎の犯罪者を捕まえなければ、この独裁政権の進撃は止まることはない。それならば、Qという犯罪者と直接対決こそが唯一無二の道である。
「抵抗軍の英雄がそう決断しているのなら、我々は従うことしか出来ません」
抵抗軍は零血の決断に同意した。
だがしかし、さらなる問題がここで発生する。壁の超えることは不可能であったのだ。まず鎖府令を発令した京都府に入府することは厳重な調査が行われる。
なので零血が人伝いで何とか乗り移り、壁を越えても、一度思考を止めれば、再び最初からスタートしなければならない。それはあまりにも苦労である。
鎖府中の京都府では電波も遮断されているので、映像から入り込む隙もない。零血は既に完全なまでに先手を打たれていたのである。
「どうしますか……?」
「いいや、強制的にでも入府する」
零血は己の命を賭けることを理解していた。
そして零血一行は、鎖府中の京都府に入府していったのであった。
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