第34話 Vs.タイタン
俺達の目の前を、凄まじい勢いで突っ込んできたタイタン。その動きは荒れ狂う猛獣のように凄まじいい速さであった。しかし、俺たち全員が必死の思いでその突進を避け、一命を取り留めた。
実際には、バリーはタイタンにぶつかりそうな危機的状況にあった。しかし、タイタンは右に軌道を微調整し、バリーを避け、そのまま大きな岩に全身をぶつけていった。
ドゴゴゴゴォォォォォン!!
その衝撃はあまりにも大きく、ダンジョン全体が揺れ動いた。そして、大量の土煙が立ち上り、視界が一瞬にしてかき消された。
タイタンは大岩に衝突した影響で、一時的に動きを止めた。その巨体が静止すると、一瞬の静寂が訪れた。
その時、タイタンが直接俺たちに訴えかけてきた。『イマダ タノンダゾ デニットタチヨ。ワタシニ ソウコウゲキヲ クワエテクレ!』と。
俺たちはその言葉を受け、「本人が言っているんだ!皆んな!タイタンを狩るぞ!」と、心を鬼にし、タイタンに向かった。
タイタンは大岩にぶつかった衝撃によるダメージで、一時的に動けないふりをした。しかし、ズリーとバリーは何とも攻撃をしづらそうにした。タイタンに向かって行く勢いも乏しかった。
ズバババァァァァン!!
シュパパパァァァァン!!
そんなズリーの顔をかすめるかのような勢いで、ゼファーが征矢を次々とタイタンに放った。
その姿は、まるで一人の戦士が巨大な敵に立ち向かう勇者のようであった。
「ズリー、バリー駄目よ!こういう時は一秒でも早くと終わらせるものよ!心を鬼にしなさい!情けは相手を苦しめるだけ。タイタンは立派な戦士よ!真剣に...殺しに行きなさい!」
その言葉にはっとしたズリーとバリーは、それぞれの武器を握り直し、その重さを確かめるように握った。2人の瞳は、タイタンに向けられ、その決意は鋼のように固まった。
「ご、ごめんなさい!タイタンさん!全部終わったら、しっかりと謝ります!」
「いだいごとして...ごめんなんだな!」
ズリーとバリーは、脳内でタイタンに謝罪の言葉を呟きつつ、その巨大な存在に向かって勇敢に突進していった。彼らの姿は、まるで若き戦士が成長の過程で初めて巨大な敵に立ち向かう、感動的なシーンを彷彿とさせるものであった。
2人の後に俺とレバルドが続き、ダガーとリジェネレーション・シールドを手に、俺たちも攻撃を加える。
もう、フルボッコ状態。やりたい放題で、タイタンはただ受けるのみ...。
レバルドは、「早く全てを終わらせるのじゃ!そうしたら戦士同士、酒を酌み交わそうぞ!」と力強く叫びながら、リジェネレーション・シールドを再度構え、全力の一撃をぶちかました。
これにはタイタンも堪えきれなかった様で、全身から、辺りを真っ黒にするほどのスミを吐き出した。
『カンシャスルゾ!ソレニ デニット ゼファータチヨ キミタチト イッショニ オサケヲ ノムヒヲ タノシミニ シテイル』とタイタンは力強く宣言した。
その言葉が脳内に響き渡ると、タイタンは再び大量のスミを吹き出した。そのスミは煙幕のように広がり、俺たちの視界を一瞬で覆った。
ブォォォォォォ!!
「キャー!!」
「ウォッ!前が見えねえ!」
タイタンは大量の煙幕を吹き出し、その煙が晴れたとき、タイタンの姿はもうここにはいなかった。多分、10階の湖に向かったのだろう。無事にたどり着いていることを願うしかないな。
今はタイタンを信じるしかない。俺たちは...あいつに託された仕事をこなしにダージリン村に向かうのみだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあ皆んな、急いでダージリン村に行くぞ!ランドとメリー、頼んだぞ!」ダンジョン入口付近で待機していた2頭の所へ、俺たちは駆け寄り、ダージリン村へと急いだ。
皆んな、【1K】でのんびりする気分にはなれず、交代で【1K】内で短い休息を取ることに決めた。
ランドとメリーは、2時間走った後に20分休憩を取るというパターンを繰り返し、1日に40キロほど走ってくれた。
ランドとメリーに無理をさせていないか心配になる。しかし、バリーの言葉によれば、2頭は問題ないという。
驚くべきことに、馬は1日にわずか3時間程度の睡眠で十分な生き物だという。しかも、一気に3時間寝るのではなく、一回の睡眠時間は15分程なんだとか。
休憩時間が訪れると、バリーは2頭に対して水分補給を行い、乾草を与え、さらに野菜まで与えている。マメな男だ。
バリーの手厚い世話のおかげで、俺たちはティーブリッジを越え、元気なままダージリン村に到着できた。
旅の途中では、リバーゴブリンやリバーオークといった魔物が次々と出現した。俺たち冒険者にとってはそれほど問題ではないが、一人の商人が同じ道を旅するとなると、その危険性は計り知れない。
セカンドブリッチ前で待機していた商人たちが、現状でダージリン村に来るのは絶望的だと感じた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ダージリン村に到着したとき、俺たちがベリーベリー村、つまりセカンドブリッジ側から来たことで、門番連中がざわめき出した。
「こちらの西側の門は今、訪れる客が非常に少ないんだ。よく来てくれたな、旅人たちよ。セカンドブリッジが崩落した中、大変な思いをしてダージリン村に来てくれた旅人たちには申し訳ないが、5銀貨を頂けるか?」
門番の親父は申し訳なさそうに尋ねてきた。
規則は規則だからな。もっと堂々とすればいいのに。ウイリーという門番の親父は体格がいい。だが、非常に柔らかい話し方をする者だった。
「時間があれば色々と話しを聞かせて欲しい」とウイリーに言われた俺は詰め所に通された。俺が詰め所で話している間に、必要な食料品や酒、そして日常雑貨などの買い付けをズリーとバリー、それにレバルドに頼んだ。
マゼールとゼファーはすぐにダンジョンの下見に向かった。ゼファーもタイタンの状況が気になるようで、ダンジョンの調査を引き受けてくれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
村全体が何とも言えない緊張感に包まれている。村人たちは何となく落ち着きを失っており、若干、殺気立っているようにも感じる。
「よくこちら側から来たな。今、セカンドブリッジが魔物によって破壊され、村全体が混乱しているんだよ。あんたたちは冒険者かい?もし時間があるなら、少し話を聞かせてもらえないかい?」
ウイリーはそう言いながら、冷たい飲み物を差し出してくれた。
彼は無理にセカンドブリッチ周辺の情報を聞き出そうとはしない。優しい男だ。
「ああ、俺たちはこの村近くのダンジョンに挑むつもりだ。ダンジョンについて何か知っていることがあれば教えてくれ。今、仲間たちが必要な物資を買い付けに行っている。それが済んだらダンジョンに挑むつもりだ」
ウイリーが差し出してくれた水を頂いた。
「そうかい、ただ今は...村の外に出るのはお勧めしないぞ。セカンドブリッチが魔物によって壊されたことは知っていると思うが、村人たちは次にこの村が襲われるんじゃないかと、内心恐怖に打ち震えているんだよ」
ウイリーはやれやれという表情を浮かべた。
そんなウイリーに対して、俺はセカンドブリッチ周辺の状況と、セカンドブリッチからティーブリッチまでの道の様子を、川沿いのダンジョンのことは伏せて簡単に説明した。
「そうか...。あんたたちは強そうだけど、そんなに魔物が出るのなら、普通の商人はティーブリッチ経由でダージリン村に来ることは厳しいだろうな。それと...このことは領主様にも伝えるが...いいか?」
わざわざ俺に聞いてきた。いちいち確認などいらないのに、律儀な男だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ウィリーと話している最中、突如として門の方から数人の男たちが慌ただしく駆け込んできた。
「何が起こったんだ!すまない、旅人さん。ちょっと待っててくれ!」と言いつつ、ウィリーは慌てふためきながら詰め所から出て行った。
「大変だ!バズボンド様が魔物に襲われた!それだけじゃねえ!みたこともねえ魔物に、「従属封じの杖」まで奪われてしまった!」という声が、村全体に響き渡った。
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