第26話 それぞれの新たな装備品

 さて、アイルとコワの物語が進みだした頃、ベリーベリー村の一行はというと、ダンジョン最終日の朝を迎えていた。


 今日は、待ちに待った装備品や靴、防具品が完成する日だ。職人たちからの好意の品を受け取った後、マルタイ奴隷商会に一泊させてもらおう。


 カノットの料理も食べたいしな。


 そして明日はいよいよ、ダランバーグ大聖堂に向かうとしよう。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 この3日間、スキル本を一生懸命集めた。


 後、ズリーとバリーは3食しっかりと食べるようになってから、身体に肉がつき、顔色も見違えるようによくなった。


 特にズリーは怪我も治り、もはや別人。まあそうだよな。やけどで皮膚はボロボロ、髪の毛は抜け落ちていたしな。よかった...治って。


 今回のレアなスキル本集めでは、バリーが一番の功労者だったかもしれない。特製チャーハンの効果もあったかもしれないが、バリーが担当した階からはレアなスキル本がガンガン出た。


 通常、ダンジョンの1~3階では、レアなスキル本が出ることは非常に少ない。しかし、バリーの近くの宝箱からは驚くほどの確率で、レアなスキル本が出現した。


「おら、こんなにみんなから、ほめられたことなかったんだな。うれしいんだな」と言いながら、ダンジョン内を駆けずり回って、スキル本を集めてくれた。


 心なしか話しっぷりも、聞き取りやすくなったような気がする。


 今までは腹が減り過ぎて、声に力が入らなかったのかな?まあ、理由はよく分からないが...。


 バリーを中心に、皆ながスキル本集めに精を出してくれた。そのおかげで、ダンジョンに入ってからの3日間で、沢山のスキル本が集まった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 俺以外の4人が回収したスキル本

【薬草学】×5

【鉱物学】×4

【再生】×5

【知識】×12

【抽出】×3

【譲渡】×4

【拡張】×8

【細胞】×3

【扉】×3

【ルーム】×5

 

 俺の集めたスキル本

【薬草学】×5

【鉱物学】×4

【再生】×5

【知識】×4

【抽出】×3

【振動】×5

【性欲】×1

【バック】×2

【夜の帝王】×2

【テクニシャン】×1

【言葉攻め】×2

【敏感】×1



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 何故だか、マゼールの指示に従って行動をしていた割には、俺が回収したスキル本の中には、欲望系のモノが多くふくまれている気がする…。


 マゼールが『デニットさん、勿体ないから、取っておきましょうか...』と言って、集めたモノが殆どだ。


 特に【言葉攻め】に関しては、『デニットさん急いで下さい。4階の東です!ダッシュ!ほらダッシュですって!あーもう!もたもたしないの!』と、急かされてやっとこ取ったものだ。


 目的のスキル本の数に達した瞬間、マゼールは『し、仕方がないですね。も、勿体ないですから...将来的に役立つかもしれないスキル本を作ってさしあげます』と言い、ランクCの【夜の大魔王】を創り出した。


 すると、ゼファーとズリーが「すごいですよマゼール様!一晩中女性を虜にすると言われる、幻のスキルじゃないですか!奴隷商会で聞いたことがあります!」と、キャーキャー騒いでいる。


 ちょ、ちょっとお姉さん達、いくら脳内談話と言っても、全部...聞こえているって...。


 俺に何をさせる気なんだ、この3人は...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 皆なで、ベリーベリー村近くのダンジョン内を駆けずり回ったが、【空間】や【絆】、【会話】、【機能】、そして【征矢召喚】などのスキルは、結局一つも見つけることが出来なかった。


 マゼール曰く、このダンジョン内には無いか、本当に出にくいモノらしい。


『大丈夫ですよデニットさん!このダンジョンでは、出ないだけですから。他のダンジョンでは、非常に簡単に出るモノだってあります!私はダンジョンに入りさえすれば、宝箱の場所はもちろん、中身も分かります。安心して下さい!』と、元気よく俺に伝えてきた。


 頼もしい相棒だ。頼りにしているぜ、マゼール。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 皆なで会話を楽しみながら、顔馴染みのマルタイ奴隷商会にやって来た。奴隷商会の前で3日ぶりに合うロラッタさんから、「ちょっと遅いよ、どんだけ待たせるつもりなんだい!」と、こちらに向かって大きな声で言ってきた。


 ロラッタさんは、「ズリーちゃんにゼファーちゃん、お風呂に入っておいで。全て新しい服だよ。最後の微調整をするから、身支度をしてくるんだよ。ハバッカさんには伝えてあるからね」と、優しく2人に声をかけた。


 すると、ズリーとゼファーたちは元気よく「はい!」と答え、マルタイ奴隷商会のお風呂に向かった。もう慣れたもんだ。


 2人の姿をぼんやりと見ていた俺たちに対して、ロラッタさんは「ほらほら男連陣も、ぼさっとしていないで、お風呂に向かうんだよ!」と、少しイラついた声で俺たちに告げてきた。


ロラッタさんに言われるがまま、急いでお風呂に向かった。

 何だか、扱いが違いすぎる気がするんだが...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺たち全員がお風呂から戻って来ると、防具屋のマックスが「まずは俺の作ったヤツから、最終調整をしていくぜ!」と、俺たち全員に伝えてきた。


 元冒険者であるマックスは、見た目もさることだが、その機能性と耐久性に重きをあてた品々は、愛好家が多いと聞く。


 そんなマックスが用意してくれた防具類は、俺たち全員にお揃いのタバードだった。しかも貴重なカワハイドレザー製。サイドとフロントにスリットが入っていて、とっても動きやすい。


 機動性と防具としての性能、更には見栄えにも申し分のない品であった。


 ゼファーとズリーは、白色を基調としたモノ。レバルドとバリーは黒を基調とした色で、チームとしての統一感を持たせてある。


「ほらよ、オマエノはこれだ」と、俺用のタバードを投げてきた。


「お前は一応、リーダーみたいだからな。赤色に染色したカワハイドレザーを基調として作ってあるからな。防具に負けない働きをしてくれよ!」


 一応、リーダーは余計だろうと思いながらも、ありがたく受け取った。5人分も3日間で作ってくれるなんて大変だっただろうに。口は悪いが仕事に対しては熱心な男だ。


 マックスが用意してくれた防具は、タバードだけではなかった。防御面で難のあるバリーにはチェーンメイルを、女性陣には緑を基調とした、サーコートを2着、追加でくれた。


 何でもオーダーが入り作ったはいいが、取りに来なくて店の隅で眠っていた品らしい。だから気にするなとマックスは言ってきた。


 オイオイ、ズリーとゼファーにぴったりじゃねえか。どうやったらこんな貴重なサーコートが、店の隅で眠っているんだよ。色あせていねえし...。


 まぁ...余計なことは言わずに頂いておこう。


 生地代としてミスリル貨を、マックスに渡そうとしたら、「いらねえよ」と、投げ返して来た。


 ミスリル貨を投げ返すなよ...。


 ジャッカル達には相当値切られ、踏み倒されてきたらしい。「あのゴミどもの掃除代だ」と言って、受け取ろうとしなかったので、白銀貨数枚と「吉田松〇物語」を一個握らしておいた。


「お、おまえ...これをどこで...」と眼を大きく見開き、「吉田松〇物語」と俺を何度も見返した。


「礼だ。そして...俺の気持ちだ」と言って、強引にマックスに渡した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 防具だけではない。ズリーとゼファーはロラッタさん達の作ってくれた洋服を見て、キャーキャーと騒いでいる。


 華やかな薄いブルーや桜色のスカート。レインパーカーやスエットにコート。パンツやシャツなども作ってくれた。更に薄いピンク色のセーターまである。


 村中の女性陣、総出で作ってくれた様だ。


 後からハバッカ婆さんから聞いた話だが、この3日間は村中の者たちが、ズリーとゼファーのセーター造りと、バリーのチェーンメイルを皆なで作ってくれた様だ。


 また、ベリーベリー村にある高級ホテルバロンや、サバイアンに入っていた防具屋や衣服屋の職人達も、無償で手伝ってくれたらしい。


 どれだけジャッカル達は嫌われていたんだよ...。


 ズリーとゼファーの身長が殆ど一緒の為、「色々と交代で着あおうね!」とキャーキャー騒いでいる。俺の知らない、ボレロなんていうアウターまである。何だこれ⁉子供用の服か?


 俺たち男性陣にはパンツやシャツやセーターなどを準備してくれた。色は茶色や黒、白等、渋めの色を基調としたモノだ。バリーには悪いが、俺とレバルドはいい年をしたオッサンだからな。茶色や黒を着ると落ち着く。何故だかな...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 男性陣の中で、洋服に興味を一番示した者はバリーであった。何でも今までは身体がデカいため、貫頭衣と外套ガイトウしか着たことが無かったようだ。


 様々な洋服を、スーちゃんに見せびらかしている姿が何とも微笑ましい。そして、バリーは自分のために用意してくれた服の中で、革製のジャーキンベストが一番気に入った様だ。


 こげ茶色をした渋めの色合いと、案外温かいらしく、ス-ちゃんも喜んでベストの中に潜り、「ミャ~ン」と甘えた声を出している。


「スーちゃんもきにいっただか!」と、とても嬉しそうな笑顔をしている。


 よかった。


 ロラッタさんも俺を呼び寄せ、「これを着てごらん」と、赤色生地を主体とし、貴金属で装飾が施されたプールボワンを俺によこした。


 皆が俺に、赤色の服を着せたがるなと思いながらプールボワンを見ていると、「さっさと袖を通しな!」と怒られてしまった。


 黒色のズボンと、赤色のプールボワンの組み合わせは悪くない。1.5割増しかな。これならカトリーヌちゃんも落とせたかもしれないな。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ロラッタさんは他にも、防具の下に着るチェニックや、レギンスも1人につき5着ずつ作ってくれた。更には男性用のトランクスとシャツ、それに女性用のシャツも、5枚ずつ持って来たくれた。


 女性用のショーツとブラは、「凄いのをくれてやるよ」とハバッカ婆さんが、高級娼婦用のモノを用意してくれた様だ。


 まあお披露目は、その時が来るまで気長に待ちますか。


 ブーツとサンダルもヒース特製の品だ。ブーツは軽く機能性重視で、しっかりと脚にフィットする。この短期間で良く仕上げたな。


「ヒース。凄い仕事をさらりとこなしたな」と褒めると、「なあ、金はいらん、俺にも「吉田松〇物語」を一個わけてくれねえか?」と、真剣な表情でせがんできた。


 大人気だな「吉田松〇物語」...。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 試着が終わり、それぞれの能力と、装備品を確認した。内容は以下の通り。


 Lv.38 デニット・バロット 45歳 人族

 

 HP : 405

 MP : 157

 STR(筋力) : 114

 DFT(防御力): 115

 INT(賢さ)  : 89

 AGI(素早さ) : 185

 LUK(運)  : 120


 取得スキル

 EXスキル(1/1) 

 混ぜるな危険! 

 

 EX波及スキル(1/15) 

 高度先端医療(B)

 雷炎氷刃士(C) 

 

 取得スキル(0/3)


 武器:愛用のダガー

 防具:タバード(赤)

    ズボン(黒)

    ブーツ



 Lv.63 レバルド 60歳 人族

 

HP : 784

 MP : 193

 STR(筋力) : 395

 DFT(防御力): 386

 INT(賢さ)  : 72

 AGI(素早さ) : 172

 LUK(運)  : 92


 取得スキル(0/3)

 譲渡(D)(マゼールとの会話可能)

 破壊なき防壁(C)


 武器:リジェネレーション・シールド

 防具:タバード(黒)

    ズボン(黒)

    ブーツ



 Lv.25 ゼファ― 21歳 エルフ族  

HP : 224

 MP : 269

 STR(筋力) : 62

 DFT(防御力): 57

 INT(賢さ)  : 98

 AGI(素早さ) : 96

 LUK(運)  : 60


 取得スキル(0/3)

 譲渡(D)(マゼールとの会話可能)

 無限流氷地(C)


 武器:ゾルスの弓

 防具:タバード(白)

    サーコート(緑)

    ズボン(黒)

    ブーツ



 Lv.8 バリー 16歳 半魔

HP : 172

 MP : 68

 STR(筋力) : 165

 DFT(防御力): 155

 INT(賢さ)  : 22

 AGI(素早さ) : 23

 LUK(運)  : 22


 取得スキル(0/3)

 譲渡(D)(マゼールとの会話可能)

 魔物の顔見知り(C)


 武器:ウォー・ハンマー

 防具:タバード(黒)

    チェーンメイル

    ズボン(黒)

    ブーツ



 Lv.5 ズリー 18歳 人族  

HP : 55

 MP : 88

 STR(筋力) : 22

 DFT(防御力): 21

 INT(賢さ)  : 64

 AGI(素早さ) : 32

 LUK(運)  : 26


 取得スキル(0/3)

 譲渡(D)(マゼールとの会話可能)

 1K(C)


 武器: 風きりのナイフ

 防具: タバード(白)

    サーコート(緑)

    ズボン(黒)

    ブーツ



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 装備品と、能力の確認を終わった後は、3日ぶりのカノットの食事だ。相変わらず美味い。


 食事中も、女性陣の話題の中心は洋服だ。マゼールも加わり、楽しそうだ。男性陣は...酒、肉、黒パンサンドに夢中であった。


 さあ、明日はビリーバリー国に旅立つとするか。久しぶりにベリーベリー村を離れるな。途中のダージリン村までは、乗合馬車で約10日間かかるらしい。


 まあ今日のうちに、たらふく美味いモノを食べるとするか!皆もそんな感じだ。


 さあ、明日からは当分馬車の旅か。俺...馬車苦手なんだよな。お尻が痛くなるんだよ。スキルで【お尻強化】とかでないかなと、しょうもないことを真剣に考えるデニットであった。 

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