147話 男女

 九条 菜音です。今日は光ちゃんと隣町まで行って、ウィンドウショッピングする約束になっています。

 

「菜音ちゃん、お待たせ♪」


 いつも通りのお洒落な格好をしてくる光ちゃん。足が長いのでロングブーツにショートパンツが良く似合います。

 電車に乗っていると男の人たちの目が光ちゃんをチラチラ見ているのが気になります。光ちゃんは美人なので見たくなる気持ちは分かりますが、こうもあからさまに見てくるのは如何なものでしょうか?

 当の光ちゃんは「女の子に見られてるってことだよね?逆に嬉しいかも♪」と満足気に答えました。ここで私はそういえば光ちゃんって男の子だったなと再確認させられました。光ちゃんがあまりにも可愛らしく女の子にしか見えないので、彼が男ということをよく忘れてしまうのです。ということは二人で出かけて買い物をするのはデートということになるのでしょうか?私はいつの間にかデートというものを経験しているのでしょうか?

 そのことについて私がうーんと唸って考え込んでいると、光ちゃんが「どうしたの?」と聞いてきたので、私達の行為がデートか否か聞いてみました、するとこう返ってきます。


「当たり前じゃん、女の子同士だってデートするでしょ?」


 そうかそうか、女の子同士でもデートはデートか。それならば余計なことで考え込んでしまっていましたね。スッキリしました、これで今日は買い物を楽しむことが出来そうです。

 隣町の駅前のショッピングモールで買い物をしていると、女性のランジェリー店が見えてきて、光ちゃんが羨ましそうに店内を覗いていました。これを見て私は、あぁ光ちゃんは下着は男性の物を使用しているんだと理解して、何とも言えない気持ちになります。心は女の子なのに体は男の子というのは不便で仕方が無いのでしょう。我慢を強いられている友達に対して何も出来ないのが歯痒いですが、何も出来なくても傍には居たいと思います。


「うーん、美味しい♪」


 買い物の締めでスイーツ店で行って、二人でスイーツを食べました。光ちゃんが超ド級ジャンボチョコレートパフェという四人がかりで食べる様なパフェを一人で食べ始めたので、私はおろか周囲のお客さんまでこの異様な光景に目をパチクリさせています。これは男も女も最早関係無く、光ちゃんが凄いのです。


「菜音ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとう♪」


 そんな嬉しそうに笑う光ちゃんの顔を見ていると私も嬉しくなってしまって「こちらこそありがとう」と素直に感謝し返してしまいました。

 光ちゃんを見ていると自分の心をさらけ出すことに何の躊躇いも無くなってしまうのですから不思議ですね。

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ブラックコーヒー相談 タヌキング @kibamusi

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