67話 学校
俺の名前は
何に対しても無気力で、やりたいことも特にないし、半強制的につまらない学校に行くことをほとほと嫌気が差している。
ゆえに、とある決意を持って黒野 豆子という女に相談しにやって来た。
「俺は学校をやめたいんだけど、やめても良いかな?」
俺がそう言うと、黒野の表情に何の変化も無かった。興味が無いのか、それともこの手の相談なんか飽きる程に聞いているのだろうか?
「まぁ、私の結論から言うと、自分でやめたきゃやめれば良い。自分の人生だもんな自分で決めなよ」
元も子もないことを言うものだ。これを相談と言うのだろうか?しかし、それが真実でもあるから反論の一つも出てこない。
加えて黒野はこんなことを言った。
「でもさ、別にやりたいことが無いのなら続けるのも一つの手だぜ。高校は出てて損はないからな。高校中退ってのは世間的に評価が悪いしな」
これには反論できる。あぁ、反論してやるともさ。
「じゃあ、世間体の為に高校に行くのかよ?そんなもんの為に学校に行くのはごめんだね」
「まぁ、私だって世間体なんて気にしないんだが、自分がどう思うが、高校卒業した奴と、高校中退した奴とじゃ、ほとんどの奴らが見る目が明らかに違うのも事実じゃないか?分け隔てなく見てくれる奴なんか一握りだと思うぜ」
何だか悔しいが、それもその通りだと思った。小学生の頃なんか世間のことなんて分からなかったが、中学、高校と進むにつれて、世間というものが如何に冷たいものか分かる様になって来た。両親の社会に対する愚痴も、最近では世知辛く聞こえる。
「言い方は悪いかもしれないが、死ぬほどつらいことが無いなら、惰性で続けることも大切だと思う。私だって惰性で高校に通ってるが、ちょいちょい楽しいことはあるし、仮に高校中退して、また通いたくなっても、復学するのは面倒だからな。ハードルが高いことはしたくないのが人間だ」
「惰性かぁ……あんまり良い言葉じゃ無いな」
惰性なんて言葉に夢も希望も無い様に思える。なんか無意味で空虚な感じで如何にもマイナスなイメージしかない。
「確かにそうだよな。でも私は嫌いじゃない。流れに身を任せて起こった出来事を受け止める。そう考えると結構素敵に思えないか?」
「……物は言いようだな。でもなんか少し気持ちが楽になった。ありがとう、とりあえず退学するのは様子見するよ。別にやりたいことも無いし、死ぬほど辛いってわけじゃない。それに仲の良い友達も居るしな」
腐れ縁で腹の立つこともある悪友達だが、アイツ等と疎遠になる事を考えると悲しいものがある。それなら惰性で学校を続けるのも悪く無いかもしれない。
「そうか、まぁ、お互い気楽に学校生活をエンジョイしようぜ」
「あぁ、また怠くなったら来て良いか?」
「構わんよ。ただし缶コーヒーを忘れずにな」
あぁ、そうかタダじゃないんだった。俺は慌てて黒野に渡す缶コーヒーを買いに行った。精神的に少し楽になったので、缶コーヒー一本ぐらい安い出費である。
ブラック好きとは知らずに、真逆のMAXコーヒーを持って行ってしまったが、黒野は「たまには良いか」とゴクゴクとコーヒーを飲み始めた。
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