34話 減量 後編

米沢 紅子よ。

黒野さんの一番弟子を名乗る男である佐藤は相談に失敗。メチャクチャいい気味♪後日、再び俵田さんは黒野さんの教室にやって来て平謝りした。


「ごめんね佐藤君。でも、やっぱり行きたくなくなっちゃって。」


「い、いやいや、良いんですよ。連絡先ぐらい交換しておけば良かったですね。あはは。」


プププ、笑顔なんて取り繕っちゃって♪今にも泣きそうなのを必死に堪えてるんじゃないの♪佐藤が失敗したということは、もう私が勝つしかないじゃない♪


「黒野さん、次は私が行かせてもらいます。」


「ふぁあ・・・勝手にしたら?」


眠たげな目をしている黒野さん。きっと佐藤が不甲斐なかったせいですね。分かります、私も欠伸が出そうだわ。

ちなみに今日は麻衣ちゃんは家の用事でココには来ていない。よって私一人で俵田さんの相談に対応することになるけれど、こんなのヌルゲーよ♪

机を挟んで俵田さんと向かい合うように座る私。

・・・今、気づいたんだけど、男の人と対面で向かい合って話すなんて、蝶よ花よと育てられてきた私には難易度高くない?こんなの合コンじゃん。


「お前、なんで顔を赤くしてるんだよ。」


「は、はぁあ⁉してねーですよ‼駄目だった人は黙ってて下さい‼」


「ぐぬぬ、なんて可愛く無い後輩なんだ。腹立つ。」


佐藤の奴、気付かないで良いことに気付きやがって、こういう男って女に嫌われるのよね。やれやれ。

私は両手で両頬をパァンと叩いて気合を入れた後、俵田さんに、すぐに効果の出るダイエットの提案をすることにした。


「断食です。断食しかありません。」


「だ、断食ぃ‼」


露骨に嫌そうな顔をする俵田さん。まぁ、ここまでは想定内。あとはどう説得するかですよね。


「大丈夫、サプリメントで栄養を取れば、ご飯なんて食べなくても生きて行けます。お腹が空いても気合と根性で乗り越えて行けます。」


「えぇ、気合と根性にも限界が・・・。」


「まず諦めずにやってみましょうよ‼大丈夫、俵田さんなら出来ます‼」


「えぇ・・・。」


「返事はハイでしょうが‼」


「は、はい。」


多少強引ではあったけれど、俵田さんに断食の約束をさせた私。

これで勝ち確だわ♪



~三日後~


どうも黒野だよ。三日経って俵田が再び私の教室を訪れると、何も変わっていない体型で現れ、逆に三キロ太ったとのこと。


「た、俵田さん・・・断食しなかったんですか?」


「いやぁ、あの日の晩飯は我慢したんだけど、反動で朝食べちゃって、それからは普通に食べてたね。ごめんね。」


「そ、そんなぁ。」


ガックシと肩を落とす米沢、そしてその米沢の肩に手を置いて支える麻衣ちゃん。なんと献身的な絵面だろうか。


「ぷぷぷっ♪結局お前も駄目じゃん♪ダメダメじゃん♪」


ここぞとばかりに佐藤が馬鹿にした笑いをしたので、米沢はムキ―ッと顔を真っ赤にして怒った。


「うるせー‼この眼鏡陰キャ先輩‼」


「な、なんだと‼先輩って言っておけば免罪符になると思うなよ‼」


さてバカ二人は放っておいて、今度は元祖の私が相談に乗ってみるか。

いつもの様に机を挟んで相談者と席に座り、いつもの様に相談に乗ることにした。


「あの~、やっぱり僕みたいな根性無しは痩せれませんかね?」


あの二人のせいですっかり自信を失くしてしまった俵田はシュンとしてしまっている。まぁ、確かにダイエットに根気は必要だろうけど、朝ランニングとか断食とかは極端だわな。

ここで一つ私がやっている健康法を伝授しよう。


「俵田、朝バナナダイエットしてみないか?朝好きなだけバナナを食べるだけだ。」


「バナナを食べる?ただそれだけ?」


「バナナは食物繊維が豊富で便通が良くなるし、エネルギーも豊富で腹持ちも良い、バナナダイエットで痩せたって人も多いんだぞ。物は試しにやってみな。」


「うん、食べることなら任せてよ。やってみる。」


これまでより、やる気のある顔を見せる俵田。まぁ朝バナナを食べるだけだしな。

さてどうなるかな?



~一週間後~


「俵田、体重五キロ瘦せたってさ。バナナダイエットがあってたみたいだな。」


俵田からのラインの報告を佐藤と米沢に伝えると、二人は驚愕した顔をした後、いきなり同時に土下座をし始めた。


『流石は黒野さんです‼おみそれしました‼一生ついて行きます‼』


二人は声までシンクロさせ、私を崇め始めたが本当にやめて欲しい。

てかやめろ。

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