33話 減量 前編
僕の名前は俵田 太(たわらだ ふとし)。高校二年生である。
身長170センチ体重102キロの太った男であり、このままではいけないとダイエットをしようと思うのだが、自分では何をすれば良いのか分からない。
なので噂の相談室を訪れた。
“ガラガラ”
「いらっしゃいませー♪」
いらっしゃいませ?はて、ここは学校だったよな?男女の高校生二人程が笑顔で出迎えて来た。正直何と返して良いのか分からないところである。
「バカ、なにがいらっしゃいませだ。二人共、次やったら出禁にするからな。」
椅子に座っているモジャモジャ頭の女がそう言うと、いらっしゃいませの男女はシュンとなってしまった。
「ごめんね。騒がしいなら帰らせるけど。」
「いや別に、僕の相談はそれ程恥ずかしいものでも無いし。」
ただ単にダイエットの相談だ。男の僕が特別に恥ずかしがる必要も無い。
「なら先行は僕ですね。」
ふふんと鼻息荒く、いらっしゃいませの男の方が前に出てきた。
「なんでそうなるんですか⁉」
いらっしゃいませの女が食い下がる。どういうことだろう?話が見えないな。
「僕が年上なんだから僕に先行を譲るべきだよ。君は黙って指くわえて見てればいい。」
「な、なんですって⁉」
男と女の喧嘩を見せられて戸惑う僕だったが、女の子のツレと思われる別の女が宥めて事なきを得た。
どうやら僕は、この男に相談を打ち明けないといけないらしく、机を挟んで男と対面に座らせられた。
「どうも僕は佐藤って言います。宜しく。」
「あぁ、僕は俵田 太って言います。」
佐藤君は無駄に良い顔を作って、右手を差し出して来た。仕方が無いので僕も右手を差し出すと、ガシッと暑苦しい握手をしてきた。もうなんだか帰りたい。
「それで相談というのは?恋の悩みですか?女は魔性ですからね。」
「ち、違うよ。」
勝手に悩みを変えられては困る。何だかとても話し辛い。
「バカ佐藤先走るな。教室から叩き出すぞ。」
「そうだ♪そうだ♪」
モジャモジャ女と言い争った女からそう言われて、顔を赤くする佐藤君。
もしかすると佐藤君は相談を受けるのは初めてなのかもしれない。
玄人の人に相談を頼みたいんだけど、もう流れ的にそれは無理の様だ。
まぁ、物は試し、とりあえず相談してみるか。
「僕ダイエットしたいんだけど、何か簡単な方法あるかな?」
「ダ、ダイエットですね‼良いですねダイエット‼健康的です‼」
「は、はぁ。」
テンパり過ぎじゃないだろうか?相談者の僕より佐藤君の方が緊張している。
「ダ、ダイエットには走るのが一番です‼」
「えっ、走るの?」
走るのは一番苦手なんだけど、やはり痩せるともなると走らなければダメかな?
「早速、明日の早朝の五時からランニングしましょう。」
「朝の五時から?ランニング?ちょっとそれは・・・」
「だ、大丈夫‼僕を信じて‼」
震える声でそう言われても、もう信じる信じないの問題じゃ無いんだけどな。
あぁ、走るの嫌だな。
どうも佐藤です。
朝4時半に俵田君と待ち合わせた公園で、彼が来るのを待ってます。
まだ辺りは薄暗く、ホーホーと鳥の鳴く声も聞こえますが、ランニングシャツと短パンの出で立ちの僕は、準備運動をしながら彼を待ちました。
結果、彼は朝の10時になっても来なかったので、僕はその時初めて約束は破られたのだと思い、ちょっと泣きそうになったので、とりあえず顔を洗いました。
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