25話 花畑

どうも熊です。お花畑に寝ている人が居たので近づいてみると、それは我が恩人である黒野さんでした。


「黒野さん‼黒野さんですよね⁉私です‼あの時の熊です‼」


興奮した私は、寝ている黒野さんの肩を掴んでユサユサと揺らしました。

すると黒野さんはすぐに目を覚まし、私を見るなり


「ギャアァァアアアアアアアア‼」


と大声を出して叫んだのです。一体どうしたというのでしょう?


「黒野さんどうしました?」


私がそう問いかけると、段々と冷静さを取り戻した黒野さんがこう答えました。


「・・・い、いやいや、いきなり起きて早々に鼻息荒い熊が居たらビビるって。」


そういうものなのでしょうか?クマの私には分かりかねます。


「お前、あの時の夢の熊か?」


「はい、あの時の夢の熊です。その節はお世話になりました。黒野さんのことをムシャムシャ食べれたおかげで元気が出て冬を越すことが出来ました。本当に感謝してもしきれません。」


「えっ、私本当に食べられた設定なの?じゃあここに居る私は一体?」


「あまり深く考えない方が良いですよ。どうせ夢なんですし。」


「やれやれ、夢の住人からそう言われるとはな。変な気分だ。」


ここで黒野さんに会ったのも何かの縁。また相談に乗ってもらいましょうかね。


「黒野さん、私の相談をまた聞いてくれませんか?」


「なんだよ?またお腹が空いたのか?じゃあほら食えよ。」


両手を広げて何処からでも食べて良いというアピールをしてくる黒野さん。もう食べられることに何の抵抗も無いようです。


「違うんですよ黒野さん。春なのでお腹いっぱいなので、黒野さんをわざわざ食べる必要は無いんです。」


「そうなのか?私なりの覚悟を決めていたのに、肩透かしを食らった気分だ。じゃあ相談って何だよ?」


「はい、相談というのは恋の悩みでして。ちょっと照れ臭いんですが。私恋をしまして。」


あぁ、顔が赤くなりますね。毛もくじゃらなので伝わらないでしょうが。


「お前まで恋の相談して来るとはな。それで?」


「はい、その恋をした相手が問題なのです。実は相手は兎さんでして、いわゆる異種族の相手に恋をしてしまったのです。」


「ふむふむ、なるほどな。」


「みんなでバスケをしている時、さり気にスポーツドリンクを私に手渡してくれた気遣いの出来る彼女に恋に落ちたのです。ですが熊と兎が付き合うなんて聞いたことありませんし、やはり許されない恋なのでしょうか?」


「まてまて、バスケとかするのお前等?」


「はい、バスケットコートもありますし、大体毎日そこでストリートバスケしてますよ。」


「・・・まぁ、夢だし何でもありか。」


「はい、何せ夢ですから。」


「まぁバスケの話は置いていて、相談は兎さんと付き合って良いのかってことだったな?」


「はい、そのことを考えると夜も眠れなくて。」


少し黒野さんは腕組みして考え、そして返って来た回答がこれでした。


「いいんじゃね?好きなら告白すれば。」


案外軽い感じに言われたので肩透かしを食らいましたが、相手は黒野さん、きっと素晴らしい考えがあるのでしょう。


「好きになったんだから仕方ないだろ?それに相手とは意思疎通の出来るんだから、ちゃんと想いを伝えた方が良いと思うぞ。じゃないと一生後悔することになるかもしれない。」


意思疎通出来るのだから、ちゃんと伝えた方が良いか。何だかその通りの様な気がしました。


「それに深く考えるなよ。だってここは夢の世界なんだろ?夢の世界ぐらい何のしがらみも無く暮らしとけよ。」


「ふふっ、確かにその通りですね。」


やはり黒野さんに相談して良かった。夢の世界の創造主は半端ないですね。


「それで相談も終わった事だし、そろそろ夢から覚めたいんだが・・・もうバクッと食べちゃってくれ。」


「えっ、良いんですか?」


「おう、だってそっちの方が手っ取り早いし。頭からバリバリと食べちゃって。」


「黒野さんがそうおっしゃるなら、いただきます。」


「おう、召し上がれ。」


“バクッ”


今日も黒野さんはとっても美味しかったです。ゲップ。


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