第126話 類は友を呼ぶ
「どうします。手分けして探索していきますか」
「いや、戦力を分散するのは良くない。万が一の時に対処出来ない」
「それぞれの階層は広いでしょ。調べるのも大変ですよ」
「探索用の魔道具を使う」
「探索用の魔道具ですか」
オルビスの前に魔法陣が光る。そこから5センチほどの銀色の球体が次々に現れる。
多くの球体が空中に浮かび始めた。
「数は50個ぐらいでいいか」
「オルビスさん。この球体は」
「探索用の魔道具だ」
「この球体がですか」
すると球体に赤い光を放つ目玉が浮かび上がる。
「この球体は、カメラと魔素や熱量を測るセンサー含む各種センサーを組み込んである。さらに認識阻害の魔法陣もつけてあるから発見されにくい。大きさも5センチ程度だから広い場所はもちろん、人の入れない狭い空間を調べることもできる優れものさ。異空間倉庫出入りも自由にできるから、調べ終わったらその場で異空間に入れるから戻す手間もない」
「戦闘力はどの程度なんですか」
「これは調査専用だから戦闘力は無いよ。空中での戦闘用は別にある」
「これが発売されたら国の調査機関達から奪い合いですね」
「販売はしないよ。俺が使うためだけの魔道具だよ」
「え〜、売らないんですか」
「こんなもの売ったら大騒動確実だ。売らないよ。危険過ぎてダメだ」
「能力がバレたら調査途中で盗まれたり奪われたりする可能性ありますよ」
「対策はしてある。この操作パネルと連動しているが、繋がりが切れたり、分解されるようなら魔法陣が消滅するように出来ている。大事なのは魔法陣だけで、素材そのものは何処でも手に入るごく普通の素材ばかりで出来ているから、分解しても分からんよ。そもそも組み込んである魔法陣が消滅する時に、灼熱の溶岩を超える超高熱を発するから、相手もタダでは済まないけどね。敵を巻き込んで地面もろとも熱で溶かし燃やし尽くすよ。後は溶けて溶岩と化した大地が残るだけさ。遠隔操作でそんなこともできる」
「いやいや、その段階で完全な自爆兵器でしょ。その何処が調査専用の魔道具ですか」
「道具の分類なんて使用者しだいだよ。俺が調査専用と言ってるから調査専用魔道具で決定」
オルビスはレンの指摘を気にすることもなく、目の前の空間に現れたパネルの操作を始める。
すると一斉に空中に浮かんでいた50個の目玉が四方八方に飛んで行った。
「なんて名前なんですか」
「名前か〜、考えてなかったわ。売るつもりも無いし人に見せたことがなかったから名前なんて考えてなかった。せいぜい目玉君と呼ぶ程度だぞ」
「せっかくですから、名前ぐらいはつけておきましょうよ」
「う〜ん、名付けは自信ないな。めんどくさいから目玉君で良いじゃん」
「なら、サードアイはどうです」
「サードアイ、第三の目か」
「魔法陣を発動させる時にサードアイ発動と言ってから出すとカッコいいですよ」
「ハハハハ・・・なるほど、良いなそれ。よし、それ採用」
レンとオルビスが喋っている間にあっという間に探索が完了。
次の階層へと向かう。
オルビスの調査魔道具サードアイの働きで、あっという間に調査が進み、一行は10階層まで降りてきたが特段以上はなかった。
「呪いビトが地上と1階層にいたから、浅い階層に異常があるかと思っていたが何も無いな。いつも通りの迷宮だぞ」
「封印は50階層ですからもっと下の階層でしょう」
一行は11階層に降り立った。
オルビスの前にあるモニターに巨体が映し出される。
サードアイに映る巨体。
全身黒く5m近い巨体と分厚い胸板。
太く力強い腕と足。
頭に2本の角。
目は殺気に満ちている。
「いきなりブラックオーガかよ。30階層よりも下にいる奴だぞ。なんでそんな奴が11階層にいるのさ」
「ブラックオーガですか」
「オーガの変異種だ。Aランク下位に匹敵する魔物だ。闇魔法を使う厄介なやつだ」
「やはり奥では異変が起きている可能性がありますね」
「こっちに気がついているな。まっすぐこっちに向かってきやがる。あの血走った目は俺たちを殺る気満々だな」
「どうします」
「さっさと片付けて早く進むとするか」
「さっさと片付けてと言いますけど、厄介な相手なんでしょ」
「俺からしたら簡単な相手なんだが、普通に戦うとタフでしつこい奴なんだな。だから様子見でちまちまやらずに、最初から高威力で叩き潰せば良いだけだ」
「オルビスさんが高威力の魔法でも使うのですか」
「何言ってんの、空中に目玉君・・・いや、サードアイがいるじゃないか」
「え、あれは調査用じゃ」
「ブラックオーガの耐久力調査だよ」
「用途がおかしく無いですか」
「問題無い」
「貴重な魔道具で数が少ないでしょ」
「大事なのは魔法陣で、素材そのものは何処でも手に入るものだと言っただろう。お財布にとても優しい仕様だ。異空間に500個あるぞ。異空間屋敷のゴーレムに任せれば、いつでも追加でじゃんじゃん作ってくれるぞ」
「錬金術と魔道具の常識が・・」
「スキルで豊穣の恵みを撒き散らして、存在しない植物を簡単に作り出すやつに常識を問われても、説得力がないな。日本で言ったら遺伝子工学で数年もしくは数十年かかる工程を一瞬でやってしまうことだぞ。レンも俺と同類だ」
「え〜さすがにそこまでは」
「精霊達は俺の意見に同意のようだぞ」
レンは思わず大精霊達とフェニックスのラーを見る。
「「「同類だな」」」
「え〜」
「さっさと片付けるぞ」
パネルを操作してサードアイを一個、ブラックオーガにぶつけると巨大な火柱が上がり、熱風が吹く荒れた。
そしてブラックオーガのいた付近は大地が溶岩と化していた。
その溶岩の中にブラックオーガの魔石が残されていた。
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