第124話 いざ魔の森へ

レンとオルビスは,オルビスの異空間屋敷から東の魔の森に通じるドアの前にいた。

「ドアを出たらいきなり魔物が襲ってくることはないのですか」

「昔,東の魔の森にドアを作ったばかりの頃に,そんなことがあったから,ドアの周囲には魔物避けの結界を作ってある」

「魔物避けの結界ですか」

「俺の作る最高レベルだ。まず,その結界を敗れる奴はいないだろう。ドラゴンでも無理だ」

「それなら安心ですね」

「しかし,大精霊が2体もついてくるのか」

オルビスは後ろをチラッと見る。

そこには,水の大精霊ウィンと土の大精霊ノームがいた。

「迷宮なんて何年振りだろうね」

「久しぶりの迷宮。燃えるわい」

白いドレスを着て、長く青い髪、青い素肌、深く青い色の瞳をした水の大精霊。

長い口髭を蓄え体つきは筋肉質のマッチョである土の大精霊。

「僕を忘れないでください」

フェニックスのラーが本来の姿で自らの存在をアピールしている。

「さらに神獣・・いや伝説の神鳥までもいるのか・・」

「どうしてもついて来たいと言いまして」

「レンの眷属扱いだから仕方ないだろう」

フェニックスのラーは嬉しそうに異空間屋敷の周囲を飛び回っている。

「そろそろ行きましょう」

「よし,行くぞ」

オルビスは魔の森に通じるドアを開け,魔の森へと入っていく。

レン・ウィン・ノーム・ラーたちは,オルビスに続いてドアをくぐり魔の森へと向かった。


ドアを出るとドアの周囲100mほどは木々は無く,芝を植えたような空間になっている。

「この周囲は木が無いのですか」

「ドアを設置する時に邪魔だから,綺麗に整地しておいた。木を切っただけだとつまらんから芝を植えてある。念のため,上空からは森の木々で覆われているように見えるよう,隠蔽魔法がかかっている。安全だからここでBBQができるぞ」

「良いですね。この再封印が終わったらやりましょう」

レンが周囲を見渡すと高さ1mほどの円柱の岩の上に球体の水晶の様なものが置かれているのが見えた。

「あの水晶は何です」

「ああ,あれね。あれは魔物を寄せ付けない結界を張り,この空間を維持している装置と言って良いかな。念のため,みんなあの水晶に触れて少し魔力を流してくれ,そうすれば登録される。登録しておけば,結界から出て戻って来たときに結界に弾かれることも無い」

みんな順番に水晶に触れ魔力を流して登録していく。

フェニックスのラーは水晶の上に止まり,足から魔力を流している。

「それで大丈夫だ。全員無事に登録された。今この周辺には魔物はいないようだ。このまま向かうぞ」

オルビスはそれだけ言うと魔の森に向かい歩き始めた。

レンたちもその後に続いて魔の森に向かう。

結界を一歩出たところから濃密な魔素が漂っている。

「これほどの魔素とは,さすが魔の森と言われるだけありますね」

「迷宮死者の塔から漏れ出てくる魔素がこの森に充満して魔の森を作っている」

「迷宮から魔素が漏れ出てくるのですか」

「ああ,その漏れ出てくる魔素のおかげで森の中に貴重な各種薬草ができる」

「スタンピートは起きないのですか」

「年に数回程度,冒険者ギルドから高ランク冒険者たちが派遣されて来て魔物を間引いていく程度だ。あとは俺が戦闘用ゴーレムの試運転を兼ねてゴーレムを送り込み魔物を間引いている」

「戦闘用ゴーレムですか」

「冒険者に見られると困るから,この広大な魔の森の深層部に冒険者が一人もいない時に限られるけどな」

「どんなゴーレムなんですか」

「迷宮に入ったら見せてやるよ」

「それは楽しみですね。しかし,この広大な魔の森の中に冒険者がいるかいないかをよく分かりますね」

「この魔の森は,錬金術に必要な薬草・鉱物・魔物の宝庫だ。ここを荒らされないためにはある程度管理する必要がある。だからこの魔の森の中には,錬金術で作ったいろんな形の探知機や隠蔽装置を撒いてある。冒険者や魔物がどこにどの程度いるかは丸わかりだ。この魔の森で迷うことはないな。さらに貴重で絶滅危惧の恐れのある薬草は隠蔽で守っている。放っておくと冒険者たちが根こそぎ持っていってしまい絶滅してしまうからね」

「そこまでいくとほぼ庭と同じですよ」

「確かに俺の庭みたいなものだな。だからこそ,俺の庭に封印が解けそうなヤバいものがあると知れば,放置できんわけだ」

「それなら今この魔の森に冒険者はいるかどうかわかると言うことですよね」

「冒険者は誰もいないな。魔の森に入っていた冒険者は,数日前に魔の森の外周部を抜けた様だから誰もいない」

「これから向かう迷宮までの間にやばそうな魔物はどうです」

「やばそうなやつはいないが,珍しくアンデットと呪いビトが多くいる」

「アンデットと呪い人か」

「レン。呪いビトといえば,以前精霊の森に襲撃して来た奴だ」

水の大精霊ウィンが思い出したように呟く。

「精霊の森に呪いビト?」

オルビスが疑問を口にする。

「イグ教徒たちが精霊の森を汚染しようとして乗り込んできたんですよ。返り討ちにしましたけど」

「今この魔の森には俺たち意外に人はいない。ドワーフもエルフも他の種族もいない。あ〜,面倒なことになりそうだ。もしかしたら少し遅かったかも知れんな」

オルビスは,嫌そうな顔をしながら前に進むのであった。

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