第118話 流行病

帝都学園の期末試験は無事に終わりレンは首位を維持。

貴族家当主として、政務を優先して良いという特例を維持するためのラインを、楽々維持することができた。

帝都の屋敷でくつろいでいる所に側近となるロー・ウェルウッドがやって来た。

黒髪の短髪で剣術が得意としていて、財務を司る父親と違いどちらかというと武闘派よりだ。

そのロー・ウェルウッドが深刻な表情をしている。


「レン様。少しよろしいでしょうか」

「ローどうしたの」

「実はスペリオル領において謎の病が流行り始めております」

「謎の病?」

「はい、最初は軽い熱が出ている程度なのですが、1週間ほどすると全身が重く感じるようになり、次に赤い斑点が現れ始め寝込むようになります」

「赤い斑点が出て寝込んでしまうのかい」

「はい、寝込むようになると回復することが難しく、高い確率で死にいたる状況になっております」

「原因はわからないのかい」

「薬師や医師が調べていますが原因がわからないそうです。教会の司祭たちも回復魔法を使ってていますが効果が無いそうです」

「薬師や医師も原因がわからず回復魔法も効果が無いのか。毒物の可能性はどうなの」

「試しに解毒魔法や解毒ポーション、回復ポーションを使ってみたそうなのですが、効果はなかったそうです」

「う〜ん・・原因が分からないのはまずいね。どの程度まで広がっているのかい」

「スペリオル領内の1つの街と3つの村で病が広がっております。この街と村では、人の出入りを制限して原因を調べておりますが、いまだに原因を特定できていません」

「なら僕が直接出向いてみたほうがいいな」

「レン様、それはおやめ下さい。レン様に病が感染することになれば一大事でございます」

「大丈夫だよ。僕は他の人と比較してあらゆる状態異常に対して圧倒的に高い耐性を持っているから、もし僕が感染するくらいならその病を防ぐ手立てはないよ」


レンの持つレアスキルである全状態異常耐性はLv6になっている。

強力な感染症にも強い耐性を持っていた。


「ですが・・」

「大丈夫だよ。これから行こうか」

「えっ、これからですか」

「聞いた状況から判断して一刻を争う事態になる可能性がある。できるだけ急いだほうがいいように思う。準備してくれ」

「承知いたしました」


ーーーーー


レンの乗った馬車は、スペリオル領で謎の病が流行している街であるホピルスに向かっている。

そして馬車の中にはなぜか教皇様と聖女様がいる。

二人ともにこやかな笑顔でとても嬉しそうである。

レンがホピルスに向かうと聞きつけて強引に乗り込んできたのである。

当然、教皇と聖女が動けば聖騎士団も動く。

馬車の警護に加わっている聖騎士団は10名であるが、どうやらこの他に先行して事前に安全を確保する聖騎士団、後方からの警護と左右からの攻撃に対処する遊撃的役割の聖騎士団と役割を分けているらしく総勢50名になる。

先行している聖騎士団たちは、現れる魔物を次々に打ち倒し、潜んでいる盗賊は容赦無くことごとく打ち倒し殲滅していく。

圧倒的な力で打ち倒す姿はまさに鎧袖一触であった。


「教皇様、先ほども言いましたが同行されなくとも良いのではありませんか」

「お気になさらずに、問題ありません」

「気にするなと言われても気にしますよ」

「レン様が行かれるのなら私も行かねばなりません」

「ハァ〜・聖女様、無理に同行されずとも良いのですよ。教皇様にも言ってください」

「レン様。お気なされる必要はございません。病に苦しむ人々がいれば助けるのは教会の役割でございます。まさに今回のレン様との同行は、慈母神アーテル様の思し召しでございましょう」

「教皇様と聖女様が来られるほどのことはありませんから」

「「お気になさらずに」」


馬車の中では、同じやり取りをすでに何度も繰り返している。

レンは遠回しに来るな帰ってくれと言っているのだが、教皇も聖女も帰るつもりはさらさら無いようであった。

馬車が急に止まり外からロー・ウェルウッドの声がする。


「レン様」

「馬車が止まったけど何が起きたの」

「馬車左方面より多数の魔物が接近。護衛の騎士団と聖騎士団の皆様が迎え撃ちます。万が一がございます。お気をつけください」

「僕が戦ったほうが早いかもしれないよ」

「護衛にお任せください」

「無理はしないようにしてく。手伝うから」

「承知いたしました」


レンは大精霊ウィンを呼び出す。

青い光と共に水の大精霊ウィンが現れた。


「「おおお〜、大精霊様!!!」」


水の大精霊ウィンの姿に教皇と聖女は大喜びである。

ウィンはそんな教皇と聖女にかまうことなくレンを見ている。


「急に僕を呼び出してどうしたんだい」

「スペリオル領に向かっているんだけど、再三馬車に攻撃が加えられているんだ。護衛の騎士団が全て打ち払っているんだけど、今度はかなり大きな魔物の群れらしい。教皇様と聖女様もいるから、危ないようなら手伝って欲しいと思ってね」


水の大精霊ウィンは、馬車の中にいる教皇と聖女を見る。


「武闘派教皇に武闘派聖女か・・この二人ならそもそも護衛なんていらないよ。見た目に騙されてうっかり襲った連中が可哀想に思うけど」

「武闘派教皇はわかるけど、武闘派聖女とは?」


レンの疑問に聖女が口を挟む。


「教皇様に少しだけ護身術を習っただけでございます。武闘派などとは違います」

「護身術ね〜。まあ、以前みた光景からは、とてもそんなものには思えないけど、まあいいか」

「以前みた光景?」

「レン様。今はそれどころではありません。魔物に備えましょう」


聖女はレンの疑問の深掘りをさせないかのように声をかけ、戦いに備えるのであった。

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