スキル【木】と異世界転生

第117話 錬金術はロマンだ

オルビスとの話が終わり帰ろうとした時、工房の片隅にいくつもの道具が無造作にひとまとめにされている場所が目に入った。

気になり近づいて見る。

剣、小箱、マント、長い金属棒。

整理整頓もされておらず置かれているものも種類も関係ないように見える。

「ここに置いてあるものは何ですか」

「失敗作！」

「失敗作ですか」

「閃いたらとりあえず作って見ることにしている。だが、思いついたものが必ず良い結果を残すわけでは無いからね。その結果、失敗作が大量に出来上がる」

どれも何が失敗なのか分からない。

見た目はごく普通に使えそうなものばかり。

不思議に思い剣を持って見る。

よくできた剣にしか見えない。

「これのどこが失敗なのですか」

「その剣は・・魔力を流してみてくれ」

レンは言われるままに魔力を流してみた。

すると剣が赤い光を纏った。

「お〜、これはどんな力があるのですか」

「光るだけ」

「光るだけ？」

「昔見た映画を思い出して、触発されて作った」

「あ〜納得です」

「ちなみに振ると音もする」

レンが赤い光を纏った剣を軽く振ると‘’ブ〜ン‘’と音がした。

「お〜本当だ」

「レン様。それだけではございませんよ」

いつの間にか執事姿をした人物がいた。

「あなたは」

「ご挨拶が遅れました。執事のベスタと申します」

「ここには、他にも人がいたのですね」

「いいえ、私はゴーレムでございます」

「えっ・ゴーレム」

レンの目には、どこをどう見ても人間にしか見えなかった。

「はい、主人であるオルビス製作によるゴーレムでございます」

「話せるゴーレムですか」

驚いたレンはオルビスの方を見る。

「俺の錬金術における最高傑作のひとつさ。錬金術の目標の一つである命の創造の一つの答えだな。ちなみにホムンクルスも作れるぞ」

「教会が知ったら激怒しそうですよ」

「鑑定をできないように最高レベルの隠蔽魔法陣を組み込んである。教皇や聖女クラスの天眼持ちじゃなければ分からんよ」

レンの脳裏にメイスを握った教皇が暴れる姿が浮かびゾッとしていた。

「教皇だけは怒らせないようにした方がいいです」

「それは手遅れだ」

「手遅れ？」

「すでに何度か戦っている」

「エ〜！！！なんで戦ってるんですか」

「あの爺さん・・あ・俺の方が年上か、まあいいか。あの爺さん頭が硬い。俺が理と秩序の神レイアの裁定者であること知りながら、俺の錬金術を否定するんだぜ。その上、俺を闇討ちしてきやがった」

「闇討ち・・・」

「決着はつかなかったが、余波で街がひとつ崩壊して廃墟になった」

「何をしてるんですか」

「俺が悪いわけでは無い。戦いを仕掛けてきたのは向こうだ。俺は受けて立っただけだ」

レンは疲れた表情をしていた。

「とりあえず教皇と聖女には会わないようにしてくださいよ」

「大丈夫だ。次は必ずあの爺さんを打ちのめしてやる」

「それがダメなんですよ！！！」

「冗談だよ。冗談」

「頭が痛くなりそうですよ」

「錬金術で作った特製の頭痛薬をやろうか。よく効くぞ」

「大丈夫です。それでこの剣には他に力ああがあると聞きましたけど」

「魔力を流すと魔物が寄ってくる」

「魔物が寄ってくる？」

「魔力を流していると、どうやら魔物を呼び寄せる働きがあるらしく、時間と共にどんどん数を増やして襲いかかってくる。魔物寄せの香と似た効果だ。違うのはその剣を持っている相手目がけて襲いかかってくることだな。経験値を稼ぎたい奴には垂涎の品だな。あ、そうそう、ここは異空間だから剣に魔力を流しても魔物は来ないから安心してくれ」

「レン様。主人がその剣を魔の森の中で使った時は、スタンピートが起きました。その時は周辺の国々では、騎士団が総動員され大変な騒ぎとなりました。理と秩序の神レイア様からもかなり怒られましたね」

「何でそんなところで」

「まさかそんな効果があるなんて思ってなかったからな」

オレガノは悪びれずに平然としている。

残りの品も恐ろしく思えてくる。

「あの装飾を施された小箱は何ですか」

レンは恐る恐る聞く。

「それは主人が遊び半分に作ったオルゴールです」

「オルゴールですか」

少しホッとする。

流石にオルゴールでは魔物は呼べないだろうと思った。

「少し特殊なオルゴールでございます」

「特殊なオルゴールですか・・」

「死を呼ぶオルゴールでございます」

「はっ？死を呼ぶ」

「はい、このオルゴールを聞いていると徐々に生命力を削られやがて死んでしまうのです。しかも聞けば聞くほどオルゴールの音色を聴きたくなるという効果もついています」

「それはもはや呪いのアイテムでしょう。まさか死んだ人がいるのですか」

「流石に世に出す前に判明してお蔵入りとなり、第三者が入り込めないここの異空間屋敷で保管となりました」

レンの背中に冷たい汗が流れてくる。

「あのマントは」

「確か雷魔法を使った高速移動を可能にするマントですね」

「雷魔法での高速移動ですか」

「はい、その代わり使用者が感電して黒焦げになります。主人も黒焦げになり死にかけました」

「あの金属棒は」

「魔力を流すとただ単に重くなります」

「重くなるだけですか」

「重くなるだけです・・ですが・・とてつもなく重くなり使えないのです。おそらく身体強化MAXが使える人なら扱えるかもしれませんが、それ以外の方は重くて使えませんね」

「重くて使えないのですか」

「まず重くて持つこともできないでしょうね」

呆れた視線をオルビスに向ける。

「偉大なる発明には失敗がつきもの。錬金術にはロマンが溢れている」

失敗に懲りない男が強く力説していた。