第110話 新しい時代の波

スペリオル領は,ミスリル鉱山と温泉リゾートの本格稼働により,繁栄を取り戻しつつあった。

さらに,スペリオル公爵にハワードが復帰して,将来は本来の継承者であるレン・ウィンダー侯爵がスペリオル公爵となる事が確定,公式に発表された。

ウィンダー領の発展させた手腕から,スペリオル領の発展も間違いないと噂され,その噂がさらに人々をスペリオル領に引き寄せていた。

温泉リゾートは【リオル】と命名され人々で賑わっている。

レンは満足気に通りを歩いている。

その通りには温泉目当ての人々も多数歩いていた。

メイン通りには商店が立ち並ぶ。

商店街の先には温泉と宿泊ホテルが立ち並ぶ。

宿泊施設の無い単なる温泉と宿泊施設のあるホテルは,全てスペリオル家の管理施設である。

温泉まんじゅうとアイスクリームは,スペリオル家管理施設内でのみ販売されており,どちらも大変な売れ行きとなっていた。

リオルの視察を終え,リオル奥にあるスペリオル家の屋敷に戻って来た。

屋敷の玄関を入ると使用人たちが出迎えてくれる。

同時に妹と弟が走り寄ってくる。


「「お兄様〜」」


ルナがどんなふうに教え込んだのか,二人のレンに対する負の情報は一掃され,今では完全に懐かれていた。


「リリー,カイル。急に走ったら危ないよ」

「大丈夫。お兄様魔法を教えて」

「僕にも教えて」

「魔法の基礎ができてからだよ。まず,先生の教えをよく聞いてから,ある程度使えるようになってからだよ」


二人を神眼で見ると才能はありそうであった。


氏名:リリー・スペリオル

年齢:7歳

種族:ヒューマン

職業:スペリオル公爵家長女

状態:良好

スキル:火魔法

    回復魔法

    魅了(封印)

    生活魔法


リリーに魅了のスキルが隠されていたため,万が一を考えてレンは魅了スキルに封印を施していた。

将来,魅了スキルの持っていれば,人を自由に操れるスキルの強さに飲まれて,無意識のうちに悪用する可能性もあり得るからである。

ただ,火魔法に適正があり祖父ハワードに近いかも知れない。

さらに使い手が少ない回復魔法の適性があるから将来が楽しみではある。

レンは,二人に平穏な人生を送って欲しいと考えていた。


氏名:カイル・スペリオル

年齢:5歳

種族:ヒューマン

職業:スペリオル公爵家次男

状態:良好

スキル:水魔法

    氷魔法

    生活魔法

    槍術

    

カイルは,水魔法と氷魔法に適正がある。

カイルも将来が楽しみになるスキルを持っていた。

努力すればスキルは後天的に増える事があるからまだ増えると見ていた。


「「エ〜,つまんない」」

「今日はカードで遊ぼうか」

「「本当!やった〜,遊ぼ遊ぼ」」


二人は嬉しそうに屋敷の玄関で飛び跳ねている。

レンは,二人が落ち着いたところで手を繋ぎながら奥の部屋へと向かう。

1時間ほど二人とカードで遊ぶと疲れたのか,その場で二人は眠ってしまった。

穏やかで可愛い寝顔である。

屋敷のメイドたちを呼び,二人をそれぞれの部屋に連れて行ってもらう。

二人と入れ替わるようにルナが入ってきた。


「レン。少し良いかしら」

「お婆さま,どうしました」

「冷蔵庫の件ね」


冷蔵庫の普及のためには,レンのスキルに頼らずに製造しなくてはいけない。

レンの周辺のみであるならレン一人で作れるが,一般販売となればレンが常に全てを作る訳にはいかない。

立場的にとてもそんな時間が取れない。

ルナは冷蔵庫の一般販売に向け,いくつかの工房と商会をピックアップ。

その中でも,技術の高い工房で試作させていた。


「お婆さま。試作はうまくいきましたか」

「アレク工房に試作させたら,かなりうまく作ってくれたから問題ないと思うわ。契約魔法を掛けてあるから技術流失も無いから大丈夫。次は流通販売をどこに任せるのかね」

「商業ギルドじゃダメなのですか」

「商業ギルドに偏りすぎているように感じるから,バランスをとって他の信用できる商会に任せてみてもいいと思うのよ」


言われてみれば多くの商材というか,ほぼ全てを商業ギルドに任せている。

特に大人気のワインは,商業ギルドの独占販売状態。

多くの有力商会がウィンダー領のワインを直接扱えないことに不満を持っていると聞いている。

これに冷蔵庫を加えたら確かに大変なことになる。


「なるほど,言われてみれば確かに商業ギルドに偏りすぎてますね。なら,どこに任せるのです」

「モーリー商会ならいいと思うのよ」

「モーリー商会ですか,とても評判のいい商会と聞いてますね」

「良心的な商売をする商会と言われているし,私が調べてみても正直な商売を心がけているように見えるから良いと思うわ」

「冷蔵庫販売を任せるは,お婆さまが推薦するモーリー商会で良いと思います」

「分かりました。製造はアレク工房。販売はモーリー商会に任せることにします」

「僕もそれで良いです」

冷蔵庫の製造委託先と販売委託先が決まり,帝国中に冷蔵庫の販売が始まることになり,冷蔵庫の販売により,帝国の中で新たな食文化発展や流通の革命が始まろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る