第107話 異世界温泉リゾート

レンと土の大精霊ノームにより温泉が作り出された土地では、急ピッチで建物が作られていく。

温泉をメインにしたリゾートホテルのようなものを目指して作っていく。

温泉リゾートは、レンの祖母であるルナが陣頭指揮を取って進めている。

次々に職人や家臣達に指示を下して進めていた。

温泉リゾートの敷地の一番奥の離れた場所に、レンとその家族専用の建物を作り、次に皇族や公爵・侯爵などの高位貴族用、伯爵・子爵・男爵向け用、庶民の富裕層向けなどのホテルを作っていく。当然全て大浴場の温泉完備である。

メインストリートーは石畳が敷き詰められ、すでに出来上がっていた。

その両側には、商人達が店を構え始めている。

帝国初の温泉リゾートであり、ウィンダー領を大発展させたウィンダー侯爵が開発しているということもあり、多くの商人がここは商機だと判断して出店申請をしている。

公爵家管理地となっているため勝手に店を出す訳にはいかないからであった。


レンとその家族専用と高位貴族用の建物はすでに出来上がっていた。

広大な敷地の奥にひっそりと作られ、落ち着いた雰囲気を漂わせる作りでありながら、しっかりと警護も考え抜かれた作りである。


働く使用人はレンの祖母であるルナが急ピッチで教育している。

レンは、ついでに水の大精霊ウィンから、水の癒しの効果を高める魔法陣を教えてもらい、温泉の湧き出し口と浴槽に誰にもわからぬように次々に設置していた。


「ウィン。こんな感じでどうかな」

「バッチリだよ。しっかり効果は出ている」

「これでますます他では真似できない温泉の出来上がりだ」

「そもそも帝国内に温泉が無いのだから、ここまでやらなくてもいいんじゃないの」

「ここまでやってこそ完璧なのさ」

「確かに温泉の効能と癒しの魔法陣のダブル効果で、一度ここの温泉に入れば病みつきになっちゃうね。お肌はピチピチ、心は晴れやかになる。一度入ると何度も来る羽目になっちゃうね。間違いなく」

「癖になる温泉の出来上がりさ」

「まあ、僕は面白いからいいけどね」

「確かにリピーターを作らねば発展は無いからね。運営はお婆さまが主体になって行うから問題ないと思うよ。きっと独自の交友関係を駆使して多くの人を呼び込んで、一度温泉に入ればその効能からリピーターの出来上がりだよ」


レンは、高位貴族用のホテルのロビーに設置する慈母神アーテル様の神像を作るため、ロビーに向かって移動している。

ロビーに入ると誰もいないのですぐに作成に取り掛かる。

数多くの神像を作ってきたため、スキルを発動させると半自動のようにあっという間に出来上がっていく。

高さ3mほどの神像があっという間に出来上がる。

使徒であるレンの制作のため、自動的に神気が込められていき、完成と同時にさらに癒しの神気が溢れていく。

ロビーにいるだけで心が癒やされていくようだ。

レンの背後から声がかかった。


「レン・ウィンダー侯爵」

慌てて振り向くとジェラルド前皇帝陛下であった。

「ジェラルド様」

「レン君の驚いた顔を久しぶりに見れたな」

ジェラルド前皇帝陛下は笑いながら近寄ってきた。

「しかし、レン君のスキルによる神像作成は凄いものだな」

「恐縮です」

「見たことは言いふらしたりしないから心配しなくてもいい」

「ありがとうございます」

「レン君が掘り当てた温泉に入らせてもらったよ。実に素晴らしい」

ジェラルドの肌がツヤツヤしている。

「もう、入られたのですか」

「ハワードのやつがしきりに自慢してくるから、その自慢する温泉を試してみるしかないだろう。そこで急遽お忍びでやってきたと言う訳だ」

「行動が早いですね」

「思い立ったたら即行動だよ。すでに隠居の身だから簡単ではあったが」

「しかし、よく来れましたね。隠居されてもそれなりにお忙しいでしょうに」

「数名の護衛だけ連れて、出かけてくると書き置きを残してきた。問題無い」

「・・書き置き・ですか・・かなりマズいのではありませんか」

「ハハハハ・・大丈夫だ・大丈夫のはずだ」

レンが驚いたような表情をした姿見たジェラルド。

「大丈夫・・心配無用だ」

「いえ、ジェラルド様。後ろを・・」


レンの言葉に恐る恐る振り返るジェラルド。

そこには、ジェラルド様の正室であるシェリル様がいた。

金色の髪、シワのない白い肌。

それなりのお歳ではあるが肌はツヤツヤである。

ジェラルド様は側室は持たれていない。

周辺から側室を持つようにかなり言われたが、断固として拒否されたと聞いている。

歴代皇帝の中で唯一側室や妾を持たなかった皇帝であった。

本人は認めないが愛妻家のようである。


「えっ・どうしてここに」

「相変わらずこっそりと出かけるために、書き置き一つでいなくなる癖を治していただきたいものです。周りがそのためにどれほど困るか何度言えばわかるのですか」

「いや、何事もこの目で見て判断すべきことも多いと言ったでないか」

「黙っていなくなるは問題ですと言っております」

「話せば反対するに決まっているだろう」

「当然です。ご自分の立場を自覚されてください」

「自覚しているぞ」

「レン君。少しこの人を借りるわよ」

「は・はい」

「お話しあいをしましょうか」

「待て、話せばわかる」

「そのお話しあいをするのですよ。ジェラルド!」

シェリル様はジェラルド様の首根っこを掴むと、引きずるように奥の部屋へと消えていった。

レンは思わず手を合わせ無事を祈るのであった。

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