第83話 新人王戦準決勝

帝龍祭1年生達による団体戦である新人王戦。

レン・ウィンダーによる初戦での強烈なまでの水魔法と氷魔法。

さらに,個人戦においても同様の魔法で一撃で全ての敵を場外に追いやる戦いは,他の全ての生徒達に衝撃を与えていた。

そんな状況にも関わらず次の準決勝相手チームはやる気満々であった。

次の対戦相手は正式名称は,北部辺境伯領にあるガルディス戦士学園。

通称は戦士学園と呼ばれる。

魔法も教えるがどちらかというと武術のウェイトが大きい教育をすると言われ,上級者になると剣や槍で攻撃魔法を切り裂くなどというとんでもない荒技が使えると言われていた。

そして一番の特徴は・・・とても暑苦しい奴らである。


「ハハハハ・・・君がレン・ウィンダー君だね」


目の錯覚か,S級冒険者ランディを少し小さくした奴が目の前にいる。

爽やかさたっぷり,笑顔の筋肉マッチョが目の前にいた。

もしかしたら歯がキラリと光りそうな男だ。

思わずため息をつくレン。


「君は」

「次の対戦相手,北部辺境伯領にあるガルディス戦士学園のチームキャプテンのマシュー・トラウトです」

「トラウト・・というとやはり」

「S級冒険者ランディは私の兄です」

「そうでしたか」

「個人戦予選の時は兄が迷惑を掛け申し訳ありませんでした」

突然,マシューが姿勢を正して頭を下げた。

「頭を上げてください。特に問題もありませんでしたし,事を起こしたのは君の兄であるランディさんですよ」

「それでも身内のしたことです。謝罪だけでもさせてください」

「分かりました。謝罪は受け取りますから頭をあげてください」

「ありがとうございます」

「謝罪は受けましたから,試合は正々堂々と戦いましょう」


両校の生徒は指定された待機場所へと歩いていく。

しばらくすると試合を行う特殊フィールドへと転移させられた。

そこは前回同様に小高い丘で帝都学園の旗が立っている。

丘の周辺は草原と森になっていて,遠くには敵陣営の丘が見えていた。

レンはメンバー全員を見渡し,全員いることを確認。


「レン様。今回はどのように戦いますか」

ローがみんなを代表して聞いてきた。

「今回は攻撃陣に僕が加わり,旗を守る人数を増やす作戦で行こう」

「承知しました」

「ただ,今回の相手は魔法よりも武術を中心とした相手だ。近接戦闘となれば相手が有利だからまず相手を近づけないことが重要だ」

帝都学園の生徒も近接戦闘の訓練で武術関係の訓練を行うが,比重的には魔法の方が大きい。

どうしても近接戦闘を得意とする今回の戦士学園が相手ならば,アウトレンジからの魔法攻撃が多くなる。

「レン様とカレン様。近接戦闘に魔法を組み込んで戦える二人ならかなり有利かもしれませんね」

「でも,油断は禁物だよ。相手だって考えている。近接戦闘に魔法を組み込める人物がいるはずだよ」

「それもそうですね。それも踏まえ慎重に行いましょう」


試合開始の合図が鳴った。

レンは旗だけを覆うように氷壁の魔法を張ってから戦いに向かった。

攻撃は,レンとカレンの2人。

そこにローたち5人が支援。

旗は8人で守る。


レンは探知魔法を使いながら敵陣に向かって走る。

敵も探知魔法を使うはずだろうから,隠密や隠蔽系の魔法やスキルなど何らかの対策がない限りお互いの位置は丸分かり。

スキル木で木刀を作り出す。

見た目は普通の木に見えるが,硬さと耐久力は魔鋼なみにしてある。

探知魔法に接近してくる二つの反応がある。

やがて戦士学園の生徒2人が姿を現す。

相手は木剣,レンは木刀を構え,しばらく睨み合っていたがお互いに一気に間合いを詰めて行く。

レンは相手の攻撃を受け流してかわしながら,素早く一撃づつ打ち込み相手のを倒していく。

その二人は敗北と判定され,フィールド外へと転移させられた。

ほっとした瞬間,危険を感じてその場を飛び退く。

レンのいた場所にファイヤーランスが打ち込まれ爆発が起きて土埃が舞い上がっていた。

視界が奪われた瞬間,背後から殺気を感じ振り向きざまに木刀を振るう。

木刀に重い手応えがあった。

隠蔽が解けてマシューの姿が見えてきた。


「この作戦でも落とせないとは,困りましたね」

マシューは嬉しそうに話す。

マシューの木剣を力一杯振り払い背後に飛び退く。

「作戦ということは最初の二人は囮かな」

「その通りです。囮に気が取られているところを突く予定だったんですが失敗しちゃいましたね。ここからは純粋に力の戦いです。帝都学園期待の星の力見せてもらいますよ」

「やれやれ,いつの間に期待の星にされたのやら」

「その得物は,スキル木とか言う木製品を作り出すスキルで作ったのですか」

「正解。なかなか便利なスキルなんですよ」

「スキルで作った得物なら,それを破壊してもすぐに作り出せる。なかなか厄介なスキルですね」

二人は会話をしながら動き出すタイミングを図っていた。

先に動いたのはマシューであった。

ファイヤーランスを3本放つと同時に間合いを詰めてくる。

レンは素早く前面に氷壁を作りファイヤーランスを防ぐ。

氷壁はファイヤーランスを受けて粉々になるが,砕けた氷壁が作り出す細かな氷の破片が空中に乱舞,光を乱反射して景色が一変。

強烈な光の乱射と氷の粒がそのものが放つ魔力が探知魔法を妨害。

レンの姿が見えない。

マシューは不意に現れたレンに木剣を振るうが木剣は通り抜けてしまい。

「幻影魔法か」

次々に現れるレンに木剣を振るうが全て通り抜けてしまう。

「僕が幻影魔法を参考に作り出した氷魔法さ。空中を漂う氷の破片が放つ光と魔力による幻影だよ」

「オリジナル魔法とは,とんでもないな」

レンの気配を感じると木剣を振るうが通り抜けてしまう。

再び現れたレンに向かって木剣を振るった瞬間,強烈な衝撃がマシューに加えられそのまま敗北判定となり,マシューは場外へと転移した。

マシューを倒したレンがそのままの勢いで旗を奪取。

帝都学園の勝利となった。

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