第79話 初戦

レンは今回のバルビナス戦は,守備に回り指揮を取ることにする。

オフェンス組は,カレンを中心にした5名。

ミッドフィルダー組はローを中心にした5名。

レンの前に今回のメンバーが集まっている。


「対戦相手のバルビナス学園は,理由はよくわからないがメンバーが総入れ替えになっている。事前の訓練やメンバー同士の連携も良くないだろうから,焦らずに戦えば勝てる相手だと思う。焦らず油断せずに行こう。カレンはローと連携をとり敵陣を目指してくれ」


カレンは,長い髪を風に揺らしながら微笑む。


「任しておいて,愛するダーリンのために頑張るよ。フフフ・・敵はこの愛剣のサビにしてくれるわ」


腰の剣を抜いて,微笑みながらウィンクしてくる。

レンはそんなカレンに苦笑するしかなかった。


「ローも頼むよ」

「お任せください。未来の奥方様をお守りいたします」

ローは仰々しく言い礼をする。

「ロー,絶対わざと言ってるよね」

「何のことでしょう」

ローは,微笑みながら立っている。


「みんな,今やるべきことに集中しよう。全員配置ついてくれ」

しばらくすると空中に巨大な数字が現れて,カウントダウンが始まった。

残り・・3・2・1・0

試合開始の声がフィールドに響く。

同時に守備陣の生徒を残して全員が敵陣目指して森に入っていく。

帝都学園の攻撃陣であるカレンを先頭に敵陣めがけて突き進む。

攻撃陣は三つに分かれる。

二名二班とカレン一人とに分かれる。

カレンの移動の速度に他のメンバーがついて来れないからであり,時間をかけるほどに相手側は罠を仕掛けるであろうと考えていた。

ならば,いかに早く敵陣に向かうかが大切であり,敵に守りを固めさせる前に攻め落とすつもりである。

その頃旗を守るレンは,他の四人を周辺に配置。

旗の守りを固める様にする。


「罠の設置・・・やめておくか。モニター画面で見られているから,他の学園に手の内を全て見せる訳にはいかないからな」


最初は,魔法陣による罠を設置していくつもりであり,何種類か使えるように準備して来た。

しかし,初戦から使うと他の学園に情報を与えることになるため,控えることを決めた。

レンは周辺一帯に索敵魔法の網を広げ,天眼を発動させ周辺を警戒する。

その索敵魔法では,味方であるカレンがものすごい速さで敵陣に向かっているのが分かる。

さらにカレンに負けない速さで,こちらに向かってくる二つの反応を索敵魔法で感知していた。

向こうも索敵魔法を使っているのか,たくみに動きこちらのオフェンス陣やミッドフィルダー陣と会わない様に動きながらも,最大速度で移動してきている。


「敵が来るぞ,注意しろ」

レンの声と共にレンの守る本陣を砂嵐が襲う。

「チッ・・中級魔法のサンドストームか」

レンは素早く氷壁の魔法で氷のドームを作り,旗と味方を丸ごと覆い尽くす。

氷のドームの外は視界が効かないほどの砂嵐となっている。

すると氷のドームに何かがぶつかる音がする。

「ストーンフォールか・・視界を奪い多数の岩を落下させてこちらの混乱を狙う。悪くない手段だ」

岩が次々に氷のドームにあたるが岩が砕けるだけで,氷のドームはヒビ一つ入らない。


「攻められるだけではいかんだろう。反撃することにするか」


レンの使う氷壁は他の魔法使いの使う氷壁とは違う。

相手の使う魔法を構成している魔素そのものを凍結させ,凍結させた相手の攻撃魔法を自動的に吸収して氷壁強化をすることができ,氷壁に触れた攻撃魔法を全て無効にできる。

さらに氷壁を通じて周辺一帯の全ての水を操ることができた。

レンのオリジナルの攻防一体の魔法でありながらも,表向きは通常の氷壁魔法に見せかけている。

オリジナル機能をどの程度発揮するのかは,レンの意志で自由に設定でき,今は単純に攻撃を防ぐだけにしていた。

そのため,誰の目にも氷壁魔法にしか見えず,簡単に破壊できそうな氷の壁にしか見えない。

結果として,敵は簡単に破壊できそうだから単純な力押しで攻めることを選択することになる。


「スコール」


レンが呟くと氷のドームの外に徐々に雨が降り出し,次第に強い雨となり砂嵐を打ち消していく。

レンが降らしている強い雨は,徐々に周辺を沼地に変え,敵が近寄る事さえ難しくしていく。

かなり広い範囲を沼地に変えている。

迂闊に近づけば身動きが取れなくなることは確実。

レンは索敵魔法で敵の攻撃部隊の位置を把握。

どうやら攻撃に人数を多く割いているようだ。

8人の反応があるが,周辺が沼地と化しているため近寄れないようだ。


「ならば,敵が次の手を打ってくる前に一気に蹴りを付けるか・・・ツナミ!」


レンが呟いた瞬間,高さ20mほどの巨大な水の壁が索敵魔法で反応があった敵に向かって幾重にも襲いかかっていく。

20mの水の壁を一度は避けても,水の壁は次々に波状攻撃で押し寄せてくる。

一人また一人と押し寄せる水の壁に敵が次々に飲み込まれ,退場となり転移させられていく。

そして,索敵魔法に映る周辺の敵反応が全て無くなったため,ツナミとスコールの魔法を解除する。

しかし,用心のため氷のドームは維持しておく。

やがて,カレンが敵の守りを突破して旗を奪い帝都学園の勝利判定が出て初戦は終了した。

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