第71話 予選開始
帝都学園では帝龍祭に向けて学生達が燃えていた。
いい成績を残せば,帝国騎士団をはじめとした多くの騎士団から声をかけてもらえる。
または魔法師団や各地の貴族からの優遇も期待できる。
そのため,将来の希望を胸に皆必死に己を磨き鍛錬に勤しんでいる。
「出たく無いなど認めん」
帝都学園アリシア学園長の言葉が学園長室に響く。
どうにか回避できないか最後の望みをかけて学園長に話してみたのだ。
「僕が出たら,みんなの活躍の場を奪うでしょ。僕は魔法師団や騎士団に入るつもりはないですよ。あえて言えば逆に雇い入れる側になりますから」
レンは,ウィンダー侯爵となってから自分直属になるウィンダー領の騎士団や魔法師団の整備を徐々に始めていた。
帝龍祭はそんな人材を見つける絶好の場。
出来たら参加せずに全ての試合を見たいと考えていた。
「ホォ〜さすが,レン・ウィンダー侯爵。言うことが違うな。余裕という訳だな」
「余裕などと言うつもりはないですけど」
「レンが出場すれば全ての部門で完全勝利ができる。未だ個人戦・団体戦・新人王戦で全て独占した学園はいない。今年は独占できる可能性があるのだ。学園のみんながすでにレンに期待している。その期待に応えて見せろ」
そこに水の大精霊ウィンが出てきた。
「ハハハハ・・・いいかげん諦めな。レンはそれだけの力を持っているんだから,その力を示すことも責務だ。皆の目標になることもいいんじゃないか」
「やれやれ,簡単に言ってくれるよ」
「使用魔法のレベルはLv7を上限に考えれば問題なかろう。通常はLv5までで十分だ」
「分かったよ」
レンとウィンの会話を聞いていたアリシアが慌てて聞いてくる。
「使用魔法はLv7を上限とは・・もしかしてそれ以上なのか」
「レンの水と氷魔法はLv10だ」
ウィンの言葉にアリシアが驚く。
「ハァ〜!!!そんな・今の世界にLv10の魔法が使える者はいないはずだ」
「いや,目の前にいるだろう。この水の大精霊ウィンが保証するぞ」
「いや,いや,いや・・・」
「ここでレンの放つ魔法,永久氷壁に閉じ込められて自ら体験してみるか。永久氷壁でも多少手加減してやれば100年ほどで解けるだろうから大丈夫だろう」
「・・・・・」
大精霊であるウィンの言葉に何も言い返せないアリシア。
「明日からの校内予選の準備はいいのか」
「ウィン。問題無いよ。時々盗賊団を相手にしているからいつでも戦えるよ」
「レンの屋敷は,まさしく盗賊団ホイホイだな。無防備に見せておきながら凶悪な罠をこれでもかと用意されている。盗賊団が可哀想になってくるよ」
その頃、レンの屋敷では,レンの祖父ハワードと祖母ルナが嬉々として新しい罠を増設していた。
ーーーーー
帝龍祭出場希望者の実技だけの簡易成績が発表された。
上位二十人が本戦参加を認められる。
今日から1週間の間に限り,成績の下位の者は上位の成績者への戦いが認められる。
下位の者が勝てば順位が入れ替わる。
下位の者が二十位に勝ち最終日まで維持できたら本戦出場資格が与えられる。
ただし,厳格なルールがある。
自分の順位から上の二十位以内の者へ挑むこと。
上位へ挑む戦いは1日1回まで、ただし、順位100位以下の者は1日2回まで。
同じ相手に続けて挑むことはできない。
試合は,学園内の競技場だけで行い公開とする。
学園の競技場以外での戦いは禁止。
闇討ちなどの不当行為は厳重処分の対象。
教師、生徒会、冒険者ギルド職員など五名の立ち会いのもとで戦う。
違法薬物・魔道具は使用禁止。
魔道具を隠蔽していたら失格。
レンは暇そうにしていた。
帝龍祭の出場希望者1年生のランキンング1位はレンである。
当然、戦いを多数申し込まれると思っていたのに全くない。
他の二十位以内の者達は忙しく戦っている。
そんな戦いを見ながら暇を持て余していた。
暇な為、水魔法で小さな魚や鳥を作り出し動かしながら遊んでいた。
そんなレンを遠巻きにして他の生徒達は見つめている。
『水魔法であんなことができるのか』
『あんなに細部にこだわった作りができるなんて。不可能だ』
『色をつけたら本物と変わらんぐらいに精巧ですよ』
『動くぞ!水でできた鳥が羽ばたいているぞ』
『魚も動いているぞ。まるで空中を泳いでいるようだ』
『凄まじいまでの魔法制御の力』
『どうすれば、あんなことができるの』
他の生徒達のヒソヒソ話が聞こえないのか、ますます集中力を上げて水の彫刻を作り出していく。
それは、まるで小さな水の精霊達がレンの周りを舞い踊っているかのようであった。
『誰か挑んだらどうだ』
『瞬殺されて終わりだろう』
『力を持て余して日々盗賊狩りをしていると言われている相手だぞ』
『その噂聞いたことがある』
『わざと屋敷の警備を手薄にして盗賊を呼び込んで倒しているらしいぞ』
『それも嬉々として盗賊を切り倒しているらしいよ』
『血まみれの剣を見て嬉しそうにしていると聞いたぞ』
噂のせいなのか誰もレンに近寄らずに遠くから見ているだけであった。
そんなレンに近づく人物がいた。
「レン。暇そうやな」
その言葉に集中力が切れて、水でできた鳥や魚がたちまち消えた。
「カレンさん。いきなりどうしたんです」
「ここはウチと戦おう」
不敵な笑みの浮かべるカレンがレンに戦いを申し込むのであった。
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