第68  スライムスライム

1年Sクラスの生徒達は、悪戦苦闘しながらスライム狩りを続けていた。

ショートソードを使う者。

短剣を使う者。

使う武器は様々ではあるが、なかなかスライムの核を捉えることができずに、同じスライムに何度も何度も攻撃を繰り返している。

その間、レンはやることも無く、暇そうに周辺を警戒していた。

警戒しながらも迷宮は不思議だと考えていた。

魔物を倒してもしばらくして一定時間を経過すれば再生する。

倒せば、倒した者に経験値が与えられ、倒した者の成長を促す。


「レン様。考え事ですか」


リオンがレンに聞いてきた。


「暇すぎて困るんだよね。勝手に奥に行く訳にはいかないし。みんなへの指導もうまくいかないみたいだしね」


力量に差がありすぎて、レンの説明では誰も分からない。

‘’上段に構えてダァ〜と力一杯振り下ろす‘’と言われて、分かる人はいない。

ある意味、祖父のハワード同じである。

抜群の技量と力はあるがその説明を理解することが難解なのだ。

レンが暇を持て余して草むらを見ていたら、かすかに光ものが見えた。

レンは何だろうと思い近づくとその光が動いた。

慌てて近づくとそこには黄金色に輝くスライムがいた。

大きさは5センチほどであろうか、片手に乗るほどの小ささである。

レンは、そっと触れてみた。

スライム特有の柔らかさと水に触れているような感覚がする。

スライムに触れているとスライムから怖いという感情が伝わってくるような気がする。

それと同時にこのスライムが特別な存在じゃないかと思えてきていた。

レンは神眼を発動させて黄金のスライムを見る。


種族:

  ゴールデンスライム

能力・詳細:

  ・慈母神アーテルにより生み出された。

  ・生まれ3日目。

  ・成長するにつれて能力が目覚めていく。

  現在の能力は未知数。


慈母神アーテル様が生み出したスライムと映し出されていた。

自分がここにくることに合わせて用意されたのに違いないと判断して、スキル‘’眷属との絆‘’を発動させる。

その瞬間、スライムとの間に目に見えない繋がりができような感じがした。

クラスメイト達に見つからないように素早くポケットにいれる。

ポケットに入れたまま黄金のスライムに呼びかける。


『僕はレン。君に名前はあるのかい』

『名前?、無いよ』

『僕が名前をつけてもいいかい』

『うん。つけてお願い』

しばらく考えていたが特別なことが思いつかないため、シンプルに名前をつけることにする。

『キンちゃん。君の名前は‘’キンちゃん‘’』

『は〜い!僕は‘’キンちゃん‘’だね。それでいいよ』


スライムのキンちゃんからは嬉しいそうな波動が伝わってくる。

その波動に触れているとこちらも嬉しくなってくる。



迷宮授業の初日は、終わりの時間を迎えて全員が迷宮から無事外に出てきた。

クラスメイト達が戻っていくのに、なぜかレンの周辺にいるメンバーは動こうとしない。


「みんな。教室に戻ろうよ」

「レン。その胸のポケットの中は何」


レンのすぐ横いたシャーロットがレンに尋ねる。

レンの周辺にはシャーロット、ロー、サラ、リオン、バイロン、ルミナスがいた。

「な・・何のことで・・」

「レン様。迷宮の草むらで何か拾ってましたよね」

「リオンさん。な・何のことかな」

「黄金色に光るものを拾っていたように見えましたが」


バレてる。

呆れたようにため息をつくルミナス。


「レン君。迷宮からは魔物は持ち出せないのよ。そもそもアリシア学園長の魔法陣の力で迷宮から魔物は出れない筈なんだけど」


持ち出せてますよ。

思い切り持ち出せてます。

魔法陣が仕事してないのか。

持ち出せないものがごく普通に持ち出せてます。

これは不味い。もしかして、自分が学園長の魔法陣の穴を指摘してしまったのか。


「ハハハ・・魔法陣がありますから迷宮から魔物を持ち出せませんよ。何か間違えでは・・・」


レンの背中にじっとりと汗が流れる。

横にいたシャーロットの手がレンのポケットに伸びた。

その瞬間、ポケットからゴールデンスライムが飛び出しレンの頭の上に乗った。


「「「「「「金色のスライム」」」」」」

「キンちゃんは他の魔物と違うんだよ」

「「「「「「キンちゃん?」」」」」」

「そう。悪い魔物じゃないんだよ」


ルミナスが近寄ってくる。


「皆さん。少し離れてください」


レンとルミナスを残して、他のメンバーは少し距離を取る。

ルミナスは小声で話しかける。


「もしかして、レン様の眷属ですか」

「どうやらそうみたいだ。神眼で調べたら、種族が‘’ゴールデンスライム‘’とあったよ。さらに慈母神アーテル様が生み出したと表示された」

「ハァ〜、何もここでやらなくとも」

「すぐに眷属の絆を結んであるから大丈夫なんだけどね」

「ゴールデンスライムというのが問題です」

「問題というと?」

「とても珍しいため、他の冒険者や魔法使い達に狙われます。一説では各種最上級魔法薬の材料になるとも言われ、成長すると20メートルを超える巨体となり、あらゆる攻撃を跳ね返すとも言われるスライムです」

「マジですか」

「マジです。公になればラーと共に狙われますね」

「ラーはどんな奴が来ても自力で撃退できるけど」

「そのスライムは・・キンちゃんですか・・まだ幼いため狙われる危険が高いと思います。ゴールデンスライムは、ある程度成長するまでは最弱の魔物のまま、他のスライムにも負けてしまうほど弱いのです」

「ハァ〜、当分の間は時空魔法ルームに入れておくか、精霊の森で精霊達に預けておくか」

「それが賢明でしょう」

「他の5人はどうします」

「これから全員で学園長のところに向かい制約の魔法をかけるしかないでしょうね」

「それしかないですね」

レンは諦めて全員で学園長室に向かい、アリシア学園長に事情を説明。

そっと、ワインを送り許しを得るのであった。

そして、他の5人には予約待ちに状態のチョコレートの詰め合わせを送り、同時に秘密を守る制約の魔法を結ぶのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る