第66話 迷宮へ

帝都学園の敷地内に迷宮が存在している。

初心者向きの初級迷宮ではあるが、魔物が湧くことに違いないため、万が一に備えるため国で厳重に管理されている。

この迷宮は、この場所に学園が作られた時から存在しており、帝都学園の生徒の実践訓練の時に利用されていた。

岩山のような形をした迷宮の入り口には、監視のため監視所が置かれ騎士たちが交代で詰めている。

さらに入り口には、アリシア学園長が迷宮から魔物が出ないように魔法陣を設置していた。

そしていま、レンたち1年Sクラス20名は迷宮の入り口にいた。

今日初めてこの迷宮に入ることになる。

1年生に同行するのは、担任のルミナスと上級生で能力も高く、人格的にも問題無いと判断された5年生の中から5名が選ばれて同行することになっていた。

その5人が迷宮入り口にやってきた。


「こんにちは、今回1年生の迷宮体験に同行する5年生のリオン・ミリガンと言います」

黒髪の短髪での爽やかイケメンが挨拶してきた。

残りの4人が順番に挨拶をしていく。


「同じく5年生のバイロン・ストラーグと言いますよろしく」

赤い髪の力自慢を感じさせる少し強面の感じがする。

男性二人が挨拶をしたら残りの女性3人が挨拶をしてきた。


「デニス・コレットです。よろしく」

銀色の長い髪で魔法使いを感じさせる装いをしている。


「コーニー・ハンフリーです。よろしく」

青い髪の色でこちらも魔法使いの装いをしている。


「ジェマ・バジェットです。よろしく。君が話題のウィンダー侯爵様だね」

細身の長剣を腰に差している銀色の長髪を後ろでポニーテールにしていた。

ジェマ・バジェットがレンに向かって声をかけてきた。

「話題かどうかわかりませんけど、ウィンダー侯爵本人です」

「君は話題沸騰中の超有名人。この帝都で顔は知らんでも名前を知らん奴はいないよ。しかも、リオンとバイロンの寄親になるわけだ。よろしく頼むわ!それと話題のチョコレートはウィンダー領の特産品でしょ、特別に分けて欲しいな。なかなか手に入らないんだよね」

「ハハハ・・・!よくご存知で」

リオンとバイロンの親はウィンダー家を寄親とする帝国貴族であり、二人は最上級生でもあるため、学園内でウィンダー家家臣団子弟や寄子となる貴族子弟をまとめ、レンを護衛する司令塔役を任されている存在。

さらに2人はかなり優秀らしく、帝国騎士団から誘いが来ているくらいだが、2人とも父親から領地経営を学ぶため断ってと言っている。

普通は在学中の生徒に帝国騎士団から誘いは来ない。

つまり2人ともそれほどまでに優秀ということだ。


リオンの家は子爵。

リオンの家であるミリガン子爵家では、ウィンダー領におけるチョコレート生産で砂糖の生産を受け持っており、砂糖の生産でかなり潤うようになってきている。

バイロンの家は男爵。

バイロンの家であるストラーグ男爵家では、ウィンダー領のゴールドウィンダーワインの瓶を一手に請け負って生産しており、ゴールドウィンダーワインが大人気となっているおかげで、かなりの生産量となり、こちらもウィンダー家のおかげで潤っていた。

そのため、二人にとってはウィンダー侯爵であるレンの安全こそが最優先事項であり、初級迷宮であり事故は起きないはずであるが、万が一の場合、他の生徒よりレンの安全を優先するつもりであった。

二人が同行することはレンに事前に知らされていたが、学園内ではできるだけ爵位を前面に出すような行為はしないようにして、普通に接してくれるようにレンから伝えていたため、二人は爵位に触れないようにしていたのだ。


「ジェマ。いらんことを言うな。レン様が困っている。申し訳ございません。できるだけ普通にするようにしていたのですが、このバカが余計なことを言って申し訳ございません。こいつの言ったことは無視してお忘れください」

「何よ!いつもスカした態度のリオンがウィンダー侯爵のお供ができると喜んでいたでしょ。ラフな態度いいんでしょ。もっと気楽に行こうよ」

「だからと言ってそのままやる奴があるか」

「リオンの言うとおりだ。ジェマ。お前はもう少し時と場所、建前をもう少し考えろ。もう少しその場の空気を読め」

「何よ、バイロンまで」

リオンとバイロンに叱られ少し不機嫌そうにするジェマ。

「皆さん。大丈夫ですよ。僕は気にしませんから。普通に接してください」

「ほら、こう言っているじゃない。もっと楽に行こうよ」

「「ハァ〜〜〜」」

思わずため息をつくリオンとバイロン。

「ジェマ。もう少しお淑やかにしないとね」

「何よ。デニス」

「そうそう。デニスの言う通りよ。ジェマ。あなたのお父様はあなたに甘々だから何も言わないかもしれないけど、あなたのお母様にいまの事を知られたら、間違い無く行儀作法の特別訓練が施されるわよ」

「えっ・・・アハハハ・・少し、ハメを外しすぎたかな・・・すいません」

コーニーの言葉に顔色が悪くなり急に静かになるデニス。


「もう良いかしら、上級生5人のことはどんな人かわかったでしょう。剣術や魔法の腕前は確かだから安心してちょうだい。それでは、さっそく迷宮に入りましょう。迷宮内では勝手な行動はとらない事。良いですね」

担任のルミナスが全員に声をかけ、迷宮に入ること宣言した。


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