第52話 隠蔽されていた魔物
行方不明事件が頻発しているため、夜間の時間帯における衛兵隊の巡回が頻繁になされていた。
特に、平民街や商人街で事件が頻発している。
衛兵隊が全員召集されて、まさに厳重警戒体制となっていた。
これ以上、事件が頻発するなら自らの存在意義を問われる事態になってしまう。
事件の起きる夜間は、特に死角を無くすかのように多くの衛兵の姿が見えていた。
こんなに警戒厳重なら流石に事件は起きないだろうと思われたが、その中を掻い潜り事件は起き続けていた。
そんな状態のためここ数日、精霊たちに頼んで帝都の様子を見てもらっていた。
帝都の情報を集めるために風の精霊たちにが主に動いてくれている。
『衛兵さんがいっぱいいるよ』
『こっちも衛兵さんだらけだよ』
『うわ〜怖そうな表情〜』
『あっちに行こうよ』
『誰が早いか競争だ〜』
『こっちが早いぞ〜』
『アハハハ・・・面白い』
精霊たちは基本自由である。
真面目にしているかと思えば急に遊び始めたりして、どこまでも自由だ。
精霊の姿は精霊と契約もしくはその才能がある人たち、もしくは精霊から姿を見るようにしない限り、人には見えないため人のことをほとんど気にしない。
レンの眷属である神鳥フェニックスのラーは、擬態スキルを使い姿を白いフクロウに変え、夜の空から帝都の様子を見てもらっていた。
上空を飛ぶフクロウ姿のラーと視界を共有する。
『主、いきなり全ての視界を共有しない方がいいよ。目眩がしたり気持ち悪くなるからね。僕の方で少し抑えた映像を見せてあげるよ』
ラーから送られてくる映像は、暗闇の中に点々と魔力灯の灯りが浮かんでいる
『正直、よく分からないね』
『主、そのまま見たらダメだよ』
『エッ・・なら、どうしたらいいの』
『神眼が使うんだよ。普通に見たら何も分からないよ。暗闇と魔力灯の光しか分からないよ』
レンは、ラーに指摘されそれもそうだと思い、神眼を発動させる。
レンの神眼とラーの視界が同調する。
すると帝都の中を移動する魔力の塊が見えてきた。
『ラー。あの魔力の塊をよく見てくれ』
『了解』
白いフクロウ姿で夜空を飛ぶ、ラーがその魔力の塊に近づいていく。
『主、あれは危険だ。闇の魔力に邪悪な魔力を混ぜ合わせたものだよ』
その瞬間、移動する魔力の塊から魔力の矢が次々に放たれ、ラーに向かってくる。
『ラー、逃げて』
『大丈夫。こんな遅い攻撃が当たる訳がないよ。僕はこれでも神鳥フェニックスだよ』
白いフクロウ姿のラーは、華麗にかわしていく。
『主、攻撃していいかい』
『できるだけ街に被害が出ないようにしてくれ』
『了解。主の神聖魔法を借りるよ』
夜空を舞う白いフクロウを淡く白い光が包み込む。
『いくぞ、フェニックス流ホーリーフェザーだ〜!』
ラーから白い光を放つ羽が無数に放たれ、地上に潜むものたちに向かって高速で飛翔していく。
次々に破壊音が下と同時に空間にヒビが入り何かが弾けて割れる音がした。
そしてそこに現れたのは無数のスケルトン。
しかも、白い骨が光を放っている。
『主、何あれ、あんなスケルトンは初めて見るよ。この時代のスケルトンは光るの?』
『いや・・僕も初めて見る』
『とりあず、攻撃してみる』
再び、フクロウ姿のラーからホーリーフェザーが放たれる。
高速で飛翔する神聖魔法ホーリーフェザーがスケルトンに命中するが、スケルトンたちは何事もないように空間から次々に湧き出てくる。
『なんだよ、神聖魔法を弾いているよ。何か障壁でも張っているのかな』
『きっと、なんらかの魔法障壁だろう』
『主、このスケルトンがこのまま真っ直ぐ向かう先は、主の屋敷だよ』
『え〜、狙いは僕かよ』
『主、心当たりは』
『ウ〜ン。ありすぎるから分からん』
『狙われすぎでしょ』
『そこは否定できないな』
スケルトンの群れは隠蔽魔法が解除された為か暴れ始めていた。
近隣の住居や商店から住民が出てくる。
「うわ〜!魔物だ」
人々は慌てて我先に逃げ出す。
地上では、ラーの放った神聖魔法で、スケルトンを隠していた隠蔽が破壊され、破壊音で衛兵たちが集まってくる。
「魔物のスケルトンだ」
「魔核を破壊しろ」
「魔核を破壊できなければ粉々に打ち砕け」
衛兵たちは口々に叫び、衛兵たちとスケルトンとの戦いが始まった。
衛兵達の剣がスケルトンに振るわれる。
しかし、スケルトンの骨にヒビすら入らずに跳ね返される。
「クッ・・硬い。気を付けろ、普通のスケルトンじゃないぞ」
スケルトンの普通とは違う硬さに驚く衛兵たち。
「どけ!魔物相手なら俺たちの仕事だ。衛兵どもは引っ込んでいろ」
「冒険者どもこそ引っ込んでいろ。帝都の治安を守るのは俺たちだ」
そこに帝都の冒険者たちも戦いに加わる。
既に地上は乱戦状態となっていた。
スケルトン・衛兵・冒険者と入り乱れての戦いが始まっている。
『主、この状態じゃ魔法は打てないよ。みんな巻き込んじゃうよ』
『ひとまずスケルトンは、衛兵と冒険者に任せよう。周辺に操っているものや他に異常がないか見てくれ』
『了解』
白いフクロウ姿のラーが、周辺に気をつけながら上空を旋回していると、微かに異常な魔力を感知した。
『主、微かに移動している魔力を感知したよ。どうやらこっちも隠蔽魔法を使っているみたいだ』
『ラー、そこを攻撃してくれ』
『了解』
ラーは再び神聖魔法ホーリーフェザーを放つ。
神聖魔法を纏った白い羽が降り注ぐ。
爆発音と同時に3人の人物が現れた。
3人とも黒いマントを纏っていて、上空を旋回するラーを睨んでいた。
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