第43話 フェニックス誕生

時空魔法ルームの中でフェニックスの卵に神気を与え始めて10日目。

今日もルームの中は多くの精霊たちが楽しそうに飛び交っている。

光の精霊はルームの上空を飛び交い、植物の精霊たちは、植えられた木々や植物の周囲で楽しそうにしている。

小さな泉では水の精霊たちが、時々水を噴水のように水を飛ばして遊んでいる。

そんなルームの中でレンは、フェニックスの卵に10日目の神気を与えていた。

そして、フェニックスの卵に徐々にヒビが入り始めていた。

すると全ての精霊たちがレンの周りに集まってきて、レンと一緒にフェニックスの卵を見守る。

レンと精霊たちが見守る中、ついに卵割れた。

中からは体長10㎝ほどの虹色に輝くヒナ鳥が出てきた。

精霊たちが一斉に歓声をあげる。

羽化したフェニックスは虹色に輝く翼を広げると飛び立つ。

ルームの中を虹色に輝く羽を羽ばたき飛び回る。

やがてレンの側にやって来ると前に降り立つ。

虹色の光は、やがて炎へと変わる。

そのフェニックスの纏う炎は神気を含み、神々しく燃え盛っていた。


『主、名前をつけて』


フェニックスが念話で話しかけてきた。


『もう話せるの』

『これでも神鳥。問題無い』


レンはしばらく考え込んだ。

虹色に輝いていた羽。

神気に満ちた神々しき炎。

ならば光か太陽の神の名が相応しいだろう。

不意に浮かんできたのは、地球のエジプト神話に出てくる太陽神名前だ。


『ラーでどうだ』

『どんな意味があるの』

『太陽を表す神の名前の一つだよ』

『分かった。僕はラー。フェニックスのラー。よろしくねレン』

『よろしくね』

『いつも主人のそばにいるからね』

『でもその炎では』

『問題ない。これは神の炎。普通の炎とは違う。燃やすものを指定できる。それに普段は炎を消して普通の鳥に擬態できるから誰にも分からない。何なら精霊からの導きで鳥の魔物と契約できたことにすれば問題無いと思う』

『鳥の魔物?』


そこに水の大精霊ウィンがやってきた。


「レン。ようやくフェニックスが羽化したのか、よかったな」

「ありがとうウィン。フェニックスのラーを連れて歩くために擬態すると言っているけど、どんな姿がいいだろう」

「擬態するならセイントバードがいいと思うな」

「セイントバード?」

「魔法を操る魔物の一つで、姿は小さいが持っている力で言えばAランクの魔物に匹敵するよ。特にセイントレッドバードは、赤い体に緑と黄色の2本のラインが特徴で、フェニックスと同じ種類の魔法である火と風と雷の魔法を操る鳥さ」

「ちなみにフェニックスを魔物に例えるとランクはどうなるの」

「人間の定義する魔物のランクで言えば、おそらくランクSSだと思うな」

「ランクSSですか・・」

「ラーをどうこうできる人間はいないよ。フェニックスだからまず、死ぬことはないからね」

「確かに」

「ラーが本気になれば、あらゆるものを燃やし尽くす神の炎で、敵対するものたちを滅するだけだよ。分からない愚か者たちは、神の炎でチリも残さず全て燃やせば問題無いさ」

「それはそれで、問題だと思うけど・・」

「どうせ、これからわんさかと湧いて来るだろうから、愚か者にわざわざ気を使う必要はないよ」


フェニックス

種族:

 ・神鳥

名前:

 ・ラー

主な能力

 ・殲滅の炎

   指定したあらゆるものを燃やし尽くす

 ・癒しの炎

   あらゆる怪我、病を癒す炎

 ・復活と再生の炎

   死んでも炎の中から再生し復活する

   使えるのはフェニックス自身のみ

 ・浄化の炎

   あらゆる呪い、邪気、邪霊を炎で浄化

 ・擬態

 ・火魔法

 ・風魔法

 ・雷魔法

 ・高速飛行

 ・大きさを自在に変える

 ・レンの下に瞬間移動できる

特記事項

 ・レンの眷属


フェニックスのラーは炎を消すと、擬態の能力を発動させる。

体が白い光に包まれてしばらくすると、赤い羽に緑と黄色のラインの入った10㎝ほどの姿のセイントレッドバードになった。

その姿で羽ばたくとレンの左肩に乗った。


『主、これからよろしくね』

『これならどうにか誤魔化せるか』


レンは、ホッとしながらフェニックスのラーを連れてルームから自分の部屋に戻った。

しばらくするとそこに祖母のルナが入ってきた。

すぐにルナの目に、レンの左肩に乗っているセイントバードに擬態したフェニックスのラーが映った。

その鳥を見た瞬間、ルナの表情が驚愕の表情に変わった。


「レン。この鳥は一体・・・」

「あっ・・これは、精霊の導きで契約でき・・・」

「これはセイントバードじゃないの!!!幸運をもたらす鳥と言われている鳥のはずよ」


ルナのテンションが一気に上がる。


「えっ、お婆さま知っているのですか」

「とても珍しい鳥よ。セイントバードの中でも特に貴重なセイントレッドバードに違いないわ。簡単には人に懐かない鳥で、気に入らない相手には、強力な魔法で徹底的に攻撃して来るの。よく契約できたわね」

「ハハハハ・・・たまたまです」


レンは、笑って誤魔化すしかなかった。

ルナはすぐにハワードを呼んできた。


「こ・これが、幸運をもたらす鳥。セイントレッドバードか・・。素晴らしい。我が家はレンさえいてくれれば安泰じゃ。あの馬鹿息子は・・オーク息子はもういらん」


ハワードは嬉しくて仕方ないと言わんばかりであった。


「あ・あまり人には言ってほしく無いのですが・・」

「分かっているわよ。狙ってくる愚か者もいるでしょうけど。そんなものたちはセイントバードから魔法で攻撃されて終わるだけよ。そんなに心配する必要はないと思うわよ」

「そ・そうですか・・・」

「ジェラルド(前皇帝陛下)の奴に自慢じゃ〜」


ハワードは部屋を飛び出して行った。

止める隙も与えずに身体強化魔法を最大にして走り去っていた。

レンとルナは呆気に取られたまま置き去りにされていた。


『主。もはや手遅れだね・・・』

『ハア〜。まさかお爺さまがああなるとは想定外だよ。ラーの本当の姿を誤魔化すはずのセイントレッドバードのはずが、逆にそれが騒動の元になってしまうとは・・・』


レンとフェニックスのラーは念話でため息をついていた。


「ごめんなさいね。レン。まさかハワードがあそこまで喜ぶとは思わなかったわ」

「いえ、お婆さまが悪い訳ではありませんから」

「ハワードが自慢に行ってしまったから、陛下から呼び出されるわね」

「ですよね・・間違いなく呼ばれますね」

『主。胃が痛くなったら癒しの炎で治してあげるよ』


自らの眷属となったフェニックスのラーに心配されるレンであった。

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