第42話 卵とショートソード
レンは、自分の部屋にフェニックスの置物を飾った後、ひとり部屋の中でフェニックスの卵をどうするか考えていた。
思わず購入してしまったが、うっかりと羽化させてしまったら騒動になる。
『レン。何をそんなに考え込んでいるの』
水の大精霊ウィンがそんなことを言いながら現れた。
『今日手に入れたこのフェニックスの置物の中に、時間停止魔法がかけられたフェニックスの卵があるんだけど、これを羽化させるには神力が必要なんだ。だけど羽化させたらこの置物を壊して中からフェニックスが出てくる。そうなると自分の称号のことを含めて、全て話さなくてはいけないことになる。だから困っているのさ』
『ヘェ〜、フェニックスの卵か、珍しいものを手に入れたね。でも落として壊れた事にすれば良いんじゃないの』
『魔鋼でできているんだよ。落としたぐらいじゃ壊れないよ』
『問題ないんじゃないの。むしろ面白いのかも。いっその事こと全て明らかにして世界の支配者になればいいのさ。なにしろ君は帝都の魔王の孫なんだから』
ウィンの言葉に少しゲンナリした顔をする。
『そんなこと冗談じゃ無い。面白いとか言う話じゃないよ。世界の支配者なんて、そんなめんどくさいモノになるつもりは無いよ』
『そんなに悩むこともないよ。なら、収納魔法で取り出せばいいのさ』
『収納魔法で・・・できるの?』
『大量に魔物を狩るときに、手で触れたり見ていなくとも自動収納しているだろ。神眼でよく確認して、その状態で収納すればいいのさ。卵に神力を与えなければ羽化は始まらないから収納できるはず。できなければルームの方に入れればいいのさ。フェニックスはルームで育てれば問題ないでしょ』
『なるほど、やってみよう』
レンは、神眼を発動させフェニックスの置物を見る。
フェニックスの置物の中にある卵をしっかり確認しながら卵に収納魔法をかける。
『入った!』
収納魔法に意識を向けると収納品のリストが見える。
しっかりとフェニックスの卵が入っている。
『ありがとうウィン。収納できたよ』
『早速、ルームの中に置いて毎日神力を与えればいい』
『あ、そういえば神力はどうやれば与えられるの』
『使徒なんだから分かるでしょ』
『教えられていないよ』
少し呆れ顔をするウィン。
『やれやれ、何のために神聖魔法が与えられていると思っているのさ』
『神聖魔法?浄化したり回復とかだけじゃないの』
『普通の人間が神聖魔法を使った場合、その人の持つ魔力にごく僅かな神力が加わって神聖魔法が発動する。レンは使徒なんだから神聖魔法を使えば圧倒的な量の神力を含む魔法になる。普通の人の使う神聖魔法と比較すれば100倍ほど多い神力が含まれることになる』
『100倍!』
『レンが神聖魔法を使って神力を与えてやれば良いのさ。神聖魔法を発動させてスキル木と森と大地の恵みを組み合わせてやればできるはずだよ。最初は頭脳強化魔法を発動させて魔法の組み合わせの最適化を図れば、次回からはすぐに出来るはずだよ」
早速、時空魔法ルームを発動させて中に入る。
ルームの中は日頃から色々手を加え緑豊かな箱庭のようになっていた。
そこは小さな精霊たちが自由に飛び交っている。
小さな泉には水の精霊たち。
周囲には木々が生い茂り、花が咲き乱れ、木と森の精霊が嬉しそうにしている。
その中には、メメロンの木を含めスキルで作り出した果実の木が生い茂っていた。
上空には光の精霊たちが飛び回る。
ルームはレンの屋敷と精霊の森には出入りできるように入り口を設置していた。
当然、普段は閉めて隠蔽を施してある。
当然許可したものたちのみが出入りできるように魔法で設定されている。
ルームの中にクッションを置いて、そこに収納魔法からフェニックスの卵を出して静かに置く。
卵は少し赤みがかっていて、大きさは10㎝ほどの大きさ。
その前に座ると頭脳強化魔法を発動させた。
フェニックスの卵に神力を与えることを考えながら、神聖魔法と木と森と大地の恵みを融合させて、新しいスキルを作り出すことを始める。
レンを包み込む魔法陣の優しい光。
ゆっくりと最適化させいくとやがて新しい魔法スキルが出来上がった。
眷属との絆
効果:
・使徒レンとレンの眷属との間でのみ可能となる。
・眷属との間で自由に神力や魔力をやりとりできる。
・スキルや魔法を融通し合うことも可能となる。
・意思の疎通ができる。
・新たに眷属となるもの全てに適用できる。
頭脳強化魔法を維持して、スキル【眷属との絆】を使う。
フェニックスの卵に与える神力を無理の無い範囲で送り込む。
その上で1日に必要な量と時間を調べていく。
そのうち卵から、十分だと言っている気がしてきたのでやめると約30分ほどである。
スキル【眷属との絆】から分かってきたことは、どうやら通常の時間で1日30分ほど神力を与えて10日ほどで羽化するらしい。
『さて、次はコレだな』
レンは、購入した錆びたショートソードを取り出した。
『その錆びついたショートソードはどうするの』
『神眼で調べたらミスリルとオリハルコンの合金の上に、わざと鋼のコーティングを施したらしい。そして、表面の鋼の部分が錆び付いているだけらしいのさ』
『ヘェ〜、ミスリルとオリハルコンの合金か、珍しいね』
『それに柄の部分を見てごらん』
ウィンがレンに言われた部分を覗き込む。
『これ精霊石じゃないか』
『そうだよ。さらに付与魔法でこのショートソードに【不壊】と【切る】が付与されている』
『それは凄いね。つまりこの空っぽの精霊石に僕の力を込めてあげればいいのかい』
『お願いできるかい』
『簡単さ、すぐにできるよ』
ウィンが精霊石に触れるとウィンが青く輝き始める。
しばらくすると精霊石が青く輝き始めた。
そして、精霊石の輝きがショートソード全体に行き渡り、ショートソード全体が青く輝き始める。
すると錆と鋼のコーティングが剥がれ落ちていく。
そこには青い輝きを放つ白銀のショートソードがあった。
氷結のショートソード
能力:
・水の大精霊ウィンから水の精霊の力を与
えられ、氷結に関わる力を発揮する。
・【不壊】と【切る】能力を持つ
・【切る】は使用者の意志の力により
能力の強さが変わる。
氷結のショートソードの能力を試すためにウィンと一緒に魔の森の近くにあるにある火山帯に転移する。
ノームとの特訓で少し立ち寄ったことがる場所だ。
転移するとそこは植物や木は一切生えておらず、岩ばかりであった。
そしてその岩が熱い。とても熱く熱気を放っていた。
岩の隙間からは炎が噴き出ている。
しばらくすると高速で近づいてくる魔物の気配がしてきた。
現れたのは炎の馬ディーノスであった。
とても気性が荒く自分の縄張りに入るもの達を焼き殺すと言われていた。
『レン。運がいいな。こいつはちょうどいい実験体がきたじゃないか』
『そうだな、悪いが実験台になってもらうぞ』
ショートソードに軽く魔力を流し、こちらの隙を伺い睨んでいる炎の馬ディーノに向かって軽く振ってみた。
すると突如強力な冷気の刃が超高速で炎の馬を襲った。
炎の馬は逃げることもできず、一瞬にして炎が消え去り真っ二つになり凍りついてしまった。
炎の馬だけでは無く、あたり一面銀世界となり気温が急低下していた。
所々炎を噴き出していたはずの岩場が氷の世界になっている。
レンとウィンは、ショートソードのあまりの強力な力に呆然としていた。
『レン。この威力は流石に不味いよね』
『軽く魔力を流してこの結果。これは収納魔法で完全に封印するしかないよ』
手に入れたショートソードは早速お蔵入りとなったのであった。
そして後日、火山帯が完全凍結状態になっているのが発見され、原因がわからないまま精霊の悪戯とであろうと言うことでそのままとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます