第24話 農地拡大

栽培スペースを倍以上に広げ、メメロンの木を20本増やして合計30本。

ヒール草の畑も100束分の規模にして栽培を始めている。

木と森と大地の恵みの魔法陣からの魔力を栄養にしてどんどん成長をしていく。

まだ空いているスペースがかなりあるので、葡萄を作ってみよう。

この世界にも葡萄はあるが、やや酸味が強いものが多い。

だから、甘くてとびきり美味しい葡萄を作ろうと思う。

空いているスペースの片隅に立つ。

呼吸を整え、植物創造魔法を発動させる。

葡萄をイメージしてとびきり甘く、ジューシーな味わいの葡萄ができるように創造していく。

目の前の地面で輝く魔法陣の中から小さな若芽が出てきた。

続けてスキル木と森と大地の恵みを発動。

小さな若芽を中心に緑色に光る魔法陣が出来上がる。

小さな芽は、魔法陣からの力を吸収して、すくすく育ちレンの背と同じ高に育つと、3つの葡萄の房を実らせた。

葡萄の一粒一粒が金色に輝く葡萄が目の前にある。

レンの神眼には葡萄の詳細が映し出されていた。


ゴールドマスカット

品質:

 最高品質

効能・味

 ・金色に輝くその姿はまさに葡萄の王様

 ・とても甘く、濃厚で、それでいて後味がすっ

  きりしている

 ・あふれ出る果汁は濃厚であり、一口食べれば

  幸せを感じるであろう

 ・一度食べれば、他の葡萄が物足りなく感じる

 ・ワインを作れば最高品質のワインとなる

 ・解毒作用(弱)がある。


予想通りとんでもないものができてしまった。

弱いけど解毒作用まであるのですか。

枝に下がっている金色に輝く葡萄から一粒とって口に運ぶ。

噛み締めた瞬間、口中にあふれ出る果汁。味わい深い果肉。

葡萄とは思えぬほどの甘さと香り。

レンは、葡萄を食べて、葡萄の美味しさがもたらす幸せを感じていた。

幸福感に身を委ねていると背後から自分を呼ぶ声がした。


「レン。この葡萄は」


振り向くとお婆さまが驚きの表情をしていた。


「お婆さま、メメロンの種に違う種が混じっていたので栽培してみたら、この金色に輝く葡萄が出来ました。一粒食べたら信じられないほど甘くて美味しいのです」

「これほどまでに金色に輝く葡萄は見たことがありません」

「お婆さま。ぜひ、食べてみてください」


レンに勧められて、房から一粒取って口に運ぶ。

あまりの美味しさにしばらく無言のまま涙を流す。


「これは、メメロンに負けず最高級の果物です。レン。これをもっと栽培できますか」

「は、はい。大丈夫です」

「これも、もっと増やしましょう」

「これでワインをつくといいかもしれませんね」

「なるほど、ワイン。それも良いわね」


美味しい食べ物はそれだけで幸せな気持ちになる。

完熟させた房から種っを取り出し、その種を使いさらに葡萄の木を増やしていく。

一気に葡萄の木を30本にまで増やして収穫量を増やす。

レンのスキルである木と森と大地の恵みの働きで、どんどんメメロンの実が出来上がり、収穫されて商人ギルドに運ばれていく。

ゴールドマスカットもスキルの力でどんどん実をつけていく。

慌ただしくゴールドマスカットを収穫すると、ルナの指示でワイン作りが始まった。


「お婆さま、僕は樽を作ります」

「分かったは、レンお願いね」


レンは、スキル木を使いゴールドマスカットの果汁を入れておく樽を作り始める。

作り出された樽が積み上がっていく。

レンは、積み上がっていく樽を神眼で見てみる。


ワイン樽

製作者:

 レン・ウィンダー

効果・性能

 ・内容量 200ℓまで可能

 ・神気の宿る樽

 ・この樽に入れたれた果汁は数ランク上

  の味になる

 ・この樽を使用すると1ヶ月で最高級の

  ワインになる

 ・この樽で作られたワインには若返り

  (微弱)の効果がある


とんでもない樽が出来上がりました。

この内容は秘匿するしかない。


ワインを作るための職人が呼ばれてくる。

職人達は初めて見る葡萄に、皆驚きの表情をしていた。


「何だこの葡萄は、見たことないぞ」

「金色に光っているぞ」

「こんなに甘い香りは初めてだ」

「金色に輝く葡萄なんてあるのか」


葡萄はどんどん絞られて金色に輝く果汁が樽の中に溜まっていく。


「おい、果汁まで金色に輝いているぞ」

「いくら何でも果汁まで金色だなんて・・・・・」

「本当だ・・・果汁が金色に輝くなんて聞いたことがないぞ」

「この葡萄は一体・・・・・」


樽の中の果汁は、強い香りを放ち始めている。

甘く芳醇な香りはそれだけで人を幸せにする。

樽いっぱいに溜まったら蓋をしてしばらく寝かせることになる。

出来上がったものから保管用の部屋へ運び込んでいく。

全部で20樽ほど出来上がったようだ。


「1年後が楽しみね」

「お婆さま、そこまで待たなくても、どうやらこの樽を使うと1ヶ月ほどで、ワインとして飲めるようになるようです」

「えっ、本当なの」

「スキルで樽を作ったときに、何となく感じたことですから、絶対とは言えないのですけど」


レンは、神眼で見たとは言えないため、スキルで作ったときに何となく感じたと、遠回しの言い方をするしかなかった。


「分かりました。1ヶ月後に試飲してみましょう」


ルナは、レンが慈母神アーテルの使徒であると知っているので、何か特別な力で1ヶ月だと分かっているのだと考えていた。


「お婆さま、残った葡萄はどうしますか」

「そうね。屋敷のみんなで食べましょう。明日からは、半分ワインにして残りは商人ギルドに売りましょう」

「はい、分かりました」


葡萄を屋敷のみんなと食べると、屋敷中からあまりの美味しさに絶叫が響き渡るのであった。




翌日から、商業ギルドへの販売品は、メメロンとヒール草に葡萄のゴールドマスカットが加わった。

レンは、護衛を引き連れて再びヨーク領の商人ギルドにやってきた。

レンとギルド長のモーガンは、ギルド長室にいた。

商人ギルド長のモーガンが、レンの持ち込んだ葡萄を不思議そうにみている。


「金色の葡萄なんて初めて見るぞ」

「この一房は、試食用に差し上げますから食べてみてください」


モーガンは一粒口に運ぶ。

モーガンの表情が固まり、次に涙を流す。


「信じられん。美味い、美味すぎる・・・・」

「この葡萄ゴールドマスカットを売り出します」

「他の高級葡萄は、普通は銅貨3枚〜5枚。稀にできる最高品質のもので銀貨1枚。だがこれは別格だ。最高品質の葡萄の倍の値段、銀貨2枚で買い取ろう。それでどうだ」

「1房銀貨2枚で大丈夫です。それでお願いします。それと1ヶ月後のゴールドマスカットのワインを売り出します」」

「ほ〜ワインか、それはまた大評判になることは確実だ。流石はウィンダー侯爵様だ。姉御の家は安泰だな」

「えっ、姉御?」

「ハハハハ・・俺はルナ様の縁者で子供の頃はお付きの1人だった。いつも俺たちを引き連れてヤバそうな奴らをぶちのめしまくって、実家の領内の治安維持に一役買ってたぞ。その時からのお付きの連中はみんな姉御と呼んでいるんだよ」

「帝都の魔王に姉御・・ですか」

「お似合いの2人だろう」

「似たもの同士ですね」

「子供の頃は領内の裏稼業の連中から氷結の魔女と呼ばれてたな。確かハワード様も帝都で裏社会の連中相手のブイブイ言わせていたはずだ」

「2人で何やってたんですか。僕は絶対にそんなことはしませんからね」

「血は争えんと言うからな。ハワード様とルナ様の家系は隔世遺伝で才能ある子が生まれると言われているからな」


モーガンはレンを見つめる。


「先ほど言いました。僕は絶対そんなことはしません」

「そうか、すでに色々やらかしていると思うが・・第一皇女様との婚約。幾度も命を狙われる。7歳にして侯爵として陞爵して独立。メメロン、ヒール草、ゴールドマスカット。どれかひとつだけでも大事件だと思うぞ。しかも精霊の加護も受けているらしいと噂で聞いているぞ」

「ウグッ・・それは・・」

「しかも、1ヶ月後にゴールドマスカットのワインまで売り出す。確実に大評判になるだろうな。これだけ色々起こすのだから、間違いなくハワード様とルナ様の血を引いている証明だ」

「これからは、穏やかな日常になるはずです」

「まず、無理だと思うな。ハワード様とルナ様の血がそれをさせんと思うな。血は争えん。片方ならまだしも、2人の血を受け継いでいるんだぞ。2人の血縁者の中で一番色こく継いでいるように見えるぞ」

「そ・そんなことは・・」

「ハワード様、ルナ様の血縁者の中で俺が知る限りでは、レン君が一番強烈だな。2人がそのまま若返ってさらにパワーアップしたようだよ」


モーガンの言葉に絶対に穏やかに生きてやると思うレンであった。

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