第23話 農園を作ろう

お爺さま、お婆さまに話をして、ヨーク領の侯爵家の土地で人目に触れず、なおかつ侯爵家の使用人達で管理できる土地であり、植物の育成実験ということで屋敷の庭を使うことになった。

屋敷の庭と言ってもトンデモナイ広さがあるから問題ないとの事。

庭の奥の目立たぬ場所に栽培のための場所を確保。

ここなら情報が漏れる事もないから安心できる。

お爺さまは、お婆さまから木や植物の成長を促進させるスキルを聞いているが、見るのは今日が初めてだ。

管理をする侯爵家の使用人達も初めて見るから、皆が興味津々。

精霊の森で育てたメメロンの木からとれた完熟メメロン。

そこから採れた種を用意。


「これから魔の森で手に入れた果物メメロンの種を植えます」


流石に自分の植物創造魔法で作ったとは言えない。

本当の事を言えないので、大精霊ウィンと魔の森に行った時に発見し、ウィンからとても美味しい果物だと教えられたことにして話してあった。

魔の森で実食済みで、とても美味しかったと話してもある。

成長した時を考えて、間隔をあけて一粒一粒丁寧に植えていく。

10粒の種を植えたところでスキル【木と森と大地の恵み】を発動させる。

緑色に輝く魔法陣がメメロンの種を植えた場所に10個浮かび上がった。

しばらくすると地面から芽が出てきたと思ったら、成長の速度が加速度的に速くなり、瞬く間に自分の背丈と同じ高さに育つ。

今回は、実に多くの栄養素と魔力と神力が行き渡るようにイメージしているお陰か、木の高さは前回より低いが、それぞれの木に収穫可能なメメロンの実が1個ついている。

大きさは直径20㎝ほどであろうか。

早速収穫して食べてみることにした。


「食べられる実がなっているみたいだよ」

「ならば食べてみよう。用意してくれ」


お爺さまが使用人達に指示を出す。

庭師が丁寧に収穫したものをメイド長が切り分ける。

半分に切った瞬間、芳醇で甘く芳しい香りが辺り一面に広がる。

香りを嗅いだだけで思わず唾を飲み込んでしまう。

切り分けられた薄緑色の果肉。

お爺さまが一口分の果肉を口に入れた瞬間、お爺さまが驚愕の表情に変わり、しばらく金縛りにあったかのように動きを止める。

やがて、お爺さまの目から涙が流れた。


「美味い・・・美味すぎる。こんなに美味い果物は初めてだ」


お爺さまの言葉を聞いたお婆さまも、メメロンの果肉を口に運ぶ。

食べた瞬間、お爺さまと同じく涙を流して動きを止めた。


「美味しい・・美味過ぎます」


お婆さまはゆっくりと味わうようにしていたが、突然こちらを向いた。


「レン。これをヨーク領の特産品の一つとして売り出しましょう」

「メメロンを売り出すのですか」

「そうです。専用の農園を作り、信用できる者達に管理させて売りに出しましょう。商人ギルドに登録をしてギルドを経由して売りに出せば、レンと商人ギルドとの関係も強めることができますから」

「僕はそれでいいですよ」

「セバス」


お婆さまが総執事長を呼ぶ。


「何か御用でしょうか」

「メメロン4個は皆で分けて食べなさい。これから残り5個を持って商人ギルドに向かいます。用意してください」

「畏まりました」


総執事長セバスの指示で馬車が用意された。

メメロン5個とお爺さま・お婆さまと共に馬車に乗り込む。

ヨーク領商人ギルドは馬車で10分ほどの距離にある。

しばらく走ると商人ギルドに到着して中に入る。

中に入ると白髪混じりの年配の男性が出迎えてくれた。


「ハワード様、ルナ様、お久しぶりでございます。レン様。ようこそおいでくださいました。商人ギルドを預かるギルド長でありますモーガンと申します。どうぞ此方へ」

「モーガン久しぶりね」

「ルナ様も相変わらずお元気そうで」

「レン。この人がヨーク領の商人ギルドのギルド長モーガン。私の遠縁のものよ。いつもだともっと口調が荒いのだけど信用はできるのよ」

「流石に場所をわきまえて発言しますよ」


2階のギルド長室へ案内され、部屋の中のソファーに座る。


「今日はどの様な御用件でしょう」

「今後これを売り出そうと考えているのよ」


お婆さまはそう言ってメメロンを出す。


「これは一体何でしょう」


ギルド長のモーガンは不思議そうにメメロンを見つめる。


「これは、レン自らが魔の森で見つけたメメロンと言う新種の果物。私たちは実食済み。1つはあげるから食べてみなさい」

「えっ、魔の森ですか・・そんな貴重なものをよろしいので」

「かまいません」


モーガンは早速メメロンを試食する分だけ切ると一口だけ口にする。

するとそこには、幸せそうな表情をして動きを止めたモーガンがいた。


「こ・・これは美味すぎる。これは絶対に売れる。間違いなく売れます」


我に返ったモーガンが力説し始める。


「美味しいでしょ。このメメロンを栽培することに成功したのよ。そこでメメロンの販売を商人ギルドで行ってほしいのよ。当然、情報は秘匿することが条件になります」

「これを栽培できるのですか。承知いたしました。これほどならメメロン1個につき金貨1枚でいかがでしょう」

「レン。どうしますか」

「僕はそれでかまいません」

「レンが良いと言ってますからその金額で良いでしょう。レンのギルドカードを作って、そこに売上の代金を入れるようにしてください」

「待ってください。お婆さま。栽培には侯爵家の使用人も加わります。侯爵家に入れるべきです」

「栽培はレンがいたからこそできたのよ。レンが受け取るべきでしょ。それに物が動けば税金が入りますから問題ないでしょ」

「それでも全額はダメです」

「レンが侯爵家当主なのですから問題ないのですが・・・なら、半分を侯爵家の口座、半分をレンの口座にしましょう。それでどう」

「分かりました。それでいいです」

「モーガン。聞いていたでしょ。侯爵家とレンでそれぞれに代金の半額を入れてください」

「承知いたしました。まさか栽培までレン様が行ったのですか」

「そうよ。レンが試行錯誤して栽培ができるようになったの、次の収穫できたらギルドにに連絡を入れます」


お婆さまも、流石に魔法で成長促進させたとは言う訳にはいかない為、試行錯誤の末に完成させたと言ってくれた。


「あっ、そうだついでに見て欲しいものがあります」


小さなバッグから出すふりをして、収納魔法から各種ポーションや魔法薬の原料になるヒール草を出す。


「これはどうですか」

「これはかなり品質がいいですな。鑑定させていただいてもよろしいですか」

「どうぞ」


モーガンは鑑定の魔法を発動させてヒール草を見る。


ヒール草

 品質:超最高品質


「これは素晴らしい。普通ヒール草1束で銅貨2枚ですが、これほどなら金貨1枚はします」


モーガンの評価に驚く3人。


「レン。このヒール草も育てたのかしら、聞いてないわよ」

「アハハハ・・・ごめん。庭の隅で育ててみたんだ」


ハワードとルナは、レンが魔法で育てたとすぐに分かった。


「レン様。この品質で栽培可能ならぜひ継続して栽培していただけませんか」


レンは、ハワードとルナを見る。


「レン。好きなようにやりなさい」


ルナの優しい言葉を聞いてヒール草も栽培することを決めた。


「ありがとう、それならヒール草も栽培して商人ギルドに売ります。代金はメメロンと同じにしてください」

「レン様。ありがとうございます。どうしてもヒール草の高品質以上のものが手に入りにくいのが現状です。このヒール草を定期的の販売していただけるなら、これで多くの方が救われることになるでしょう」

「今後ともよろしくお願いします」


レンは、屋敷に戻ったら早速ヒール草の畑とメメロンの畑を増やすことを考え始めていた。

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