第22話 植物創造

精霊の森の中では、レンが作り出した白銀のウッドゴーレムを、精霊達が変わる変わる交代で乗り移り遊んでいた。

白銀のウッドゴーレム5体は風と森の大精霊のシルフィーに預けてある。

シルフィーの目の届く範囲で好きなように使ってもらっている。

精霊の森には多くの精霊もいるし、さらに白銀のウッドゴーレムを置いておけば大丈夫だろうと思う。

精霊の森にいる間に、スキル【木】の派生スキルをいくつか試してみることにした。

まずは、ユグから貰った世界樹の種を植えてみる。

穴を掘るための道具はないが、せっかく土魔法を貰ったから土魔法も練習がてら使うことにする。

種が大きいから直径20センチ、深さ50センチほどの穴を土魔法で掘ることにした。

イメージして土魔法を発動すると綺麗に穴が出来上がった。

そこに世界樹の種を1つ入れて、土魔法で埋める。

次に派生スキル‘’木と森と大地の恵み‘’を発動させる。

一度発動すれば成長率400%アップの状態が5日間続く。

発動の時に大きくなり過ぎずに、周囲の木と同じ高さになるようにイメージする。

世界樹を埋めた場所を中心に白い光を放つ魔法陣が光る。

ゆっくりと芽が出てきた。

発動させた感覚からして、5日で周囲の木と同じ高さまで成長するようだ。

どうやら複数の世界樹の木を作っておけば、もしもエルフの国の世界樹がダメになっても、ユグがこちらに移って来れるようだ。

本宅と別荘みたいなものなのかもしれん。

帝都とヨーク領の屋敷の庭でも育ててみよう。


次は植物創造を試してみる。

何を作ろうかと考えていると


『まず、他にはあるけど、ここに無いものを作ってみたら』


ユグからアドバイスをもらう。


『なら、ポーションの原料になるヒール草を作ってみよう』


何も生えていない場所にヒール草を作り出すためにスキル【木】の派生スキル‘’植物創造‘’を発動させる。

ヒール草をイメージして、効能を考えるようにする。

大地に緑色の光を放つ魔法陣が現れ、魔法陣の光が収まると草が一株生えていた。

その草を神眼で見てみる。


ヒール草

品質:

 超最高品質

効能:

 ・スキル植物創造で作り出された世界最高

 品質のヒール草

 ・このヒール草を使えば最高品質の各種

 ポーションや薬が製作可能

補足事項:

 ・薬師や錬金術師にとって垂涎の的

 市場に出せば価値は計り知れない


何も無いところに確かにヒール草はできたが、品質がとんでもなく高品質だ。

これは気をつけないと大騒動になりそうだ。


『レン。果物を作ってよ』


ユグが果物を作って欲しいと言い出してきた。

何が良いだろうと考えてみる。

似た果物は多くある。

そういえばメロンを見た記憶が無い。

よし、メロンを作ってみよう。

しっかりと緑の果肉のメロンを形と大きさ・味をイメージしてみる。

その状態でスキル‘’植物創造‘’を発動する。

大地に緑色の光を放つ魔法陣が描かれる。

やがて魔法陣の中心に植物の芽が出て来た。

さらにそこに派生スキル‘’木と森と大地の恵‘’を発動させる。

白い光を放つ魔法陣が発動する。

光が収まると大人の背の高さまで一気に成長した木が立っていた。


『えっ・・木・・・メロンの木???この世界のメロンは木でできるの???』


よくみると枝に3センチほどの小さなメロンの実によく似たものがいくつもついている。

神眼で調べてみる。


メメロンの木

品質:

  高品質

効能・味:

 ・枝に実る果実はこの世界で果物の王様

  と呼ばれることになる

 ・この果実の緑の果肉が持つ芳醇な香り

  と甘さは全ての人を虜にする

 ・一口食べれば幸せな気持ちになり嫌な

  ことを忘れる

 ・魔力を少し回復させる働きがある

補足事項:

 ・市場に流通させれば全ての人々を虜に

  する

 ・枝についている分の実は、あと3日ほ

  どで収穫可能となる


この世界ではメメロンと呼ばれることになるのか、しかも実が木にできる。


『レン。これは何の果物なの』

『これはメメロンという果物さ。あと3日で収穫できるようになるらしい。とても美味しい果物だよ』

『やった〜。3日後に収穫だ。みんなで食べてみようよ』

『そうだね。3日後が楽しみだ』


世界樹の精霊ユグは大喜びではしゃいでいる。


メメロンの木で俄然やる気が出てきた。


『普通、木や植物に実ることがないものでもできるのかな』

『試してみれば良いじゃない』

『それもそうだな。う〜ん・・よし、やってみるか』


木や植物に実ることのないものを想像する。

その状態でスキル‘’植物創造‘’を発動する。

大地に緑色の光を放つ魔法陣が描かれる。

やがて魔法陣の中心に植物の芽が出て来た。

さらにそこに派生スキル‘’木と森と大地の恵‘’を発動させる。

白い光を放つ魔法陣が発動する。

光が収まると大人の背の高さまで一気に成長した木が立っていた。


『お〜成功だ』


枝には透明な球体の膜に入ったパンがあった。

念のため神眼で確認してみる。


パンの木

品質:

  超高品質

効能・味:

 ・世界最高級のコッペパンが実る。

 ・フカフカで柔らかくそれでいて香ばし

  く口に入れた瞬間あまりの美味しさに

  誰もが絶叫する。まさに神々のパン!

 ・このパンを食べてしまうと他のパンを

  食べることができなくなってしまう

 ・免疫力を強化して病気にかかりにくく

  なる

補足事項:

 ・あまりの美味しさのため市場に流通さ

  せることは危険

  パンを巡り争いが起こる恐れあり

 ・既に収穫可能


神眼にはとんでもないことが見えている。

美味しすぎて絶叫は分かる。

美味しすぎて食べたら他のパンが食べれないも分かる。

美味しいパンをめぐり争いが起きるとは?

しかも美味しすぎて市場に流通させるのは危険とは一体。


『やりすぎたかな!しかし、たかが美味しいパンが危険とは一体なぜだ?』

『レン。食べれるなら食べてみようよ。良いでしょ』


世界樹の精霊ユグが食べたそうにしている。


『そうだな。作ってしまったのだから食べてみるか』


パンの木の枝に透明な球体の膜に入っているパンの実を一つ取る。

その瞬間、透明な膜が破れる。

そこから立ち上る香りは、まるで出来立てのようなパンの香りがしてくる。

その香りはとても香ばしく魅惑的だ。

その香りを嗅ぐだけで涎が溢れて止まらない。

ユグもパンの実を一つ手にとる。

当然、パンの香ばしい香りが立ち込める。

レンはパンを一口食べる。

その瞬間、あまりの美味しさに思わず絶叫してしまった。

今まで食べたパンとは比べ物にならない美味しさだ。

無心になってパンを食べている。

そして気がつくと手に持っていたパンは無くなっていた。

レンとユグはしばらく呆然としていた。


『これは本当に争いが起こっても不思議じゃない。これほど美味しくて危険なパンがあるのか』

『レン。これは美味しすぎるよ』

『このパンの木は他に出せないな。本当に大騒動になる。少し品質を落としたものができなければパンの木はここ以外に置けない』

『やった〜!ここにあるなら毎日食べれるよ』


ユグは1人ご満悦だ。

やはりここで色々試してみる方がいいなと1人考え込むレンであった。

そして、3日後に収穫されたメメロンを食べたら再び美味しさに絶叫したのであった。

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