第21話 待ち焦がれていた者達

エルフの王宮では,ガルム達は急ぎ女王の前にやってきた。


「ガルム。何が起きた」

「女王様,まずはお人払いを」


女王ルミスの横にいた宰相が顔を顰める。


「私にも言えないのか」

「ノトス様に女王様以外話すことを禁じられました。話せば世界樹の精霊様がこの地から出ていくとノトス様が明言されました」

「なんだと」


世界樹の恵みは,この国を支える重要な存在。

世界樹の葉は,重要な魔法薬の材料となり,世界樹の魔力がこもっている滴はエルフの国特産であるハイポーションの原料ともなっている。


「宰相。すまんが下がってくれ」

「分かりました」


宰相は渋々部屋から出ていった。


「さて,ガルムよ。何があったのだ」

「我々が精霊の森の中層域に差し掛かったところで多くの精霊達とノトス様に先に進むことを禁じられました」

「ノトスと精霊達か」

「何が起きているのか教えてほしいと粘ったのですが怒りをかう結果になり,そこにイグ教徒が現れ精霊達と戦いとなりました」

「イグ教徒だと,邪悪な呪術を使う奴らか」

「はい,奴らは呪いの漆黒の槍を撒き散らして森を闇に染め上げて呪いビトを作り出し,精霊達との戦いは一進一退となり,そこに銀の仮面を被った子供が現れました」

「銀の仮面の子供?」

「はい,銀の仮面を被った子供に全て精霊達が片膝をつき,まるで主に対する姿勢を見せました」

「精霊達が礼を尽くすだと,自由奔放で王族であろうと歯牙にも掛けない者達が・・・」

「さらに,その銀の仮面の子供は,見たこともない氷魔法と白銀のゴーレムを使いました」

「見たこともない氷魔法と白銀のゴーレム?」

「浄化の力を持った氷魔法です」

「馬鹿な,氷魔法に浄化の力は無いぞ」

「ですが,目の前で使われたアイスランスは呪いビトを浄化して見せました。氷の中級魔法ブリザードで森に撒かれた闇の呪いを浄化。その時,イグ教徒は何かに気がついたようですがそれを話す前に凍結して死にました。ブリザードの威力も異常です。我々の知るブリザードの数倍の威力があります」


女王ルミスは何か考え込んでいた。


「通常の魔法が浄化の力を持つ・・そうか・・・そうだったのか・・・」

「何かお分かりに」

「分かったことがあるが,それを口にすることはできぬ。もしも私の考えた通りなら精霊達の態度も分かる。そうか,その時が来たのか」


女王は玉座に深くもたれかかりしばらく黙り込む。


「エルフ達は今まで通り精霊の森の中層域から先に入ってならぬ。おそらくそこから先の極秘の道は閉鎖されたことだろう。今まで通りなら何も変わらぬ。問題ない。良いな」

「はっ」

「下がって良い」


全てエルフが部屋から出ていき,1人女王だけが残された。

女王ルミスは遮音の魔法を発動させた。


「ノトス。いるんだろう」

「よく分かったな」


風の精霊ノトスが現れた。


「これでも契約者だよ。それよりも現れたんだろ・・使徒様が。普通の魔法が浄化の力持つなんて使徒様以外ありえないよ。事前にもう少し説明して欲しかったよ」


ノトスはゆっくり頷く。


「皆が二千年間待ち続けたのだ。あの方が再び現れることをひたすら待った。二千年前に全ての者達を守るために戦い続け倒れた彼の方を・・・」

「そっくりだったかい」

「変わらんよ。彼の方は。会えば驚くぞ」

「二千年か・・・長かったね。私も彼の方に再び会いたくて,エルフの秘術を使い必死に生き延びてきたよ。もう無理かと思っていた所だった。これでひと目会えればもう思い残すことは何も無いね」


女王ルミスは穏やかな笑みを浮かべていた。


「ユグ様は抱きついて離れようとしなかったぞ。時間があれば常にしがみついて離れようとしない」

「私もそうしたいが,流石に嫌がるだろうね。二千歳の婆ちゃんじゃ」

「ハハハハ・・・しがみついてみれば良いじゃないか。使徒様もまだ子供だ。ウィン様もシルフィー様も頭を撫で回していたぞ」

「その手があったか・・・」


穏やかな笑顔で2人は話しあっていた。



精霊の森の奥深くにある湖の辺りに1人の老人がやってきた。

長い口髭を蓄えているが体つきは筋肉質であることを感じさせる。

風と森の精霊シルフィーがその老人に気がついて近寄る。


「よお,寝坊助ジジイ。土の大精霊ノームは寝坊助だからな。やっと目を覚ましたのかよ」

「精霊の森の中でドカンドカンとやらかせば目も醒めるわ」

「ハハハハ・・・やっぱそのくらいでないと目が覚めんかよ」

「それで,派手にやらかしたのは誰じゃ」


シルフィーが指差す先を見ると,ユグが抱きついた状態で神像を作り始めていたレンがいた。


「もしや・・・使徒様か」

「そうだよ」

「そうか・・・そうか・・・ようやく」


無骨な土の大精霊の目から一筋の涙が流れていた。

土の大精霊ノームはゆっくりとレンの方に歩いていく。

そして,レンの横に座り込む。

座り込んだノームにレンに抱きついているユグが気がついた。


「あ,寝坊助ノームだ」

「ユグ。誰が寝坊助じゃ」

「ノームのことだよ」

「相変わらずけずけと」

「ずけずけ?正直なだけ」


気がついたレンが神像作成を途中でやめて横を向く。


「どなたですか?」

「土の大精霊ノームと言う。よろしくな」


レンの頭を撫でる。

頭を撫でられることはもはや諦めているレン。


「こ・・こちらこそよろしくお願いします。レンといいます」

「儂の加護を与えた。存分に使ってくれ。呼んでくれたらどこでも助けに行くぞ」

「ユグが先だよ」

「ハハハハ・・・ならその時は一緒に助けに行こう」

「いいよ〜」


レンの契約精霊に賑やかな精霊がまた1人加わることになる。


氏名:レン・ウィンダー

年齢:7歳

種族:ヒューマン(???)

職業:ウィンダー侯爵家当主

   神像職人

状態:良好

スキル:

  木 Lv7

    ・木製品製作 【Ⅶ】

    ・魔力吸収  【Ⅲ】(MAX)

    ・木と森と大地の恵み【Ⅵ】

     (木と森の恵み【Ⅴ】から木と森

     と大地の恵み【Ⅵ】に変化)

    ・ウッドゴーレム

    ・神像作成

    ・植物創造

  生活魔法

  身体強化Lv3

  魔力操作Lv5

  水魔法Lv 3

  氷魔法Lv 4

  風魔法Lv 1

  土魔法Lv1 (NEW)

レアスキル:

  神眼(隠蔽中)

  剣聖Lv4(隠蔽中)

  全魔法適正(隠蔽中)

  魔力回復量UP Lv4(隠蔽中)

  全状態異常耐性Lv3(隠蔽中)

  隠蔽魔法Lv4 (隠蔽中)

  神聖魔法Lv4 (隠蔽中)

  時空魔法Lv3 (隠蔽中)

   収納魔法 Lv3

   ルーム  Lv3     

称号:

  慈母神アーテルの使徒

  ククノチの加護 

  木と森の精霊たちの寵愛

  地母神アーテルの神像職人

  水の大精霊ウィンの加護

  風と森の大精霊シルフィーの加護

  世界樹の精霊ユグドラシルの加護

  土の大精霊ノームの加護(NEW)

補足事項:(神眼保持者のみ閲覧可能)

  木と森と大地の恵み【Ⅵ】

   木や森に魔力を与え一時的に成長を促進。 

    成長力400%アップ。効果は5日のみ。

   荒廃して痩せこけた大地を魔力により

   豊穣なる大地へと変えることができる。

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