第18話 精霊達の聖地

水の大精霊ウィンの能力の一つに,精霊達の聖地と言える場所と水の精霊のいる場所に瞬間移動できる転移というものがある。

水の大精霊の正式な契約者であれば一緒に転移できるそうだ。

目の前には深い森と清涼な雰囲気に満ちた湖がある。

レンは白いローブを纏いウィンと共に湖の辺りに立っていた。


『ウィン。ここは何処』

『ここは帝国北西部の先。エルフの国の山中にある湖の辺りになる。まだ誰も入り込んでいない精霊達の聖地みたいなものだ。あえて言えば精霊の森とでも言うべきかな。外周部には、たまにエルフ達が薬草を取りに来ているみたいだけど,奥深くまでは入ってこない。半径300km以内には人もエルフも魔族もいない』

『へえ〜こんな場所があるんだ』


小さな精霊達がちょこまかと動き回っている。

突如、ウィンとの会話に割り込んでくる声がある。


『ヘェ〜珍しいね。ウィンがここに来るなんて。その子が噂のアーテル様の使徒様ですか』

『そうだよ。シルフィーここにおいでよ』


ウィンが呼ぶと,50センチほどの大きさの羽根が虹色に輝く蝶がやってきた。

虹色の蝶は光包まれる。光が収まるとそこに1人の少女が立っていた。

緑色の髪。薄い緑色のドレス,青い瞳。


『風と森の大精霊シルフィーと申します。2千年ぶりの使徒様。お会いできて光栄です』

『レン・ウィンダーと言います。よろしくお願いします』

『私のことは,シルフィーと呼んでください』

『シルフィーさんよろしくお願いします』

『さんは不要です。シルフィーだけで良いです』


ジッと見つめられてしまう。


『は,はい。シルフィー・・よろしく』

『はい,レンよろしく』


シルフィーさんが嬉しそうにしている。


『ところでここには何をするために来たのかしら』

『レンの魔法の訓練さ』

『威力の大きなものは遠慮して欲しいな。大きな音や振動を起こす魔法を放てば,調査のためにエルフ達が森の奥にやって来て面倒臭いから』

『彼らは,ここで悪いことはしないだろう』

『ウィン。確かにエルフ達は悪さは何もしなけど,面倒臭いのよ。あまりにも崇めるから鬱陶しいの,だから彼らの相手は中級精霊や初級精霊に任せている』

『ハハハハ・・・彼らは仕方ないだろう。シルフィーが姿を見せたことは無いと聞いているから放っておけばいいじゃないか』

『姿を見せないけど,奥まで入ってこられると嫌なの』

『大きな魔法は使わないよ。ここでは最初時空魔法の練習と氷の初級魔法の練習をする。慣れてきたらもう少し奥で練習をするよ』

『分かった。なら,せっかく使徒様であるレン君がここに来てくれたのだから,私の加護も与えておきます』


緑色の輝きが風に乗ってレンの体を包み込む。

そしてしばらくしてその輝きはレンの体に吸い込まれるようにして消えていった。

神眼で調べると称号に風と森の大精霊の加護が追加されている。

加護のお陰でスキル【木】がレベルアップし,さらに,風魔法が与えられていた。

それと,種族になぜか【?】がついてしまった。


氏名:レン・ウィンダー

年齢:7歳

種族:ヒューマン(?)

職業:ウィンダー侯爵家当主

   神像職人

状態:良好

スキル:

  木 Lv6(1up)

    ・木製品製作 【Ⅵ】

    ・魔力吸収  【Ⅲ】

    ・木と森の恵み【Ⅳ】

    ・ウッドゴーレム

    ・神像作成

  生活魔法

  身体強化Lv3

  魔力操作Lv4

  水魔法Lv 2

  氷魔法Lv 2

  風魔法Lv 1 (NEW)

レアスキル:

  神眼(隠蔽中)

  剣聖Lv3(隠蔽中)

  全魔法適正(隠蔽中)

  魔力回復量UP Lv 3(隠蔽中)

  全状態異常耐性Lv3(隠蔽中)

  隠蔽Lv2(隠蔽中)

  神聖魔法Lv3(隠蔽中)

  時空魔法Lv3(隠蔽中)

   収納魔法Lv3

   ルームLv3     

称号:

  慈母神アーテルの使徒

  ククノチの加護 

  木と森の精霊たちの寵愛

  地母神アーテルの神像職人

  水の大精霊ウィンの加護

  風と森の大精霊シルフィーの加護(NEW)

補足事項:(神眼保持者のみ閲覧可能)

  ※異世界転生者

  ※木製品製作 【Ⅵ】

   魔鉄の如き強さと硬さと特性を持つ

  ※魔力吸収  【Ⅲ】

   木と森から魔力をもらうことができる。

   魔力総量の全回復(制限解除)

  ※木と森の恵み【Ⅳ】

   木や森に魔力を与えることで一時的に成長を促進。 

   成長力100%アップ。効果は5日のみ。

  ※神像作成

   神の力を宿した神像を作成できる。

   作成した神像は、魔を祓いその空間を清浄化。

   込める神力と像の大きさで効果範囲は変わる。


ーーーーー


エルフの国ポーワス

王宮の庭にひときわ高くそびえ立つ巨木があった。

精霊の住む世界樹の樹である。

世界樹の精霊が久しぶりに姿を見せた。

普段滅多な事で姿を見せずに,世界樹の中で暮らしている精霊である。

基本,周囲のことには関心が無い。

エルフの王宮に世界樹は置かれ,エルフが守っているが世界樹の精霊はエルフに対しても関心が薄かった。

エルフの国を治める女王ルミスはエルフの秘術とユグドラシルの恵みで2千年生きてきた。

女王は宰相を引き連れて,慌てて世界樹の精霊の下に駆け寄る。


「ユグドラシル様如何されました」


少し濃い緑色の髪をした青い瞳の少女がいた。


「お姉さまのシルフィーのところに行くために少し出かけてきます」


それだけ言うとあっという間に精霊の森の奥へと飛んでいってしまった。


「お待ちください・・・」


世界樹の精霊が樹を離れるなどとは,女王ルミスは聞いたことがなかった。

唯一世界樹の精霊ユグドラシルが関心があるのは,風と森の大精霊であるシルフィーの事と他の大精霊達だけ。

女王ルミスは急いで近衛師団隊長を呼びだす。


「ルミス様如何されたのです」


近衛師団団長のガルムが尋ねる。


「ユグドラシル様が少し出かけると言い残して,精霊の森の奥へ飛び去ってしまわれた」

「はぁ?」

「出かけてくると言って精霊の森の奥へと飛び去った」

「????」


世界樹の精霊が出かけてくると言い残して飛び去るなどとは初めてのこと。

ガルムも聞いたことが無かった。


「森の中で何か起きているのかもしれない。至急森の奥を調べよ」

「森の奥というと,精霊の湖でしょうか」

「そうであろう」


女王の返事を聞き,少し困った表情をするガルム。


「・・・大精霊様は我らがそこに近づくことを嫌がると聞いております」

「それとなく様子を見てくればいいのだ」

「ルミス様の契約されている風の中級精霊ノトス様にお聞きになられたら如何でしょう」

「返事をしてくれないのよ。今忙しいから後にしろと言われ,話を聞いてくれないのよ。こんな事初めてよ」


女王ルミスは世界樹の精霊ユグドラシルが飛び去った後に,自らの契約精霊であるノトスを何度も呼んでいるが,最初に‘’後にしろ‘’と言われその後返事がないままであった。

これも初めの事態であった。

女王は玉座に座り込み深いため息をつく。


「途中で追い返されるかもしれませんが,それでもよろしいですか」

「それでも構いません」

「分かりました。斥候や森の中での移動を得意とするもの達を送り込みましょう」


エルフ国から急遽精霊の森への調査隊が派遣されることになった。

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