第17話 ルナの水魔法教室

「僕が水の大精霊ウィンだよ〜」

少女の姿をした水の大精霊がお爺さま・お婆さまの前で、なぜか決めポーズの姿を見せていた。

『ウィン。あえて言わせてもらうけど、大精霊としての威厳が全く感じられない。いいのかそんなのりで、本当にいいのか』

『たまにはこんなこともいいんじゃないかな。基本僕ら精霊は自由に生きているからね。人間がどう思おうと関係ないね』

水魔法で屋敷を水浸しにした後、今後水魔法の本格的な訓練のためには正直に話しておいた方がいいということで、お爺さまとお婆さまに水の大精霊ウィンを紹介していた。

水の大精霊ウィンは、2人にも姿を見えるようにして、2人にも念話で話しかけていた。

「ルナと申します」

「知っているよ。昔からよく青の湖で水魔法の練習をしていた姿を見ていたからわかるよ」

「本当ですか」

お婆さまは大感激の様子だ。

元々水魔法の才能があり、もしかしたら精霊の加護がもらえるかもしれないと、青の湖の周りでよく練習していたそうだ。


お婆さまのスキル構成をこっそりと神眼で見てみる。

スキル:

  生活魔法

  水魔法   Lv6

  氷魔法   Lv4

  気配察知  Lv3

称号:

  水の大精霊の慈愛

  帝都の魔王の使役者

特記事項:

  エルフの血の微活性


【水の大精霊の慈愛】についてウィンにこっそりと聞いてみる。


『お爺さま,お婆さまに内緒で聞くけど,【水の大精霊の慈愛】はどんな意味があるの』

『精霊の寵愛や加護と付けば契約者と同じ意味。だけどそこまでじゃ無いけど少し加護を与える場合,大精霊たちは慈愛を与えるのさ。中級や初級精霊には無い加護だね』

『慈愛が付くとどうなるの』

『水魔法や氷魔法の効率が20%アップかな!つまり,より少ない魔力量で魔法を使えて,水を扱いやすくなるということだよ。使う魔力量を変えなければその魔法の威力は20%アップということになるね』

『お婆さまは知ってるの』

『・・・そういえば・・言ってないね。姿を見せることもないからね』

『この際だから,ウィンから教えてあげてよ』

『そうだね。この際だ,いいよ。あ・・そうそう,ルナのもう一つの称号が気になるだろう』


意味深な笑顔をする水の大精霊ウィン。


『何となくだけど,想像がつくよ』

『ハワードと婚約してから付いた称号だね。ハワードは,その頃から完全に尻に敷かれてたね。ルナがいたからハワードは公爵として力を振るうことができたんだよ。ルナがいなかったらスペリオル公爵家は,間違いなく消えていたね』

『お爺さまの黒歴史を考えたらあり得るね』


ウィンがお婆さまに【慈愛】の加護のことを教えてあげたら,感激して涙を流していた。


お爺さまが恐る恐る声をかける。


「ハ・・ハワードと申します」

「ふ〜ん!僕の青の湖に【超爆炎】魔法を打ち込んだ3人組の1人か!」

「その節は申し訳ございませんでした」


ハワードは深々と頭を下げた。


「ルナに感謝しな。ルナがいなかったら永遠に水の牢獄に閉じ込めたままにしていたはずだ」

「分かっております」

「まあいいか。これからレン君の水魔法訓練をしていく。基本の範囲はルナが教えておくれ。ルナのやり方で構わないから。そんなに時間はかからないと思うけど、基本は大切だからしっかりとお願いね」

「承知しました」

「それが終わったら僕が直接指導するからね。そうなると時々レン君と僕で、しばらく留守にするときもあるから了解しておいて欲しい」

「「はい」」

「それと僕のことは、レンを守るために必要な人以外には言わないようにね」

「「はい」」

「レン君。基本の範囲は全て重要だよ。しっかり覚える事。基本を疎かにする者は魔法使い失格だからね」

「わかりました」

レンは少し緊張した面持ちで答えた。

『2週間ほどしたらまた来るからね。しっかり練習してくれよ。くれぐれも、魔法を暴走させないように!』


水の大精霊ウィンは帰っていった。


「レン。さっそくだけど始めるわよ」

「お婆さま、よろしくお願いします」

「イメージが大切なのは分かっているでしょ」

「はい」

「イメージが苦手な人は詠唱を使ってイメージが不足する分を補助するの、レンが屋敷を水浸しにしたときは滝をイメージしたと言ったでしょ。あなたはイメージする力が豊かだから無詠唱の才能がある。詠唱は抜きでイメージで魔法を発動させてみましょう」

「はい」


ルナは空の桶とガラス製のコップに水の入ったものを用意させた。


「使う水をその時々でしっかりイメージしなさい。今回は少しずつ水を出す訓練です。このコップから少しづつ桶にこぼれる水をよくみていなさい」


ルナはコップを傾け、水を少しづつ桶に移していく。


「レンは、スキル【木】のお陰で既に魔力を木製品に変換することが出来ていますから、問題なくできるはずです。後はそのイメージをどの様にコントロールするのかですよ。さあ、やってごらんなさい」


レンは、桶の前で手を伸ばす。


「レン、失敗を恐れないこと。大丈夫ですよ」


レンは、先ほどのコップから桶に注がれた水をイメージして、自分の掌から水がゆっくりと流れ出ていく姿をイメージしていく。

そして、心の中で‘’ウォーター‘’と唱えて水の流れをイメージした。

先ほど見た水の量と同じ量と速さで水が少しづつ桶に注がれていく。


「レン。上手くいっている。それを維持しなさい」

「はい」

「今日はこれを何度も繰り返して体に覚え込ませなさい」


桶が満タンになったら、すぐに桶を変えて再び水魔法で水を作り出していく。

レンが魔力切れになったことで今日の練習は終わりとなった。




「レン。今日はさらにコントロールする力を磨きましょう」


ルナは5センチほどの水球を一つ作り出す。

その水球を目の前に浮かせた状態で維持する。

次にその水球を自分の周いをゆっくりと動かして周回させはじめた。


「これは、他の魔法使いはやらないの。というか出来ないわね。私独自の練習法なの」

「お婆さま独自のですか」

「そうよ。これが上達すると、水を自分の手足の如く扱えるようになるのよ。これがさらに上達するとこんなこともできる」


5センチの水球が徐々に変化を始める。魚の姿に変わりルナの周いを回り始める。


「魚だ〜。すごい」

「慣れるとこれをいくつも同時にできる様になるのよ」


レンもさっそく水球を作り出すために練習を開始する。

出来上がるのは歪んだ形の水の塊。

何度も何度も繰り返し作り出す。

そして2日ほど経つと水球を空中に維持できる様になり、1週間も経つと水球を周回させることができる様になっていた。

レンはいま、水の魚を空中に作り出すことに挑戦していた。

不恰好でかろうじて魚とわかるものが出来上がる。

それを消し去り、何度もイメージを修正して再度作り上げていく。

神像作成のスキルのおかげか誰の目から見ても魚と呼べるものが出来上がる。

1匹の水の魚がレンの周りを周回している。

次は魚の種類を増やしていく。

何種類か増やし海の魔物クラーケンの姿も水で作り出して周回させる。

レンは同時進行で水を使い鳥を作り始めた。

何度も作っては消し、また作り直すを繰り返す。

やがてレンの周りを水の魚と鳥が周回を始めた。

すると今度は、水の魚と鳥に動きを与えたいと考えていた。

魚は尾びれを動かし、鳥は羽を動かしている形が欲しい。

試行錯誤を繰り返し、合間合間にウォーターボールを作り的に当てることを繰り返す。

そして、2週間が経過するときには水の魚は生きているかのように尾びれを動かして、水の鳥は羽ばたきを繰り返しながらレンの周りを周回していた。

水で作られたクラーケンは複数の腕をウネウネと動かしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る