第13話 帝都散策

この大陸には12の国がある。

その国々の持つ都市の中でも最大規模を誇っているのが、帝国帝都アスラである。

ありとあらゆる人種が住んでいる都市でもある。

新皇帝就任式の後すぐにヨーク領に戻らずに、帝都の散策に出ていた。

しかし、襲撃事件もあったため10名の護衛。そして、第一皇女シャーロット様の婚約者ということで、帝都にいる間は帝国の隠密たちが密かに警護に付いている。

一般の商店などの場所や各ギルドなどを見てみたかったが、多数の護衛を連れているだけで人が逃げていきそうなため、高級商店などのある区域だけを歩くことにした。

流石に高級商店街のため、整った身なりのかたたちが優雅に街を歩いている。

その途中で香ばしい匂いがしていたため思わず足を止める。


「この香りはもしかしてコーヒー」

「レン様はコーヒーをご存知で」


サイラスは意外そうな表情をする。


「コーヒーを飲んでみたいな」

「分かりました。すぐ近くにとても美味しいコーヒーを出してくれる名店がございます。そこに行きましょう」


サイラスに案内されて路地裏に入っていった。

少し進んだところにそれらしき店があった。

小さな看板しかなく、うっかりしていたら通り過ぎてしまいそうな店だ。

小さな看板には【コヒ】とだけ書かれていた。

ドアを開けるとコーヒーの香ばしい香りに包まれる。

テーブル席が3つ、カウンター席が5つの小さなお店。

品のいい老紳士がカウンターの奥に立っている。


「おや、サイラスさんお久しぶり」

「今日は、うちの若き当主様がコーヒーが飲みたいと言われたのでここにお連れした」

「もしかしてハワード様のお孫様ですか」


レンは前に出た。


「レン・ウィンダーと申します」

「ようこそおいで下されました。店主のヘラルドと申します。ここはハワード様もおいでになります。どうぞごゆっくりしてください。此方にどうぞ」


奥のテーブル席に案内される。

暫くするとコーヒーと小さなリンゴパイが出てきた。

コーヒー用にミルクと蜂蜜が付いてきた。


「このミルクと蜂蜜は」

「ミルクは黒山羊の物を使用しております。蜂蜜はハニービーの蜂蜜でございます。パイのリンゴは今朝入荷したアポーの実でございます」


ミルクは、黒山羊のミルクで高級品。

蜂蜜は、貴重なハニービーの蜂蜜だ。

どちらもあまり市場に出回らない品。

パイに使われているリンゴは、これもとても美味しくて人気があり、流通量の少ないアポーの実。

甘みが強く尚かつほどよい酸味があるリンゴだ。

コーヒーにミルクとハニービーの蜂蜜を入れて飲む。

コーヒーのほのかな苦味にミルクのコクと蜂蜜の甘みが合わさりとても美味しいコーヒーとなっている。

まさに至福の一杯。

パイを食べるとパイのサクサク感にリンゴの酸味と甘みと香りが広がり絶品だ。

ちなみに代金は全て合わせて銅貨3枚。

貨幣の価値としてはざっくりとこんな感じだ。

黒貨1枚で約1億円(ほぼ市中では見かけない)

白金貨1枚で100万円(ほとんど商人達や貴族達が使う)

金貨1枚で約10万円

銀貨1枚で約1万円

銅貨1枚で約1000円

鉄貨1枚で約100円

小鉄貨1枚で約10円


「美味しい」


レンが驚きの声をあげる。

しばらくコーヒーとパイを堪能し、大満足で店を後にする。


「レン様他に行きたい所はございますか」

「う〜ん・・・そうだ。青の湖はどうかな。とても美しいと聞いたのだけど、まだ見たことが無いから」

「青の湖でしたら近いです。ご案内いたしましょう」


ーーーーー


帝都の中に開発されぬ森と湖が残っている場所がある。

人々は水の精霊の住む湖として昔から大切にしてきていた。

湖と森を汚さぬように人々は気を付けて大切にしている。

そして、その小さな湖は幻想的なまでに青く輝くために、人々はいつからか青の湖と呼んでいるのであった。

20分ほど歩くと帝都とは思えぬほどの木が生い茂った森にやってきた。


「帝都の中にこれほどの森があったんだ」


森の中をどんどん奥に進んでいくとやがて湖が見えてきた。

湖面が陽の光を反射して青く光輝いている。


「うわ〜凄い」

「これほどまでに青く輝くのはここだけです。精霊のお陰だと言われています」

「ヘェ〜こんなにも青く光り輝くの」


湖の湖面の青い輝きが一層激しくなる。

青い光の輝きがレンを包み込む。


『そうだよ。僕がいるから青く輝いているのさ。念話で話しかけているから声に出さなくてもいいよ』


突然、頭の中に声が響いてくる。


『君は誰、どこにいるの』

『僕は水の大精霊』


湖の上に立っている自分と同じくらいの女の子がいる。

白いドレスを着て、長く青い髪、青い素肌、深く青い色の瞳。


『僕はレン。君は』

『水の大精霊ウィン。ついでに言っておくけど君以外には僕の姿は見えないから、他の人に話さないようにね』

『わかったよ。でもなんで僕に姿を見せたの』

『君が慈母神アーテル様の使徒様だからだよ。アーテル様の使徒様が現れたのは2千年ぶりになるかな』

『エッ・・二千年ぶりなの』

『そうだよ。それに君の魔力はとても気持ちいいのさ。さらに君の魔力にはアーテル様の神力も混じっている。君が望めば多くの精霊が手を貸してくれる。とりあえず僕の加護を与えたから用があれば呼んでね』

『水の大精霊ウィンの加護?』

『後でステータスを見てみてね』

『どんなことができるの』

『水の精霊だから、水に関わることの祝福だね。具体的には水魔法とその発展系の氷結魔法を与えておいたから、練習しなさいね。練習しなければ使えないよ』

『呼んでねと言っていたけど、どこでも大丈夫なの』

『そうね。既に僕と繋がっているから基本どこでも大丈夫だよ。できたら君の屋敷に僕の像をつくて置いてもらえると嬉しいかな』

『ウィン。ありがとう。必ず作っておくよ』

『じゃあね』


水の精霊ウィンの姿消えると湖面の輝きも普通の状態に戻っていた。


氏名:レン・ウィンダー

年齢:7歳

種族:ヒューマン

職業:ウィンダー侯爵家当主

   神像職人

状態:良好

スキル:

  木 Lv5

    ・木製品製作 【Ⅴ】

    ・魔力吸収  【Ⅲ】

    ・木と森の恵み【Ⅲ】

    ・ウッドゴーレム

    ・神像作成

  生活魔法

  身体強化Lv3

  魔力操作Lv3

  水魔法Lv 1 (NEW)

  氷魔法Lv 1 (NEW)

レアスキル:

  神眼(隠蔽中)

  剣聖Lv3(隠蔽中)

  全魔法適正(隠蔽中)

  魔力回復量UP Lv3(隠蔽中)

  全状態異常耐性Lv3(隠蔽中)

  隠蔽Lv2(隠蔽中)

  神聖魔法Lv3(隠蔽中)      

称号:

  慈母神アーテルの使徒

  ククノチの加護 

  木と森の精霊たちの寵愛

  地母神アーテルの神像職人

  水の大精霊ウィンの加護(NEW)

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