第11話 極秘謁見

巨大な城壁が見えてきた。

広大な帝都を守る城壁である。

巨大な石を大量に積み上げられて作られているのように見える。


「お爺さま,大きな城壁が見えてきましたよ」

「あれこそ帝都を守る城壁だ」


城壁は左右にどこまでも伸びており,終わりが見えなかった。


「どうやってこんな大きなものを作ったの」

「多くの土魔法使いたちを集めて作り上げてきたのだ。全てが土魔法では無く人力の部分も多くあるが、かなりの部分を土魔法で行なって作られたのだ。現在は拡張工事中だな」

「エッ・・帝都はまだ大きくなるの」

「それだけ発展していると言う事だよ」


馬車は,貴族専用のゲートを通り帝都へと入っていく。

馬車の窓から見える帝都は,多くの人々が行き交い,多種多様な民族と種族が行き交っている。

人族,獣人,魔族の姿も見える。

レンは窓に映る帝都の光景に釘付け状態。

馬車は石畳の道をゆっくり進んでいく。


「お爺さま。帝都には多くの種族がいるのですね」

「そういえばレンは初めてだったな。この帝都には,全ての民族・種族がいるぞ。ただ,珍しいからと指差して騒ぐような失礼な真似はするなよ」

「はい」


行き交う人々はグレートホースが珍しいようで,多くの人々が馬車を見ている。


「多くの人々がこちらを見ていますよ」

「グレートホースは珍しいからな。儂らが馬車で帝都に来るといつも多くの人の視線を受けることになる」


馬車は,帝都奥の城に向かて進んでいる。


「お爺さま,このままお城に向かうの」

「本来なら帝都にある儂らの館によってから行くのだが,途中に襲撃もされているからこのまま館には寄らずに城に向かうぞ」


馬車はしばらく走り、城に到着した。

予め指定された場所に馬車を停めると出迎えの者達がやってきた。


「ハワード様お早いお着きで、道中大変だったと聞いております」

「ルイスか、わざわざご苦労。危ないところだった。陛下はおられるか」


ハワードがルイスと呼んだ男は、30後半のイケメン親父のようだ。

体も鍛えているのかかなりガッチリとしているように見える。


「執務室におられます。しかし、ハワード様ほどの方が危ないと言われるとは・・・」

「それも含めて陛下と相談だ」

「そちらがご自慢のレン君ですか」

「レン・スペリオルと申します。よろしくお願いします」

「ルイス・エバンス子爵と申します。なかなか利発な子供ですね」

「ルイスは宰相の腹心で、なかなかできる奴だぞ」

「レン君。ハワード様の褒め言葉はとても怖いのですよ・・とても・・」

「何を言う。何も企んでないぞ・・何も・・」

「それでは、到着したばかりで申し訳ございませんがこちらへ」


ルイス・エバンス子爵の案内で城の中をどんどん進んでいく。

城内は近衛騎士と思われる者達が腰に剣を差して警戒している。

時折、赤いローブを纏った人がいる。

赤いローブは魔法騎士団の印だ。

やがて一つの部屋の前で止まった。


「こちらの部屋でお待ちください」


扉を開けて中に入る。

部屋としては少し広めのようだ。

ベージュの絨毯が敷かれ、大きめのソファとテーブルが置かれている。

壁には何枚か風景画がある。

全体として落ち着いた雰囲気の部屋。

レンは少し緊張してきていた。

しばらくすると扉が開き、4人の人物が入ってきた。

2人はお爺様と同年代に感じるから陛下と宰相様だろう。

1人はルイス子爵、もう1人は誰だろう。


「待たせた。余が皇帝ジェラルド・アラステアである。余の隣にいるのが皇太子のフレッドである」

「皇太子のフレッドです。レン君。よろしくね」


30代前半のイケメンだ。人格や能力の評判はとても良いと聞いている。

銀色の髪で皇帝陛下をそのまま若くした感じだ。


「私が宰相のジェイク・ギルバードです」


慌てて貴族の礼をとる。


「ここは私的な場所だ、そこまで畏まる必要は無い。言葉も普段通りで良い。不敬などとは言わんから心配するな。ハワードのぞんざいな言葉でも罰してはいないから大丈夫だぞ。まず、座ってくれ」

「おいおい、儂の言葉はそんなにひどいか」

「ハワードはどこでもそんな言い方をするからですよ。昔からそんなですから皆が諦めているのですよ」

「それは少し言い過ぎではないか」


宰相閣下の言葉に少しむくれるハワード。

皆がソファーに座る。

ソファーに座るとメイドが紅茶を用意していく。

紅茶を配り終わると部屋から出ていった。

部屋には紅茶のいい香りがする。


「ハワード。道中襲撃されかなり危なかったと聞いたぞ」


陛下がハワードの声をかける。


「襲撃を予想して罠をかけたつもりだったが、流石にあそこまでの手練れが襲撃してくるとは思わなかった」

「ハワードがそこまで言うとは、それほどの手練れか」

「気配を全く感じさせなかった。目の前にいても気配がわずか、目を離せば気配が分からなくなるほどの相手だ。魔物の襲撃に紛れて襲ってきた。使い捨てと思うが召喚門と転移門を使ってきたぞ」

「なんだと!そこまでして襲ってきたのか」

「儂の一瞬の隙を突かれレンを背後から襲ったが、レンが背後に自らのスキルで木の盾を作り出しておいたため、襲撃を防ぐことができた。本当に危ないところだった」

「何か証拠になるものは無かったか」

「残念だが、周辺を調べたが物的な証拠は見当たらなかった」


物的証拠と聞いて神眼で見たことは、流石に物的証拠にはならないよなとレンは考えていた。


「物的な証拠がなければ、予定通りに進めよう。ジェイク」

「分かりました。レン君。襲ってきた相手の物的証拠がなければ、敵を取り除くことはできない。ならば、守りを固めるしか無い。ハワードから聞いているかい」

「は・はい。侯爵となり、お爺様が治めている領地を引き継ぎ、スペリオル家とは縁を切ることでしょうか」

「そうだね。後見人はハワード、ルナ、私ジェイクが務める。領地の運営は、直ぐに携わらなくても大丈夫だよ」

「お爺様とお婆さま、あと優秀な家人たちがやってくれると聞いています」

「手続きが終わりしだい帝国内に告示を行う。告示されたら正式な侯爵となる。早ければ2日後から侯爵だ。しっかりと学びなさい」

「少しいいかな」


皇太子殿下が話に入ってきた。


「レン君の後見人には私も名を連ねようと思う」

「皇太子殿下がですか」

「来月、父が隠居され、私が正式な皇帝となる。その時に帝国内の全ての貴族を集めることになる。その場で私の後見であることを示した方が手出しするものも出ないだろう。陛下どうですか」

「レンが良ければ構わんぞ」


大人達の視線がレンに集まる。


「あ・ありがとうごうざいます。・・よろしく・・お願いします・」


断れるはずも無く、胃が痛くなる思いをしながら承諾するレンであった。

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