人の夢

空との境界線が見えない程広い枯草の草原を割るように伸びるハイウェイを

遠くに見える町を目指して歩く


行く手を塞ぐように固まった人を掻き分けて検問所の中に入る

近くの検問所の職員が言う

「ああ君、ここはオートマタ禁止の人間専用区だよ」


腰の機械を指さして言う


「じゃあその血液判別機貸してくもらえますか?」


職員が渋々機械を渡す


渡された機械に指を入れて返した


職員が言う


「残留マイクロマシンに汚染されているが、確かに人間の血だな...」


「ね?、それで...通してもらえますか?」


「通せなくはないがその格好だと、住民が不安がるしなあ...」


「それならこういうのでどうですか?」


「頭の装甲を外してカバンに詰める」


「...」


「その顔と髪や目の色、純血の南方人か...」


紙袋を被って言う


「ですね」


「まあ人間なのは分かった、書類はいらない通してやろう

でも戦闘服は目立つから、押収品の服をあげよう好きなのを選んでいくといい」


「助かります」


そうして壁内に入った


紙袋の穴越しに中世のような街並みが見える

そのまま目的地の時計塔に向かい、持っていた古い鍵で時計塔の鍵を開ける


長いこと動いていない埃まみれの巨大な機械が目の前いっぱいに広がる


後ろから老人の声がする


「この時計塔に来るとは今時物好きな...あんた、誰じゃ」


「依頼で来た整備士ですよ」


「ほうほう...整備士とは奇遇な、実はワシも整備士だったんじゃ、

時計塔の中を見るのは久しぶりじゃがな」


「それは丁度いい、図面とか持ってます?」


「ああ、持っとるよ、明日もってこよう」


それから時計の修復を初めて二日が過ぎた


時計塔の外で休憩していると子供の集団が近寄ってくる

リーダー格の男と女が話しかけてくる


「あなた、同い年よね?それに字が読めるんだって?」


「同い年はハズレ、でも字はまあほどほどに読めるよ」


「だったら私たちに教えてくれない!」


「字を覚えてどうするの?覚えたところで、

今より酷いことになるかもしれないよ?」


「でも皆で食べていくためには必要なんです」


「分かった、でもほどほどにね」


それから暫く休憩時間に子供に字を教えた


夜中に老人が後ろか言う


「片手間に子供たちに字を教えるとは、お主は優しいな」


「責任は取りませんけどね」


「...」


時計塔の修理がもうすぐ終わる頃


いつも通り字を教えていると一人の子供が聞く


「貰った歴史の本を読んだんですが、その赤い目に黒い髪

先生って星の向こうから来た悪魔の子孫なんですか?

だからそうやって紙袋被ってるんですか?」


「まあそうだね」


周りの子供が言う


「ちょっとやめなよ!」


続けてその子供は聞く


「本には悪魔は殺さなきゃいけないって書いてあるんですが

これは正しいんですか?」


「本は本、どちらのせよそれは君が決めること

でも私と同じ容姿の人間にそうしろと書いてあって

そうする必要があるなそうした方が良い、それが賢い生き方だよ」


「...」


授業はそのまま滞りなく終わった


五日後時計塔が直った

老人が言う


「この機械の音、何年ぶりじゃろうか...」


「縛りも解けた、これで私の仕事も終わりですね」


「お主、明日には町を出るんじゃろうまた寂しくなるのう...」


「ああ...そうだ、この時計塔に入らないでください、危ないですから」


「ほうつまり」


「老朽化です、裏の湖に倒れるようにしましたが、次鐘を鳴らしたら崩れるでしょう」


「やはりそうじゃったかそれは、とても残念じゃ...」


町から出る途中見たことのある子どもが数人車に乗せられていくのを見た


「...」


そして少し頭数の減った子供の集団がやってきた


「先生、私達の選択は正しかったんですか?」


「それは君たち次第かな」


「...」


「それじゃ私は行くよ」


「先生、私達は貴方のこと、悪魔じゃないと思います」


「及第点かな」


そのまま手を振って町の外に出て、幹電池を抜き取った


「縛りが解けてない一体どういう...」


遠くで鐘が鳴り時計塔が崩れ、湖に消える様が見えた


「...」


「縛りが無くなった、これで良かったんだね」


そのまま幹電池を埋めて石を置いて墓を作り立ち去った。






























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