残夢

「じゃ、これで互い最後になるし

お互い何か言いたいことを何か言っておく?」


「いや、いい...でもアンタに一つ聴きたいことがある。

あの時何故国を裏切って南の国へ逃げた?」


「それは...どこで知ったの?」


「アタシの部隊にいた明星は電子戦型だよ

それくらい調べられるさ」


「そう、でも連合大戦の時にあなた達に言った通り

あなた達の死が私の死であることには変わりないよ」


「へえじゃあつまり、要はアイツはこんな体にするだけじゃ飽き足らず挙句、

今度は勝手に死ねというわけだ、ホント死んでも悪趣味だね、アイツは」


「...」


静かに震えた声で言う


「だったら尚更殺されてやる義理はないね、前言った通り殺してやるよ!」


兵装が展開され、銃口がこちらに向く


「そして銃を構えて言う、

でも私にはこの町に別の用事もあるし

だから今回は能力はナシでやらせてもらう」


「ああ、そうかい」


次の瞬間、腕が消え、光線が放たれ背後の丘が吹き飛んだ


「チッ致命傷は避けたか...だが仕込みのありそうな銃はこれで使えない

それにこの距離だ、さっきので数メートルは引き離したこのまま押し切れば勝てる」


石を拾い歩きながら呟く


「粒子(魔素)を使った制御できる高威力の光学式追尾レーザーか厄介だね」


そして走る


「!?早い、突っ込んでくるか。

だがこの距離なら確実に当てられるよ」


第二射が放たれようとした時

ヒュッと顔の横を石が掠める


「!?投石、だがこんなんじゃ...

これはワイヤー!」


後ろに飛んだ直後、地面が真っ二つに割れる


「クソ!地面を切りやがった」


そして金属音が響き渡る。


「これは...阻害チャフ...フン一丁前に対策してきてるってわけかい

でも私くらいの出力になるとこんなの容易に貫通できるんだよ!」


機械音が煙の向こうで響く


ガチン!


射撃兵装が吹っ飛ぶ


「クッ砲撃...じゃない...岩かシールドを抜けて来るなんてなんて速度だ」


機関砲を出して走りながら周辺を警戒する

追従するように砂煙を突き抜けて正面から突っ込んで来る姿を見る


(相手は格闘型、この口径じゃ倒せない、お互い力関係は五分五分...困ったね...)


逃げ回って時間を稼ぎ、兵装を再構築する


「流石...兵装の再構築が早いね」


「だろ、これで終わりだよ!」


即座に撃つレーザーが直撃するがまだ直進してくる


「クソッしぶといね、黒焦げでも動けるなんてとんだ化け物ね」


格闘戦に入る


「ここでも互角ね...」


「能力抜きだと私なんてこんなものよ」


至近距離でグレネードを殴り当てる


「なっ...」


爆炎の中ワイヤーに巻き取られ切断される

下半身が見える


「あーあ、装甲勝負じゃ勝てないか」


見下ろすように言う


「やっぱりあなた強いね...」


「フッアンタが能力使ってたら勝負にすらなってなかったさ」


「かもね、それと誰かいるみたいだけど?」


一歩下がって振り向いて言う


「そしてそこの隠れて見てるそこの子、もう出てきてもいいよ」


朝で会ったみすぼらしい少女が岩陰から怯えながら銃を手にして出てくる


「こ...殺したんですか?」


「まさか、私達はこの程度ではまだ壊れないよ」


足元で弱々しく答える


「そうさ...」


そして振り絞るような大きな声でいう


「いいかこの世界はクソッタレだ、でも私のようになるんじゃないよ!」


そう言うと自爆装置が起動した。


「おいアンタ最後の頼みだ」


「あの子を安全なところまで逃してやってくれ、

アタシは一人で先に逝ってアンタを待ってるよバーカ...」


「分かった」


そう言うと暴れる少女を脇に抱えて走った。


最後にポツリと言う


「弟達や家族のためとはいえ...武器でやった小遣い稼ぎのバチが当たったのかねえ...」


遠くに爆発の閃光が見え音が響いた


歩みを止め、都市からそう遠くないところに少女を下ろした


銃口がこちらに向く


「そして聞く、私が憎い?」


少女は泣きながら答える


「はい!」


手で銃口を胸に当てさせて言う


「私達にもここに急所がある

でもあなたに撃てる?」


銃を持つ手が震える


「しばらくの長い静寂が訪れ

そして膝から崩れ落ちた」


「うん、いい子だ、”人は”殺せない」


そう言って立ち去る


少女が背後から搾り出すように叫ぶ


「いつか絶対に殺してやる!」


「分かった楽しみに待ってる、もっと良い銃を手に入れたらね」


と言い次の目的地に向かった

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