瑞星のやり残し

大人の名無しさん

北の国編

違う夢

船室から顔を出して外を見る


「相変わらず辺境最大と言われるだけはある大きさだけど、

昔に比べて随分汚くなってるね」


「船頭が答える ああ...昔の戦争でな、ここら辺の人間は逃げたっきり

戦争が終わっても誰も帰ってこなんだまま、

残った奴らも頑固者か、新しく来た奴らも素性の知れない凶状持ちばかり

今じゃこの有様よ」


「ところで嬢ちゃん、昔来たことがあるのかい?」


「知らない〜」


「それにその白い髪に青い目、この辺じゃ見ないし人間じゃないじゃろう?

何処から来なさったね」


「ん〜聴きたい!?」


船頭が笑いながら言う


「ワシも職業柄、身の上話を聞くのが好きでな、ぜひとも聴かせとくれ!」


「でも言えないかな...」


「ンそうか、それは残念じゃな」


「ガタッ ってあんたそんなに身を乗り出しちゃ危ないよ」


「ヘーキ!ヘーキ!」


船から港の船着場に飛び、船着場に着地する。


「振り返って言う、それじゃあお元気で!」


「あ...ああ、嬢ちゃん気をつけてな!と遠くで船頭が言う」


それに対して振り返らず手を振って別れた


その後都市で聞き込みを始めた、そして二日の路地にて


「ねえ、君」

みすぼらしい少女が目を見開いて答える 


「えっ!?」

そして微笑みながら質問した 


「この写真の人、見たことある?」


「あえと、その人なら知ってる...

私のいる孤児院の院長...です...」


両手を握り顔を近づけて言う


「じゃあその人に伝えられる?」


目を逸らしながら少女が答える


「たぶん...できます...」


「なら約束通り瑞星が来た、この3番路地で待ってるよ、って伝えて!」


「あ...はい」


それじゃよろしく、と言って走り去る。


「何...あの子...」


そしてその夜


粗野な服を着た長髪の赤毛の女が苛立った声で言う


「来たよ、瑞星あんたがしようとしてる事は分かってるけどね」


「うん、死にに来た」


「そうかい。じゃ、お望み通り私もお前を殺す、

でもやるなら外でだ、都市ごと燃やされちゃかなわないからね」


「そう、あなたがそう言うなら外でやりましょ、

でもお互い思いっきりやれるとこなんてないでしょ?」


「ふうん...アンタも変わったね

じゃあそこの都市から離れた荒野の丘なんてどうだい?」


「よくわからないけど、いいね面白そう!乗った!」


「ハア...」


そして二人で歩いた


「へえ、この辺も随分と変わったんだね」


「はあ?アンタこの都市は初めてだろ」


「あれ?忘れたの、私は“複座型”だよ」


「ああはいはい、ったく相変わらず悪趣味なものを作りやがったもんだ」


「で?そっちは?その後はどうだった夢は叶ったように見えるけど」


「私はあんたとは違う、ちゃんと...」


「ちゃんと人を助けられる善人になれた?人間相手のおままごとで?」


「違う...そう言うのじゃない!私が...なりたかったのは...」


「でも見たところちゃんとした良い大人になれてるじゃない?でしょ?」


暗い顔で女は答える


「そうだね...」


そして都市の外に出た。


「星が綺麗...死ぬには最高の景色だね!」


「アンタがそれを言うのかい...」


「あっほら言ってた丘が見えてきた、じゃあ派手な一戦にしよう!」


「ああ...そうだね...」

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