第12話 レオン、待て!と言っても間に合わない
今日も野菜運びが終わりギルドに依頼達成の報告に来た。
「あ!その髪!」
するとレオンが何かを見つけて駆け出した。
その先にはいかにも素行が悪そうな男がイライラした様子で掲示板を眺めていた。
赤い髪を天に向けて立てて固めている男、あいつは確かBランクのドラン。
問題を起こしすぎて実力的にはAだがAにしてもらえないとかいう、俺でも知っているとんでもなく乱暴な奴だ。
「レオン、待て!」
俺の待ては届かなかった。
「お兄さん!その髪!格好いいねどうやってんの?」
「はぁ?」
ドランはその視線だけで射殺せそうなほどの凶悪な視線をレオンに向けるが、レオンはそんなのは気に留めていないようだった。
「俺もその髪型にしたい!教えて?お願い。」
レオンは顔の前で手を合わせるとその男に向けて祈りのポーズをとった。
何をしているんだ?
「まぁいい。どうせこんな時間にいい依頼はないんだ。付き合ってやるよ。
その代わり飯くらい奢れよ?」
「もちろんだよ〜
いいよね?アデル。」
「あ、あぁ。」
俺に振るな。俺は無関係だと空気に徹していたのに、レオンが話しかけたことで俺の存在がドランに認識されてしまった。
背中を冷たい汗がツーッと流れていった。
俺、まだ死にたくない。ボコボコにされるのも嫌だ・・・。
「お前見かけない顔だな。黒髪とは珍しい。俺はBランクのドランだ。」
「俺はレオン。この前登録したところ〜、あっちのアデルも同じ。」
「ふーん新人か。とりあえず移動しようぜ。」
「どこ行く〜?ドランのお勧めのところ行こうよ。」
「いいのか?」
「もちろんだよ。俺この街に詳しくないからさ、ドランのお勧めのところに行きたい。美味しい店とか色々知ってそうだし。」
「まあな。じゃあ行くか。」
なぜかドランの機嫌は直ったようで、レオンと楽しそうに会話をしている。
俺はというと、二人の様子を伺いながら後をついていっている。
奢るという話だったし、ドランはこれ幸いととんでもなく高い店を選ぶのかと思ったが、普通の食堂を選んだ。
「ドラン、ここは何がお勧めなの?」
「ミノタウロスのシチューだ。」
「へーミノタウロスってのが何なのか分かんないけどシチューいいね。せっかくドランがお勧めしてくれたから俺それにする〜」
「俺もそれにする。アデルだったか?お前は?」
「じゃあ俺も同じものを。」
「おかみさーん、いつもの3人分!」
「はいよ〜」
「ねぇねぇ、ドラン、さっそくだけどその格好いい髪どうやってんの?」
「これか?こんなのは水つけて手でわーっとやって、蜜蝋と匂いのないオイルを混ぜたやつで固めてるんだ。」
「ミツロー?それって高いの?」
「いや、そんなに高くない。」
「それ欲しい。アデル、あとで買いに行く。オイルも。」
「分かった。」
「ドラン教えてくれてありがとう。」
「あぁ。礼などいい。」
あのドランが少し照れて頬を染めている。
レオン、この狂犬を手懐けるとはとんでもない奴だな。
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