第11話 勇者の初仕事は野菜運びだ


冒険者ギルドへ向かうと、レオンはキョロキョロしながら俺に付いて受付へ向かった。

頼むから大人しくしておいてくれよ・・・。

ここには素行のあまりよろしくない者も多い。それに俺が抵抗できないほどに戦闘力が高い者もいるんだ。

おかしな行動をせず、静かにしていればわざわざ弱い者に絡んだりはしないはず。


受付に、冒険者登録をしたい旨を伝え、レオンの身分は伝えずに登録した。


「せっかくだからさ、アデルも登録しようよ。」

「分かった。」


騒ぎ出しても困ると思い、仕方なく俺も登録することにした。


名前、年齢、武器や魔法を書いていく。


「アデルって22なんだ。俺より2歳上なんだね。俺、武器って使ったことないんだけど空欄でいいの?魔法はどうしよう?」

「生活魔法と書いておけ。」

「分かった。」


ふぅ。物分かりがよくてよかった。


「この玉に魔力を少し流してください。」


まずいな。レオンはできるだろうか?

俺が直径20センチほどの透明な玉に魔力を流すと、カードが出てきた。


「こちらがアデルさんのギルドカードです。」


「レオン、いけるか?無理ならまた後日にしよう。」

「昨日アデルが寝た後で本見ながら練習したからいけると思う。」

「そうか。分かった。」


ピキッ


レオンがその玉に手を触れると、カードはすぐに出てきた。


「こちらがレオンさんのギルドカードです。」


気のせい、ではないよな?

ピキッと音がしたのを聞いたのは俺だけか?玉に少しヒビが入ったように見えるのも俺だけか?

レオンは知らん顔しているし、受付も笑顔を貼り付けたままでいるし。

それなら俺も知らないふりをしよう。


「「「・・・。」」」


「と、登録されたばかりですので簡単に説明しますね。」


受付は、FからSまでランクがあるという話や、ランクアップ試験、依頼掲示板の場所などを教えてくれた。


「なるほどねー、登録制のバイトって感じだ?ネットで仕事見つける代わりに掲示板見るってことね。分かった〜」

「分かったならよかった。」


受付の説明は分かったが、レオンの話している内容は全く分からなかった。

しかし、分かったと言っているのだから、きっとレオンのいた世界にも冒険者ギルドに似たギルドがあったんだろう。


そしてその日は、Fランク依頼の荷運びの依頼を受けることにした。


「へ〜この紙を受付に持っていけばいいんだね〜」

「あぁ。それで受付をしてそれから仕事に行くんだ。」


レオンが選んだのは収穫された野菜を運ぶ仕事だった。

勇者の初仕事が野菜運び・・・いいのか?

俺、見つかったら怒られんのかな?



「アデル〜、この世界の物ってさ、なんか軽くない?」

「俺はこの世界しか知らんから分からん。」

「そっか〜、確かに〜」


そう言いながら、レオンは芋が山盛り入ったカゴを軽々と持ち上げて運んでいった。

それは、この世界の物が軽いのではなく、レオンが勇者で身体能力が高いからじゃないのか?

それとも、レオンの世界ではもっと物が重かったのか?

それだと俺は暮らせそうにないな。


そんなことを思いながら、午前中にサッと依頼をこなし、午後には家に戻って引っ越しのための荷造りをするという生活を5日ほど続けた。

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