第10話 時間がかかる朝の支度



俺は朝起きると、ソファーで眠るレオンを見てしまったと思った。


あぁ、また世界の希望である勇者をソファーなんかに寝かせてしまった・・・。

とにかく引っ越しを急ごう。


また今日も起きる気配がないから、俺は朝食を買いに出た。


「おはよー、アデル出掛けてたの〜?」

「あぁ、おはよう。朝食を買いにな。」


「そうなの?ごめーん、それとありがとー。言ってくれれば俺が買いに行ったのにー。

でも元気そうだね。よかった。」

「あぁ。魔力は減っても寝ていれば戻っていくからな。」

「そうなんだ。」

「心配かけたな。」

「うん。元気になったならよかったー」


やっぱりレオンはいい奴のようだ。

テーブルにサンドイッチの包みを置くと、キッチンでお茶を淹れて出した。


「ポテサラっぽいの美味しいね〜」

「ポテサラ?何だそれは。」

「ポテトサラダの略?こっちだと何だろう?このサンドイッチの中身何?」

「これはジャガイモだな。芋って分かるか?」

「ジャガイモ。うんうんそれそれ俺の元いた世界でも同じ名前の芋あったよ〜」

「そうなのか。植物は似たようなものがあるんだな。」

「そうみたい。ちょっと嬉しい。」


世界が違っても似たような植物があるのは面白いな。

何を言っているのか分からないのは、文化の違いや、物の名前が違うだけかもしれない。ちゃんと話してみれば、分かり合えそうな気がした。



と、そんなことを思った時もありました・・・。


「アデル、冒険者ってのに登録するのに何持って行けばいい?印鑑?マイナンバーカードとか?ボールペンとかいる?履歴書とかは?」

「何も要らない。俺にはレオンが何を言っているのか全然分からない。」

「あー俺、スーツ買ってないんだけど。大丈夫?ネクタイとか結べないけどアデル結んでくれる?」

「何の話か分からん。」

「何着ていけばいいの?オフィスカジュアルとかそんな感じ?俺もそれはよく分かんないけど。」

「服か?服は着ていれば何でもいい。」

「あ、そうなの?へー服装髪型自由ってやつか〜、それいいね。カラーオッケーならちょっとカラー入れてみたいんだけど。」

「髪型も服装もそのままでいいから行くぞ。」


「え?無理。」

「なんでだ?」

「これから髪やんなきゃだし、あと1時間はかる。」

「は?1時間も髪をいじるのか?髪が無くなるんじゃないか?」

「そんなわけないじゃん。なるべく急ぐから待ってて〜」


分かり合えそうな気がするなど、浅き夢だった・・・。

確かに悪い奴ではない。それは分かった。しかし、理解できるかと言えば、無理だ。


そして結局、1時間以上待ったが髪につける何とかというやつが無いから無理だと言ってローブのフードを被って出掛けることになった。

明日からは出かける時にはローブを提案しようと思う・・・。


「ワックスなくてもいいから、せめてヘアアイロンとかほしい。魔法勉強したらどうにかなるかな?」

「いや、分からん。それが何なのかが俺には分からん。」

「そっかー。とりあえず登録しに行こ〜」


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