第9話 魔力というもの
家に帰ると、レオンはライトの魔道具をじっと眺めていた。
「これさー、普通に電気だと思ってたんだけどさ、電気じゃないんだよね?
不思議〜、俺これスイッチ押してもつけられなかったし。」
「スイッチというのもデンキというのも何か知らないが魔力を流しながら丸いところを押すんだ。魔道具の起動はどれも同じだ。」
「魔力ね〜
俺も魔法使えるとか言ってたけど、どうやって出すのか分かんない。
指からビーム!みたいな感じ〜?」
「さっき魔法の本を借りていなかったか?その本に載っていると思うぞ。
小さい子供でもできるんだから、勇者であるレオンなら容易いことだと思うが。」
相変わらず訳の分からないことを言っているが、魔道具が使えないと生活は不便だろう。魔力を流して魔道具を起動させるくらいは早めに覚えてほしい。
毎回風呂に一緒に入って頭を洗ってやるのも嫌だしな。
もちろん可愛い女の子だったら大歓迎なんだが、顔は悪くないにしても俺は男には興味がない。
レオンはソファーに座って大人しく本を読み始めた。
と言っても、ペラペラとページを雑に捲っているようにしか見えないが。
「ねーアデル〜、この最初の『魔力を感じます』っての?まずそこから分かんないんだけど〜」
「臍の下の辺りに温かい感覚は無いか?」
「全然分かんない。」
魔力を感じられないのか。幼いころから当たり前のように魔力を使っていたから、感じられないという感覚が分からなかった。
これはどうしたものか。
俺の魔力をレオンに少し流してみるか?
「レオン、手を出してくれ。そこに俺の魔力を少し流してみるから、それと同じ感覚を体の中で探れば分かると思う。」
「え!?それってさ、ビリって静電気みたいになんない?すっごい怖いんだけど。」
「セイデン?それが何か分からないが、ビリッとはならない。雷の魔法を使えばなるが、ただの魔力を流すから、感覚としては少し温かいと感じると思うんだ。」
「そっか。それならいいよ〜」
そう言うと、レオンは掌を上に向けて両手を出した。
いや、どんだけ俺の魔力を持っていくつもりなんだ?少しだぞ?少し。
俺はレオンの指先に少し触れて魔力を流した。
「これが魔力の感覚だ。分かるか?」
「ん〜全然分かんない。」
「じゃあもう少し流す量を増やしてみる。」
「うん。お願〜い。」
俺は多めに魔力を流してみた。
しかし、レオンからは何の反応もない。
確かレオンはMPがかなり多かったな。多すぎて俺が少量の魔力を流したくらいでは何も感じないということか?
「レオン、これでどうだ?」
「んー、温かいと言えば温かい気もするけど、ただのアデルの指の温度って感じもするし、よく分かんない。」
「そうか・・・。」
困った。大丈夫なのか不安だが、最大で流してみるか?そんなことをしてレオンが死ぬということはないよな?大丈夫だよな?
俺は少々不安に思いながらも、レオンの指に最大で魔力を流してみた。
「あ、ちょっと分かったかも〜」
ふぅ。よかった・・・。
魔力を最大で引き出したため、俺は魔力をかなり失って息が上がっていた。
「ってアデル大丈夫?なんかしんどい感じ?」
「あぁ、最大で魔力を出したから魔力を一気に失っただけだ。寝れば回復するから問題ない。」
「え?でも、顔真っ青じゃん。ヤバイヤバイ。早く寝て。ベッドまで連れてってあげるよ。ほら、俺の肩に掴まって。」
そう言うと、レオンは俺の腕をグイッと掴んで肩にかけると、俺を支えると言うか、殆ど担ぎ上げてベッドに運んでくれた。
「アデルって超軽いんだね。ちゃんとご飯食べてる?お兄さん心配だな〜
なんか欲しいものある?水とか、スポドリとか、冷却シートとかは?」
「いや、大丈夫だ。何も要らない。」
「そっか。じゃあゆっくり休んで。俺は本読んで適当に寝るからさ。何かあったら呼んで。まぁ俺にできることなんてそんな無いかもしんないけどさ。」
「分かった。」
「じゃあおやすみ〜」
レオンって、いい奴なんだな。
魔力が少なくなっただけなのに心配してくれて。この世界のことを知らないせいかもしれないが。
勇者の世話など不安で仕方なかったが、少し希望が持てた気がした。
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