第7話 髪型にこだわる男
それから家を出るまでが大変だった。
レオンが髪が決まらないと言い出して、鏡と櫛を買いに行かされた。
ワックスというやつは何なのか分からなかったし、ヘアスプレーというのも説明されたが分からなかった。
「ハァ、ダメだ。こんな頭で外に出れない。
帽子とかある?ニット帽がいいんだけど。無ければキャップでもいいや。」
「帽子は貴婦人が頭に乗せるものなら見たことがあるが、男用は見たことがない。兜ならあるぞ。」
それほど髪にこだわるのはなぜだ?
分からんな。
男用の帽子か。あぁ、ローブがあるではないか。
「ローブでどうだ?」
「ローブ?何それ。帽子の名前?まぁいいか。それ欲しい。やっぱ色は黒かなー、買ってきて〜」
そして俺はローブを買いに行かされた。
「フード付きコートのことだったのか。まぁいいか。出かけよ〜」
疲れた。ただ家から出るだけでこんなに疲れるのは初めてだ。
この先、俺は本当にこの男とやっていけるのだろうか?
帰りに胃薬でも買って帰ろう・・・。
「ここいいね〜
ログハウスっていうの?可愛いし〜」
「ではここにするか?」
「ん〜他も見てみたい。」
「分かった。レオンが気にいるところを選んでくれ。」
「アデルは希望ないの〜?
南向きがいいとか、ユニットバスがいいとか、オール電化?は電気がないから無いか。広さは2LDKとかでいいんだよね?」
「何を言っているのか分からないけど、俺は別に普通に住めるなら何でもいい。」
「アデルってなんの仕事してんの?職場が近い方がいいんじゃない?」
「俺は宮廷魔法師団に所属している、魔法師だ。今はレオンの世話役だから本部に出勤する必要はない。
だが、レオンの訓練場所として騎士団には行くだろうから、王城に近い場所がいいかもしれんな。」
「なんか凄そうな仕事だね〜。魔法師って魔法使いだよね?」
「まぁそうだな。魔法はだいたい誰でも使えるが、俺は召喚魔法という少し珍しい魔法が使えるから魔法師団に入団できたんだ。」
「あ、あの可愛い熊さんのヴァイス召喚してたもんね〜、可愛かったなー、俺もあんな可愛い子ほしい。」
「レオンは召喚魔法を持っていなかったから今は無理だろうな。だが、勇者だからいつか使えるようになる可能性はゼロではないと思う。」
「え?マジ?それ楽しみ〜」
散々見て回ったが、結局一番最初に『ログハウス可愛い』と謎の言葉を発した家になった。
屋台で飯を買って食べたが、レオンは意外にもこの世界の食事が合うようでホッとした。
また意味の分からない言葉を並べて、これは食べられないとか、あれが食べたいとか言われて街を駆けずり回らなくてはいけないのかと思っていたが、その心配はなさそうだ。
決めた家はだいたい家具も揃っていたから、そのまま住めそうだ。
色々揃えなくていいのはいいな。
「ねーねーアデル、新しい家にいつ引っ越すの?」
「今日からでも住めるが、荷物を運び込まなけれならないし、レオンの生活用品も買わなければならないからな。荷車を借りて、何日かかけて荷物を運び、布団やら色々買って1週間くらいじゃないか?」
「そっか〜分かったー。」
面倒なこともあるが、意外と物分かりのいいレオンにホッとした。とりあえず今日はベッドで寝てもらおう。
俺が図書館で借りた本はもう全部読んだというので、仕方なく家に帰って借りた本を返却するために持って、図書館に向かった。
「それ、重くないのか?」
「んー?本?こっちの世界の本って軽いよね。俺がいた世界の本はもっと重かったから、こんなに持てなかったけど、こっちの世界の本は軽いから平気。」
それは、勇者になって力が増したからではないのか?
向こうの世界の本がどんなものなのかは分からない。もしかしたら鉄でできていて重いのかもしれないが、読んでいる様子を見る限り、紙の本を初めて見るという感じでもなかったように思う。
あの短時間でこれだけの本を全て読んで覚えたのだから、かなり頭がいいのかもしれないが、何を考えているのかイマイチ読めないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます