第4話 速読スキル羨ましい


重いな。俺はシュピリツァイクベアのヴァイスを召喚し借りた本を持ってもらった。

シュピリツァイクベアは、体長が1メートルないくらいの小さな白い熊の魔物だが、優しく大人しいし従順で可愛い。討伐対象とならない珍しい魔物だ。

何ができるかというと、ただ力があるだけで他には何もできない。重い荷物を持ってもらうことぐらいしか使い道がないが、可愛いから癒されるし、街を連れて歩いても誰も怖がったりはしない。


夕飯は屋台でスープと串焼き肉、パンを買って帰った。

せっかくだから、どこかに食べに出てもよかったか?

しかしな、レオンはこの世界のことを知らなさすぎて、少し知識をつけるまではあまり連れ歩きたくないと思った。

何かトラブルに巻き込まれるようなことがあっても、恐らくまだ戦闘などできないだろう。



「レオン帰ったぞ。」

「アデルおかえり〜、え?何その熊。可愛いけどそれ大丈夫なやつ?食べられたりしない?」


「あぁ、こいつは俺の召喚獣で、シュピリツァイクベアのヴァイスだ。

力持ちだから図書館から本を運ぶのを手伝ってもらったんだ。人を襲ったりしないから安心しろ。」

「マジ?そんな熊いるんだ?え〜ヴァイス、アデルのお手伝いしたの?偉いね〜

うわぁ〜ふわふわでぬいぐるみみたい。かわえぇ〜」


レオンはシュピリツァイクベアから全ての本を受け取ると、机に置いてヴァイスを撫で回して抱きついた。

あの本、レオンは一度で全部受け取っていたが、かなり重かったぞ?やはり身体能力が高いんだな。


「アデル、こんなにたくさん本借りてきてくれたんだね。探すの大変じゃなかった?ありがとね。」

「あ、あぁ。」


「ヴァイス、戻りな。」


俺はヴァイスを帰した。


「うわぁ!消えた。何?今何やったの?」

「召喚魔法だ。」


「へぇ〜ってよく分からないけど。あ、それでこれ、どれから読めばいいの?」

「これとこれ、この辺りだな。この国のことと、この世界のざっくりした内容が書いてある。歴史学者になるわけでもないから、知識はこの程度あれば十分だろう。」

「そっか。読んでみる。」


レオンは俺が勧めた本を1冊手に取ると、パラパラとめくって机に置いた。

そしてもう1冊の本を手に取ってパラパラとめくり、それも机に置いた。


「うん、だいたい分かった。

俺、地球じゃない世界に来たんだね。そんな気はしてたけど、本当にそうだった。地球じゃない星なのか、星どころか全く時空の違う世界に来たのかは分からないけど。」

「え?もう読んだのか?」


「え?え?何?なんか変な音が鳴ったんだけど。スキル速読を取得だって。

何のこと?」

「あ〜、スキルというのは、その人の能力だ。速読というのはきっと本が早く読めるというスキルなんだろうな。羨ましい。」


「へぇ〜なんか分かんないけどそっか。速読は前からできたんだけどね。もっと早く読めるようになったのかな?」

「元からできたのか?」


「うん。できたよ。ねーねー、さっきの本にあった、魔王国ってところに魔王がいるの?それで俺はそこに行けばいいの?

俺、喧嘩とかしたことないんだけど。話し合いでもいいの?論破とかも遺恨残すからあんまりしたくないけど、譲歩し合って解決できるならそれでもいいよね?」

「レオンは優しいんだな。我らも魔王がどんな奴でどんな悪巧みをしているのかは知らないが、陛下や他の人族の国では魔王は悪で殺すことを希望している。」


「そっか。それだと俺、できないかも。

だって人殺しでしょ?あ、魔王って人じゃないのか。悪魔とか?怪物とかお化けとかそっち?それならいけるかな?でも俺、虫も殺せないしな〜」

「それは徐々にこの世界に慣れていって貰えばいい。今すぐに出立して倒せとは言わない。何十年も待つことはできないが、魔王討伐を最終目標とすることは覚えておいてほしい。」


「うん、分かった。アデルも付いてきてくれるんでしょ?

それなら大丈夫かも。」

「いや、俺は勇者パーティーに入れるほど能力が高くない。パーティーメンバーが見つかるまでの間はサポートする。」


「パーティー?何のパーティー?俺も参加していいの?

タコパとか最近やってないからやりたいよね〜、アデルは裏方ってこと?

それはダメだよ〜、そんな文化祭実行委員みたいな、ちゃんと当日も楽しまなきゃ。」

「は?何の話だ?」


「うん?パーティーの話。」


本をすごいスピードで読んで理解して、かなり頭がいいのかと思ったが、どこかズレているようだ。何を言っているのか全然分からなかった。

文化の差なのか?それとも、レオンは実はアホなのか?

アホだと困るな。強いだけでなくしっかりレオンをサポートできるようなパーティーメンバーを探してやらないといけないか。

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