第3話 感謝されたようだ


「何それスゲ〜!手から風出てる〜

アデルってもしかしてロボット?本当に人間?あ、魔法使い?」


魔法の適性はあるらしいが、使い方は知らないだろうと思って髪を風で乾かして、体もドライで乾かしてやると、目をキラキラさせて俺を見た。


「俺は人間だ。この程度の魔法なら、その辺の子供でも使える。」

「いいな〜羨ましい。俺も魔法とか使えたらいいのに。」


「使えるぞ。魔法はレオンも使える。しかも特殊な魔法まで使えるようになる。

練習や勉強は必要かもしれんが。」

「マジ?俺、勉強するよ。大学は遊ぶために通ってたんだけどさ、これでも2年前はちゃんと受験のために勉強してたんだよ。」


「そうか。じゃあまずはこの国やこの世界のことを勉強して、それから魔法の勉強をしたらいい。」

「分かった。」


王立図書館で適当に本を借りてくるか。

レオンの勉強のためだと言えば、持ち出しも許可されるだろう。

とりあえずレオンを家に置いて、俺が1人で夕飯を買いに行くついでに寄るか。こいつが無知なままだと俺が疲れる。連れ歩くのも疲れた。



「ここがアデルの家?スゲ〜!アデルって俺とそんなに歳変わらないよね?一軒家に住んでんの?」

「イッケンヤ?普通の家だが。」


「俺も一人暮らししてたけどさ、狭いワンルームだよ。」

「俺はレオンの国の文化が分からないからワンルームというのも何か分からない。

この国では一人暮らしをする者はだいたいこんな感じの家に住む。」


別に広くもない部屋だ。リビングと寝室とキッチンとクローゼットがあるだけだからな。この召喚が成功すれば、もっといい家に引っ越せると思ったが、そう簡単にはいかないようだ。


俺は一応宮廷魔法師団に在籍していて、珍しい召喚魔法を使えるから入団することができた。団には他に召喚魔法を使えるものが5人いるが、その誰もが今回の勇者召喚に失敗している。

それで最後に、召喚魔法を使える者の中では一番下っ端の俺に役が回ってきたというわけだ。

俺には自信があった。上級魔法などの強い攻撃魔法が使えるわけではないが、知識はある。いつか使えるかもしれないと練習しているし、腕が足りないならと、必死に勉強だけはしてきたから。


珍しい魔法が使えるということに胡座をかいて、何の努力もせず歳だけ重ねてきた奴らとは違う。

だいたい、使役した魔物を召喚するのと勇者召喚は勝手が違うんだ。それをあいつらは理解していないから失敗したんだろうな。



「レオンは適当にその辺でくつろいでいてくれ。

俺は図書館でレオンの勉強のための本を借りて、何か夕飯に食べるものを買ってくる。」

「うん。分かった。ありがとうアデル。気をつけてな〜」


「え?あ、あぁ。」


ありがとう?ただ本を借りて食べ物を買ってくるだけなのに、感謝されたのが意外すぎた。そして少し嬉しい気持ちになって俺は家を出た。


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