「四肢が腐るぞ」

というセリフが頭に浮かんでいる。

確か、政を行う人が民に還元しないせいで国がダメになるって話。


私は臓器でもなく、四肢でもない。

精々、四肢に血液を送る一粒の赤血球ぐらいの存在だ。

勝手に生まれていて、勝手に壊れていて。

いなくなっても誰も困らない、誰も気がつかない。


臓器に向かって、四肢に向かって、「俺がいなきゃ腐るぞ」と言う私。

そんな妄想が毎日、自分に入り込んでくる。

誰にも聞こえないように誰にも気づかれないように。

自分だけに聞こえるように、自分だけに響くように。

出来る限りの大声で言う。

まるで今日も頑張った気になる。

まるで一歩進んだような気になる。



また今日も安定剤を臓器に四肢に運んでもらう。

滞りなく運んでくれる。


僕は今日もまた妄想にふける。

滞りなく、滞る。

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