暖かな光の中で

第40話 ふたりでしあわせ

暫くは結月、希咲を自由にしていた。


真凜と生活して落ち着きを取り戻してたから。


でもたまに僕は仕事中に無言で結月の袖を掴むことがある。


その時は、優しく僕を包み込んでくれる。


「大丈夫。あたしいるから。」

「……ごめん。本当にごめん。」

「いいの。あたし必要でしょ?」

「結月じゃないとやだ。」


僕はまだ苦しみの中にいた。

結月がいない人生を選んだのに結月を求めて求めて……。


止まらなくなると僕は陰で結月を抱きしめてた。

「ゆづがいい。ゆづがいい。ゆづに居て欲しい…」


たまに本音をぶつけると、結月は僕に口付ける。


「居るよ。大丈夫。ずっと一緒。約束したでしょ?」

「でも迷惑だよね?こんなんだし…」

「いいの。そのうちよくなるから。でもどんな涼太でも私はちゃんと愛してるからね。」


結月は強かった。優しくて強かった。




―――――――――――ある夜。

夜中に目が覚めると僕は半覚醒でパニックを起こしていた。物音に気づいて真凜が僕を止めに来た。


「涼太どうした?」

「ゆづがいない。ゆづがいない。」


僕が泣きながらそう言っていた。


「明日会えるよ。だから寝よ?。」

「結月に会いたい。結月…お願い。結月にあわせて。」

「こんな夜中だし寝てるよ。だから寝よ?明日会えるから。」


でも僕はそれが聞こえてなかった。

半分夢の中だった。とにかく結月がいない不安しかなくて……。


困り果てた真凜は結月に電話した。


「結月ちゃんごめん。こんな時間に。涼太がパニック起こしてて、あたしの話聞こえてない。結月ちゃんの事ずっと呼んでて。」

「行きます。鍵開けといてください。」


僕はソファの上で結月が残したパーカーを抱きしめていつの間にか泣き疲れて寝てた。



すると、すぐに結月が来てくれて僕の様子を見に来た。


「涼ちゃん。」

すると僕は寝ていた。


「それ、あたしのパーカー。」

「やっぱりそうだったんだ。涼太、不安になると必ずそれ持っててさ。洗濯すらさせてれなくて。」

「匂いなんでしょうね。」

「ごめんね。本当に。」

「こちらこそ押し付けて申し訳ないです。」

「……ねぇ結月ちゃん、」

「いいですよ。私が責任持ちます。本当は離婚届出してないんです。」

「だと思った。」


「好きにさせてあげようと思って。それでまたあたしに帰ってくるならくるでいいし、本当にどっかいっちゃうなら出してこようと思ってて。」

「本当にあなたは賢い子ね。」

「今日、そばにいてもいいですか?」

「居てあげて。布団持ってくるね。」

「すみません。」

「涼太も安心するでしょ。目が覚めてあなたがいたら。」

「そうですね。」



――――――――――――翌朝。


「結月?…結月。」


僕は結月と同じ布団に入って抱き締めた。


「涼ちゃん。おはよ。」

「結月…。」

「居るよ。大丈夫だよ。不安になっちゃったんだって?もう大丈夫だよ。ここにいるから。」


僕は結月にキスした。


「どこにも行くな。俺の結月だ。」

「行かないよ?ずっとあたしの涼ちゃんに変わりないからね?」


その後、結月と起きると既に真凜の痕跡はなかった。

連絡して今までのお礼を言うと、


「またいつか、一緒になりましょう?」って。

「ごめん」と言うと、

「いつかでいいの。あなたといると楽しいから。でも結月ちゃんしか見えてない間は辛いから一旦さよならね。」


「うん。」


―――――――――――――――。


僕は知っていた。

結月が指輪をずっとしてることを。

そして僕もずっとしていた。


いつの頃からか、常にお互いがお互いを見ていた。もう結月しか目に入ってなくて。


でも強がりで手放して自爆した。



「結月!」


今はもういつでも結月がいる。

辛い時には結月を呼ぶ。


そうすると結月は来てくれてそばに居てくれる。


そんなこんなで1年ほどで落ち着いた。



でもたまに結月がみえないと不安になる時がある。

目が覚めて視界に居ないと不安に襲われる。

でも探せばすぐに見つかる。



―――――――――。


「ゆづは?」

「結月ちゃん、お菓子のところにいるよ。」

「ありがとうございます。」


僕は結月を後ろから抱きしめる。


「涼ちゃん。どうしたの?」

「なんでもない。不安だった」

「見つけたね」

「見つけた」


「事務所もどるよ」

「うん。」



――――――ゆづ?


「こっちだよ。」


今日は結月の誕生日。2人で泊まりに行く。


「……やべ。めちゃくちゃ綺麗……」

「涼ちゃーん。口閉めてー。」

「結月ちょっと。」

「うん?」

「今まで言えなかった」

「なに?」

「……耳かせ。入れさせろ。」

「…したかったの?」


僕は結月に口付けた。


「途中で出しちゃうかもだけど。」

「……本当に変態。」

「耳の後こっちな。」

「今こんなにされてもお相手できません、耳かしてあげるから我慢して」


「……強くなったな」

「してくれたんでしょ?」


僕は新しく買ったピアスを結月の耳に挿した。


「似合う。」

「本当だ。綺麗。」

「ゆづ、行こう。」

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雑貨屋『Lucky』 海星 @Kaisei123

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